疾風夫婦ネタ2 ◆dZQtv7lHHw(3-262)さん






 唇と舌の感触を確かめ合いつつ、彼らは抱き合う。互いの口の中を舌で探り合い、時には吸い付く。
 ミッターマイヤーの手がエヴァンゼリンの髪を撫でる。梳り、首筋に触れ、素肌を露にしている背筋を優しく撫で回した。
優しい感触にエヴァンゼリンは震え、更に求めようと口付けに没頭する。
 不意に彼女の胸に開放感が現れた。今まで押さえつけられていたが、その感触が消えた。
 背筋を撫でていたミッターマイヤーの手が、彼女のブラジャーのバンドの下に滑り込み、留め金を外したのだった。
そのために彼女のブラジャーが解放され、カップが前にずれる。
 それを感触として知ったエヴァンゼリンは、一旦腕をミッターマイヤーの背中から解放した。夫の首筋に絡める腕を戻し、
肩紐が引っ掛かったままのブラジャーを完全に腕から抜く。
 ミッターマイヤーが彼女を抱き締めたままだったため、口付けは相変わらず続行していた。彼女の動きはその邪魔にはならない。
 エヴァンゼリンは腕から抜いたブラジャーを、若干鬱陶しげにその辺りに放る。彼らにとっては広いダブルベッドの隅に、それは着地した。
普段の彼女からは考えられないような雑な扱いだが、今の彼女にとってそれは邪魔なものでしかなかった。
 上体に身に着けていた衣服を全て脱ぎ去った彼女は、そのまま夫に抱き着く。露になった両胸が、夫の胸に押し付けられる。
小さいが形はいい乳房が夫に密着する。
 が、彼はシャツを身に着けたままだった。季節は夏なのでそれ程厚い布地ではない。そのために、夫には彼女の胸の感触が確かに伝わる。
今までとは違い、確かに柔らかく、若干堅くなっている突起部分までもを、彼の胸に感じた。
 と、彼の首から、妻の腕が解かれる。と同時に、密着していた胸も僅かに引き剥がされた。
 どうかしたのかと思い、ミッターマイヤーは唇を離した。唾液が糸を引くのを感じつつ、彼は妻の顔を見る。
 エヴァンゼリンはミッターマイヤーの胸元に手を伸ばしていた。細い指が両手で、彼のシャツのボタンに掛かっている。
彼のシャツも夏のためか、上から数個開け広げた状態であったが、彼女はそれを更に広げに掛かっている様子だった。
「どうかした?」
 ミッターマイヤーはエヴァンゼリンに声を掛けた。とは言え止めるつもりはないらしい。彼はその行動が純粋に不思議だったようである。
「邪魔です」
 その問いに対し、エヴァンゼリンの回答は簡潔極まりなかった。夫を見ないまま、手元をじっと見ている。
ボタンを外すのに集中している様子だった。ひとつのボタンを外し、また下のボタンに取りかかる。
「え?」
 妻の作業を見守りながら、ミッターマイヤーは怪訝そうな声を上げた。彼には妻が言わんとしている事が理解できなかった。
 エヴァンゼリンは作業を進めていく。若干強張っている指だったが、確実にボタンは解放されていく。
「あなたと私を遮る衣服が邪魔です」
 彼女はそう言い放ち、ボタンを全て開け放した彼の胸元に顔を埋めた。


 ミッターマイヤーは驚いた。一瞬眼を見開く。
 妻の手が彼の胸を撫で、その手は襟元に及ぶ。そこを掴み、広げた。シャツが肩口で引っ掛かっている状態になる。
 ミッターマイヤーは胸に潜り込む妻の背中に腕を回した。二の腕はシャツに覆われたままだが、若干動きが制限されている。
「…俺の傷跡、怖くないのか?」
 彼は胸に顔を埋めた妻の頭に声を掛けた。少々眉を寄せていた。
「いえ…今は大丈夫です」
 エヴァンゼリンはそう答えた。僅かに顔を上げ、今彼女自身が顔を押し付けていた箇所に視線をやる。
そこにはかなり大きな裂傷の跡が残されていた。
 暖かくも明るい室内灯に照らし出されているミッターマイヤーの体には、多数の傷跡が浮き上がっていた。
裂傷だけではなく銃創やトマホークの斬撃によりもたらされたであろう傷まで、多様だった。
 任官以来の最前線での戦闘によって、彼の体に目立った後遺症は残ってはいないが、生々しい傷跡は残されていた。
 そして彼は、妻が僅かにでも傷跡を怖がってみせたから、行為の際には灯りを消そうと心に誓っていたのだった。
無論、口に出された訳ではないが、彼は妻の態度を読み取る事には敏感だった。
 エヴァンゼリンの指が、胸に残る彼の傷をそっとなぞっていく。そして別の傷跡に対し、彼女は軽く唇を落とした。
均整が取れた胸に頬を寄せると、彼女にとっては心地良い匂いが感じられる。それに満足し、彼女は微笑んだ。
「私こそ、あなたを愛しているのですから」
 彼女の唇からそんな言葉が漏れた。小さな声であったが、ミッターマイヤーはそれを確かに聞いた。
 彼は妻を抱き締める腕に力を込める。そして彼は力の方向を変えた。彼女の上に圧し掛かり、そのままベッドに押し倒す格好になった。
 エヴァンゼリンはそれに抵抗する事はなかった。むしろ彼の背中に腕を回し、引き寄せていた。





 ふたりの体重を預けられる格好となったベッドが僅かに軋みの音を立てる。
 ミッターマイヤーはエヴァンゼリンの顔の両脇に肘を着き、顔を覗き込む。それに対してエヴァンゼリンは潤んだ瞳を夫に向けた。
一瞬ふたりの視線が絡み、直後に夫が顔を軽く傾けつつ妻の唇を自らのそれで塞ぐ。
 エヴァンゼリンの両頬を、ミッターマイヤーの大きな両手が包み込む。下を絡められながら頬を撫でられると、彼女は心地良さを感じる。
その手は頬に留まらず、髪を撫で上げ、うなじに触れていく。
 そのうちにミッターマイヤーの唇が彼女の口から離れ、首筋に落ちる。そこを舐め上げ吸い付きつつ、片手が妻の乳房に伸びた。
白く柔らかい肌に、軽く陽に焼けた男の掌が触れる。小ぶりだが形がいい乳房を軽く握り締め、揉みしだく。
 その刺激にエヴァンゼリンは軽く顔を振った。意に反して鼻に掛かった声が出てくる。何となくくすぐったい気がして、少し身をよじる。
 軽く足を摺り合わせた感覚に、彼女はどきりとした。顔が赤くなる。彼女は夫が今、彼女の鎖骨に口付けている状態に感謝した。
この赤い顔を見られていない事に安堵した。
 ――嫌だ。もうこんな状態になってる。彼女はそれに気付いたのだ。
 彼女はぬるりとした感触に眉を寄せる。この分では下着まで濡らしている事だろう。その不快感もあった。

しかし、足を動かした際に彼女にもたらされた、また違った感触にも彼女は眉を寄せざるを得なかった。
 ――濡れているせいか、何気ない動きでも却って刺激がある。胸元まで下りてきていた夫の頭を、彼女は抱え込むようにして
抱き締めた。胸の突起を口に含み、転がされると、彼女はまた顔を振った。合わせて堪えるように彼の髪を掻き回す。
 ミッターマイヤーの手が彼女の細い腰を撫でていた。そして腰に引っ掛かった状態だったスカートにその手をかける。
割とすんなりと留め金を外す。スカートを軽く引いただけで、それは膝の辺りまで脱げ落ちていった。
「――あ、ウォルフ…」
 エヴァンゼリンは思わず声を上げた。しかしその声にも若干甘いものが含まれている。顔全体が熱に浮かされている状態は変わらない。
 ミッターマイヤーは妻の声に構わず、スカートを引き抜いていく。片手でスカートを掴み、もう片手で両足を軽く曲げさせる。
揃えた足から長いスカートが取り去られ、それは彼の手で彼女のブラウスが落ちている辺りに投げられた。
 今やエヴァンゼリンが身に着けているものは、下着だけだった。しかし彼女はそれが濡れてしまっている事を悟る。
今更恥ずかしくなり、両足を閉じた。脇を閉めて両腕も合わせ、軽く縮こまってしまう。


「どうかした?」
 一旦体を引き剥がしたミッターマイヤーは怪訝そうな顔をして彼女に問いかけた。
 エヴァンゼリンはそれに答えるかのように視線を上げた、すみれ色の瞳が彼を見上げる。その瞳は潤んでいて、
顔は紅潮しきっている。小さな口元からは吐息が漏れ、時折何かを感じるのか眉を寄せていた。
「あの…私…やっぱりはしたないですよね…」
 小さな声が色付いた唇から発せられた。それにミッターマイヤーは小首を傾げた。そして彼女の裸体に軽く視線を走らせた。
 それは何気ない一瞥だったように思えるが、エヴァンゼリンにはそれすら熱い鼓動をもたらした。――あの
人に見られている。それだけで、彼女は何かを感じた。瞼を伏せ、声を出すのを堪えようとする。
「――ごめん」
 眼を伏せていたエヴァンゼリンの耳に、不意にそんな声が聞こえてきた。きょとんとして彼女は瞼を上げる。
が、目の前にいるはずの夫の姿が視界に入らない。
 と、下に気配を感じた。次いで、指先の感触が腰の辺りに伝わってくる。彼女は視線を落とした。
「――ウォルフ!?」
 その事実を確認すると、彼女は思わず大きな声を出してしまった。
 ミッターマイヤーは妻の下腹部に顔を埋めていたのだ。そしてその指が軽く、下着の裾に引っ掛けられている。
「あの、ウォルフ、止めて下さい!」
「どうかしたの?」
「だって、私、こんなに」
「…うん、確かに凄いよ」
 夫に本当に感嘆しているかのような声を出され、エヴァンゼリンは一気に頭に血が上った。
 その隙に、ミッターマイヤーは指に軽く力を込めた。下着の裾を、両脇から下に引く。
 彼の手によって、エヴァンゼリンの下着が太股の辺りまで一気に引き下ろされた。



 ミッターマイヤーは妻の下腹部を覗き込んだ格好で、糸を引いている粘液を見ていた。それは内腿の辺りにまで
広がっている。足を閉じたまま擦り合わせたりした事により、却ってあちこちに広がりを見せたようである。
 彼は頑なな妻の腿に手をかけた。軽く押して、片方の内腿を持ち上げる。少しだけ開かせた。そしてその部分に舌を走らせる。
舌からミッターマイヤーの唾液が内腿に塗り付けられるのと同時に、ある一定の場所に絡み付くように付着していた粘液を、彼の舌が舐め取る。
「――あ」
 その感触に、エヴァンゼリンは震えた。しかしすぐに自分がどんな状態に置かれているのかを思い出す。―

―夫が下腹部に顔を埋めている。それを彼女は恥ずかしいと思っていた。だから、彼女の両手は彼の頭に伸びた。
彼の頭を押し留めようと努力した。
 しかし女性の力は弱い。更にはミッターマイヤーは彼女の内腿を舐めるのをやめない。そのうちに舌で舐めるだけではなく、口付けていく。
 不意に、自分の体内で何かが押し広げられる感触が襲った。慌てて彼女は視線を落とす。
 ミッターマイヤーの片手が伸びていた。その指が2本、彼女の秘められた部分を広げ、そこから内部に侵入を試みている。
「や、ウォルフ…」
「大丈夫、柔らかいみたいだから」
 彼の指がゆっくりと、粘液に絡め取られながらも内部に入っていく。エヴァンゼリンにとっては、違う体温の物体が
自らの中に入って行き、その侵入を止められない。むしろ、受け入れているかのように思えてならない。
 結局大した困難もなく、ミッターマイヤーの片手の人差し指と中指は、あっさりと付け根まで彼女の中に入ってしまった。
その指が内部を探るようにゆっくりと動く。肉壁を押しつけ、広げ、また離す。
 更に奥を狙うように動いたり、引いたりする。その度に粘液がくちゅくちゅと音を立てた。それはエヴァンゼリンには酷く卑猥な音に聞こえる。
 そんな事をしていたミッターマイヤーだが、不意に内腿に口付けるのを止める。軽く顔を上げた。しかしすぐに別の場所へを顔が動く。
 今彼女の中に埋もれている手の動きは止めないまま、もう片方の手が更に秘められた部分に向かう。指で未だ美しい色をしている
花弁を捲り上げるように、押し広げた。そして露になった小さな部分に、彼の舌先が触れた。
「――あっ――!」
 途端、エヴァンゼリンの体に痺れが走った。まるで雷に打たれたような――とは言え彼女にそのような経験はないが――
感覚が背筋を真っ直ぐに駆けて行く。
 ミッターマイヤーは彼女の体が震えるのを知った。そのままその部分を舐め始める。小さな肉芽を舌先で突付き、転がした。
すると内部に入り込ませた指に締め付けが走る。彼は更にその指を内壁に擦り付けつつ、舌では刺激を与え続けた。
 エヴァンゼリンの口から悲鳴が上がる。制止の言葉が漏れる。
 しかし、そのうちに彼女の声は喘ぎに紛れて不明瞭なものとなっていく。いつしか彼女が夫の頭に手を伸ばしているのは
制止のためではなくなっていた。感覚に耐えるようにその髪を掻き回す。
 しかし彼女の体は打ち震えている。口から漏れるのは紛れもない艶の声になりつつあり、その細い体をくねらせていた。
足の力も抜けて行き、徐々に夫の顔を受け入れるかのように軽く開いていった。


 エヴァンゼリンの中で、ある感覚がじわじわと強まっていく中、唐突にミッターマイヤーは顔を上げた。舌が彼女の敏感な部分から離れていく。
 彼女は夫の行動をぼんやりと見ていた。舌での愛撫が中断されたとは言え、未だにその部分には熱を感じる。
それに彼女の内部に入り込んだ2本の指は、抜かれる気配はなかった。
 ミッターマイヤーはエヴァンゼリンの顔を覗き込んだ。自分の舌で唇を湿らせてから、彼女の頬に軽く口付ける。
その感触すら、彼女には疼きをもたらした。既に体全体が熱い。ベッドに横たえられた時から確かに熱は持っていたが、
今の熱はその時のものとは明らかに違う。
「ごめん、エヴァ」
「…え?」
 夫からの唐突な謝罪の言葉に、彼女はきょとんとする。熱に浮かされた表情のまま、小首を傾げた。
 その仕草に当の夫は苦笑を浮かべる。自由になっている蜂蜜色の髪を掻き上げた。
「俺…もう限界だ。――いいかな?」
 どちらかと言うと照れ笑いの区分に入るような苦笑で、彼はエヴァンゼリンにそう問いかけた。
 そう言われた妻の方は一旦口篭る。何を言われているのか一瞬理解できなかったらしい。が、徐々に思考力が彼女の頭に復帰し、
夫が何を言わんとしているのかを悟っていく。さっと頬に紅が差す。
 しかしすぐに彼女は微笑を浮かべる。夫に視線を合わせ、口元を綻ばせて、軽い動作で首を縦に動かした。
 その動作を見ると、夫は心底嬉しそうな顔をして笑った。今度は彼女の首筋に軽く口付ける。そのキスは、彼女にはくすぐったさと幸せをもたらした。
 彼は唇と手を妻から離した。そしてもう片方の手もゆっくりと抜いていく。彼女の中に埋没していた2本の指が、
内壁を擦り上げながらも外に出されていく。その何とも言えない感触を、エヴァンゼリンは瞼を伏せて味わっていた。
 遂に指が完全に抜け切った時、彼女は一抹の物足りなさを感じていた。しかし、そんな自分を何処かではしたないと思う自分も未だ存在していた。
 逆に言うならば、この感覚や熱をはしたなく思う気持ちが、彼女の中から確実に減少してきていた。
 指を解放し、粘液がそこからじんわりと溢れ出す様を、ミッターマイヤーは一瞥していた。――正に蜜壺だと彼は思う。
 しかし彼は落ち着いてもいられなかった。片手をその蜜で濡らしたまま、自らが穿いていたズボンに手をかける。
 布地に粘液が塗り付けられる格好になるが、彼はそれを気にしている余裕を持たない。小柄ながら均整が取れた肉体を持ち、
引き締まった腰を収めているズボンの前を開いた。
 自宅用の私服のためにゆったりとした布地ではあったが、それでも押さえつけられていた。これ以上放っておけば暴発も必至だった――
彼が下着ごとズボンを引き降ろした事で、既に昂っている彼の雄が露になった。
 彼はエヴァンゼリンから視線を外し、ひとまず自分の衣服を脱ぎ去る事に専念していた。脛の辺りまで下ろされてまとまった状態の
それらを脱ぎ捨てようとするが、すんなりとは行かない事に彼は顔をしかめた。
 とは言えそれ程手間取る事もなく、彼は鍛え上げられた肉体を惜しげもなく妻に晒す格好となる。
 しかし手間取る夫の姿を一瞬でも目撃したエヴァンゼリンは、何だか微笑ましい気分になってしまう。余裕が僅かになくなった夫の代わりに、
彼女のように僅かに余裕が現れた。
 と、膝の辺りで引っ掛かったままの彼女自身の下着の存在に気付いた。彼女はその僅かな時間を利用して、
それを脱ぎ去った。彼女はそれを衣服の山の頂点にまた投げる。



 エヴァンゼリンは視線を前に戻す。そこにはミッターマイヤーが居た。ベッドに身を預けて横たわる妻を見ていた。
彼女の頬に手をやり、顔を傾けさせた。エヴァンゼリンはそれを受け入れた。
 ふたりはそのまま深い口付けを交わす。両者ともそれなりに興奮状態にあり、舌を絡める合間の呼吸が何処かしら荒々しい。
 ミッターマイヤーの片手が、エヴァンゼリンの太股に伸びる。内側からゆっくりと押し、広げさせた。そこに彼は体を割り込ませていく。
 エヴァンゼリンの柔らかい、蜜を溢れさせた部分に、突付くように触れるものがある。その感覚に彼女は眉を寄せた。
キスで塞がれた唇の中で、僅かに声を上げる。
 が、突付くように触れたのは一瞬であり、それはゆっくりと押し付けられる。そして彼女の体はそれを拒もうとはしなかった。
掛けられた圧力を受け入れ、押し付けられていたものがゆっくりと、押し込まれていく。
 それに対し、エヴァンゼリンが鼻に掛かった声を上げた。彼女の夫が唇を離してやると、喉を反らせる。解放された口から吐息が漏れた。
 ミッターマイヤーはゆっくりと彼女に圧し掛かる。彼女の中に受け入れられていく己自身に纏わりつく感触に、彼は眉を寄せた。
奥歯を僅かに噛み締め、息を堪える。
 着実に進めて行き、やがて夫婦はひとつになる。エヴァンゼリンは己の中に、ミッターマイヤーの雄を完全に受け入れた。
互いに抱き合い、体を密着させる。鼓動も呼吸も同一のものであるように思えた。
 ミッターマイヤーは自らの雄が心臓と連動して脈動しているかのような錯覚を起こし、それが妻に伝わっているのではないかと思った。
そしてエヴァンゼリンは確かにそんな夫の脈動を、自らの敏感な部分の粘膜から伝達されているかのような錯覚に陥っていた。
 彼女の内部に入り込んでいるものは単なる異物ではなく、熱を持っていた。そして彼女はその熱がまた、自分の熱を
更に上げるのではないかと思った。
 実際に、自らの内部も発熱してきたように思えていた。熱いだけではなく、堅く大きなものが、彼女を中から圧迫する。
その感触を彼女は追っていると、不意にじんわりと、彼女の中から何かが伝わってきた。
「――あ…っ」
 掠れた声が彼女の喉から発せられる。夫の背中に回している腕に力が入る。
 一旦感じた感覚が、彼女の中で繰り返されていく。それは反復される度に徐々に強まっていく。彼女はその感覚に、夫の下で身をよじらせた。
 ミッターマイヤーが彼女の様子を見て、軽く息をついた。――馴染んだだろうか。彼はそう思い、我慢の時が
ようやく終わりを迎えた事を知った。そして彼は今度は彼の欲望のままに行動を開始する。軽く腰を動かす。彼女の最奥を突いた。
 弾かれたように妻の体が反応する。彼に絡み付く腕が、強くなる。柔らかい胸が彼に押し付けられた。そこに何かしらの
小さいながらも堅い感触を彼は覚える。どうやら彼女の乳首も堅くなってきている様子だった。
「エヴァ、行くよ」
 彼は短くそう言う。しかし彼女の答えを待たないまま、彼は律動を開始した。




 エヴァンゼリンは夫の逞しい体にしっかりとしがみ付き、時折顔を振っている。彼女を抱き締める夫の動きに合わせて、彼女の体も揺れる。
 彼女の半開きの口元は濡れていて、揺らされるのに合わせてそこから吐息と、時には嬌声が漏れ出してきていた。
 彼女は酷く熱さを感じていた。体全体に熱が篭もっている印象があり、今突き続けられている場所とその奥が更に熱い。
しかし疼痛を感じる時期はとうに過ぎ、彼女に今もたらされているものは快楽のみであった。
 揺らされながら、彼女は夫を強く抱き締めた。そうする事で体が密着する。それでも彼女はまだ足りないような気がして、もっとしがみ付いた。
 ――遮るものはもう何もない。この人は今、私の傍にいる。そんな事を思い、顔に微笑が浮かびかけた。が、夫の律動により、
口から不明瞭な言葉が漏れ、その表情が完全に形作られる事はなかった。
 喉の奥が焼け付くように熱い。体の中の熱を放散させるための息が、直に当たる場所だからだろうか。今の彼女には
そこまで考える事は出来ない。自分が何を口走っているのかも判らなくなってきていた。
 不意に、口を塞ぐ感触がした。同時に柔らかいものが彼女の口の中に侵入してくる。ミッターマイヤーが覆い被さって唇を重ねてきたのだ。
 呼吸を妨げられて少し苦しくなったエヴァンゼリンは喘いだ。逃げようとする彼女の舌を、夫は絡め取る。
妻の熱い吐息を飲み込んだ。
 また違った淫靡な水音を耳に感じながら、エヴァンゼリンは夫の首筋に腕を回す。後ろ髪を指で絡め取ると、指の間でまた
心地良い感触を得る事が出来た。
 彼女は、伏せた瞼の奥が、段々と真っ白になってきたような気がした。激しくなってきた律動の中、自らの息が荒くなってくる。
――その感覚が、一気に押し寄せてきた。
「――ああ……っ!」
 エヴァンゼリンは白い喉を反らせて、短く叫んでいた。何も考えられない。頭の中が真っ白になってしまった。ひとつの感覚に体全体が支配される。
 彼女がその悦楽に身を任せ、夫にしがみ付くと同時に、彼女の内壁が強く収縮した。侵入を許していた夫の雄に、刺激が加わる。
既に充分に怒張していた状態のそれに柔らかく肉が絡み付く。
 ミッターマイヤーもその刺激にとてつもない快感を感じていた。眉を寄せ、眼を細める。彼は限界に到達した事を悟り、
彼女の内部を一際大きく突いた。根元まで深々と侵入させ、その全てに妻の肉感を感じさせる。
 低く短く唸り、彼は自らの欲望を解放した。



   


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