作品名 作者名 カップリング
No Title 天邪鬼氏 -

「あちぃ・・・」
青い海が呼んでる♪白い波が歌ってる♪
真っ赤な真っ赤な太陽追いかけて♪
走っておいでよ、プリンセス!!

などとはしゃげはしない。
南国じゃあるまいし、冷房完備の中で育った現代っ子に温暖化現象など耐え切れるはずがない。
幸い日本の学校には夏休みというシステムがあるものの、暑さを緩和する効果を持っていないのが唯一にして最大の欠点だ。
夏休みに入ったばかりの今日、晴天につき今年一番の猛暑。
早速宿題に取り掛かるわけでもなく、友人宅へ向かうアキの心情は複雑であった。
友人、『城島カナミ』は勉強に関しては優秀なものの限度を過ぎた思春期少女である。
夏休みに入るなりいきなり遊びの誘いというのがどうにも怪しい。
いつもなら「まずは宿題やろうよ」という変態には似つかないセリフを放つはずなのだが。
しかしアキにはその企みを推理する頭脳を持っていなかったのである。

ぴんぽ〜ん

ついた。ついてしまった。
まぁいい、なんとかなるさ。下手なことをしてきたら宿題やらせてやる。
そう自分に言い聞かせていたアキだったが、ドアを開けたカナミの姿に驚く。
「あっ、アキちゃん・・・いらっしゃい・・・」
明らかに顔色は悪く、声にも覇気がない。
少し喋っただけでむせてしまっている、その姿は紛れもなく風邪だ。
「うおっ!アンタ大丈夫?!」
「う〜ん・・・なんとか〜・・・」
話を聞いてみると、昨日全裸で寝ていたらしい。
パジャマだとどうにも暑いが、冷房をつけると効き過ぎる。
そこでカナミのとった行動が、全裸でタオルケット&冷房だったのである。
とどのつまり寝返りでタオルケットを失ったカナミには、冷気から逃れる術はなかったのである。
温度調節しろよ、という突っ込みもする気の失せたアキは、夏休み早々風邪引きの看病をするはめとなった。
カナミには帰るように促されたが、こんな状態の友人を放って置くほど無情に育てられてはいない。
着替えや汗拭き、濡れタオルの用意などを手際が悪いながらにこなしていった。
ところどころでかまされるエロボケにキレのないところが具合の悪さを物語っていたが、まだそんなことを言える余裕はあるのだな、と安心する材料にもなった。



ひとまずカナミの看病にひと段落つき、さてどうするかと思っていた矢先。
カナミは疲れていたのかすっかり眠りについてしまった。
「アタシを呼んでたから寝ないようにして待ってたのか・・・」
律儀というかなんというか。
こんなド変態でも、こんなだから友達でいられるんだろうな、と微笑むアキ。
そんなことをやっているうちに、アキにも睡魔が訪れた。
仕方ない、居間で寝よう・・・
というアキの決断は、夏の太陽が許してくれなかった。
「あっつぃ・・・」
カナミの部屋は温度調節がして有ったから良かったものの、ここは暑すぎる。
全裸になる気はないが、なりたくなる気持ちも分かる。
どこか冷房のある部屋はないのか・・・
たどり着いたのは、カナミの部屋の隣にある一室であった。
「いないのか・・・」
部屋の主、シンジはどうやらいないようだった。
まぁ夏休みだし遊びに行ってるんだろう、とアキは踏んだ。
結構早めの時間に来たから少しくらい寝てもすぐには帰ってこないはずだと。
人というのは自分の都合のいいほうに解釈するもので、現在シンジがカナミのための買出しに行っている可能性など、アキの頭の中に巡っては来なかった。
「シンジさんがいつも寝てるベッドかぁ・・・」
すっ、と少し匂いを嗅ぐ。
あぁ、確かにこの匂いだ・・・
イカ臭いだの汗臭いのだとは別に、個人特有の匂いというものはある。
アキはシンジの匂いのするベッドに、少し気持ちを高揚させていた。
「ははっ、匂いなんて嗅いでどうこう言ってたら・・・カナミのこと・・・言え・・・な・・・」
矢野アキさん、睡魔を侮ってはいけませんよ。
まだ大丈夫、そう思うときに最も力を発揮するのが彼らなのですから。
謎のお告げを聞きながら、アキはスーッと眠りについた。






カナミが風邪を引いてしまったため、看病のために買出しに行ったのは良かったのだが。
普段頑張ってくれているカナミのために、そう思って余計に買い込みすぎてしまった。
「大丈夫かなアイツ・・・」
しっかり者ゆえに頑張りすぎるカナミは、あの体でまた家事でもやろうとしているかもしれない。
一刻も早く妹を看病するため、シンジは帰路を急いでいた。
「ただいまー。カナミ、ちゃんと休んでるかー?」
返事がない。
まさか買い物に行ってないだろうな?
そんなことを考えながら荷物を運ぶシンジは、玄関に増えている靴に気づかなかった。
カナミの部屋をノックしてみると反応がない。
恐る恐るドアを開けてみると、すぅすぅと寝息を立てている妹の姿があった。
「なんだ・・・寝てるのか」
一先ずの安堵を得たシンジは、次になにをしようか考えていた。
着替えも済ませているみたいだし、寝たばかりだろうから粥を作るには早い。
ずっとこの部屋にいてカナミを見ているのも・・・
そういえば宿題も溜まっている(とはいえまだ時間はあるが)。
ついでに欲望も溜まっている。
うーむ。
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   「シンジはどうする?」


  【カナミの看病を続ける】
  【自室へ戻ってみる】
  【カズヤとアーッ!!】

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