グループのメンバーが不満そうなことくらい、バンドーも気づいていた。
けれどその発案はあまりにも唐突で、彼女には修正するので精一杯だったのだ。
野ブタ。をリンカーン
男から暴力を振るわれる恐怖はわかっている。
あの怯える少女がそんなことをされたらどうなってしまうのか―-―。
脳内の知恵を総動員して、軌道をなんとか修正した。
バンドー、手ぬるいよ?とメンバーは口を尖らせたけれど。
体育館裏の空間。
バンドーグループに追い詰められても、野ブタは相変わらず俯いたままだった。
これから始まることに今更緊張しているのか、ヌマタもノムラもハシモトも無言。
バンドーは、いっそやめてしまいたい、と思っていた。
きっかけを作ったのは、野ブタ。
おそるおそるといった様子で顔を上げて…その瞬間、ノムラと眼が合ってしまった。
ノムラの嗜虐性に火がついたのが、斜め後ろで腕組みをしていたバンドーにもわかる。
ノムラは唇の端で笑うと、あっという間に野ブタの上着を脱がせて、ネクタイの結び目に
指を突っ込む。
唖然とする野ブタと、勢いづいたノムラを見比べて、ハシモトは口を開けたが、
ヌマタが誘われるように野ブタのスカートに手を伸ばした。
ノムラがネクタイをひきちぎるようにほどいた時、プリーツスカートが足元に落ちる。
野ブタは、何か言いたげに顔をわずかに上げる。
「…何よ?」
ノムラはその態度が気に入らなかったらしく、苛立たしげにシャツのボタンに手をかけた。
「……ちょ…!」
バンドーは止めに入ろうとして、驚いたように向けられたハシモトの視線に気づく。
ここで止めたら、明日から自分はどうなる。
そんな考えがふと頭をよぎって、バンドーは無理矢理微笑んだ。
「……やってやんな」
その言葉に力づけられたように、シャツのボタンを引きちぎろうとするノムラ。
さすがに抵抗しようとした野ブタを、ヌマタとハシモトが両脇から押さえた。
いつも俯いている暗さとは不似合いなほどに、華奢で可愛らしい白いレースのブラジャー。
冬の冷たい空気の中、それとお揃いのパンティとハイソックスだけの姿にされた野ブタは、
色白の肌を粟立たせていた。
恐怖からか、寒さからか。
このくらいで腹いせが収まってくれないものか、とバンドーは考える。
しかし、女子は残酷なものだ……特に、集団となると。
なぜか急にはりきった様子のハシモトが、うふふ、と笑って野ブタの後ろに回る。
身の危険を感じたか、咄嗟にブラジャーを押さえようとした野ブタの努力は、
ヌマタの手によって封じ込められた。
白いブラジャーが落とされて現れる、ほっそりした身体にふっくらと息づいた胸。
白い肌に、桜色の乳首。
身体を震わせる野ブタを、バンドーは可愛いと思った。
女のアタシですら、守ってやりたいと思う。
だけど。
「バンドー」
うながすようなヌマタの声に、バンドーはふらりと野ブタの前に立つ。
俯けないように後頭部をノムラに固定された野ブタは、怯えていた。
眼を見るのではなかった……と後悔しても、もう遅い。
罪悪感を振り払うように、バンドーは野ブタに唇を重ねた。
噛み付くように。
肩を押さえたハシモトの腕の中、野ブタがびくりとわななく。
バンドーはいつもの癖ですぐ眼を閉じたから、気づかなかった。
野ブタが、どんな表情をしていたのか。
至近距離でバンドーの瞳を見、溢れる罪悪感に野ブタは気づいてしまった。
気づいてしまったら、抵抗することは出来なかった。
野ブタはそっと眼を閉じる。
硬直している野ブタの唇をこじ開けて、甘い舌の感触に蕩けそうになる。
いつの間にか夢中になって、バンドーは野ブタの舌を味わっていた。
下唇をかるく噛んで、名残惜しいと思いながら唇を離す。
野ブタは長い睫毛を伏せて、すこしだけ口を開けていた。
下瞼がやや紅い。
その扇情的な表情に、バンドーは何故か嫉妬した。
目の前で繰り広げられた濃密なキスシーンに、ノムラとヌマタとハシモトは
ごくりとつばを飲み込んだ。
やや濡れている3人の眼を見回して、バンドーは命令する。
「ヌマタとノムラは後ろから。ハシモトはこっち」
攻める方向を指示されると、倒錯した欲望に燃える少女達はすぐに従った。
髪を持ち上げ、ヌマタが野ブタのうなじに触れる。
「……!」
はじかれたように顔を上げる野ブタに、ハシモトがにんまり笑う。
前から首筋に噛み付くように舐めあげた。
「…っひゃ……ぅ…っ!」
ノムラは背筋をすうっとなぞると、いきなり太股に指を這わせる。
「やぁ……!……い……ゃぁ……」
感じているのだろうか?
それとも、絶望しているのか?
野ブタは抵抗しない。
バンドーはその全ての反応を見届けてから、やわらかそうな胸に手を伸ばした。
ぐにゃり、と形を変えるほど強く握る。
「……!ぃ、……痛……!」
訴えかけるように彼女を見た瞳は潤んでいて、なんだかとても苛めたくなった。
形を変えた白い胸の真ん中、桜色の頂点にむしゃぶりつく。
あちこちで押さえつけられている野ブタの身体が、それでも弓なりに反り返る。
「……やぁああああ……っ!」
声の高さに驚いたハシモトが、慌てて口を押さえたので、喘ぎ声はくぐもっていた。
それでも明確に示された少女の欲望に、バンドーの身体の奥が反応した。
ゆっくりと乳首の周辺を吸って焦らす。
反対側では、ヌマタがうなじを、ノムラが腰を愛撫していた。
ハシモトは口をふさぐ意味でもあるのか、野ブタにキスをしている。
「んん……あ……ん、う……ぁ……」
顔が離れるたび、うつろな眼の野ブタを見てバンドーは苛立つ。
……ハシモトのキスでも、簡単に受け入れることに。
焦らすのをやめて、乳首を吸う。周りからゆっくりと舐めて、すこしだけ甘噛みする。
「ふぁ……やぁ……あ、あ、……ぁん」
ヌマタとハシモトが交互に唇をふさぐから、甘いすすり泣きが切れ切れに聞こえる。
ノムラが脚を開かせると、白いパンツは少し変色していた。
「バンドー、こいつ、……濡れてる」
「いやぁ…………あ、は、う……やぁ……あッ」
胸をしゃぶることに夢中になっていたバンドーの下半身が疼く。
それはまるで、自分のことを指摘されたような気分だった。
ノムラに頷いてみせると、ノムラは無理矢理パンツを剥ぎ取った。
本当にハイソックスだけしか身に着けていない姿にされた野ブタの前、
バンドーはゆっくりと舌を這わせながらしゃがみこむ。
指でなぞったら、つぷり、と音がした。
「……感じてるんだ?野ブタの癖に」
「無理矢理やられるのが感じちゃうんだ?インラーン」
「ヤリマンなんじゃね?こいつ……」
まるで男のようなセリフで、少女達は野ブタを攻める。
それに益々蜜を溢れさせるソコに、バンドーは人差し指を沈めた。
「あ、ああああぁッ……はぁ……あぁ、や、ふぁ……ーん」
ひざをがくがくさせると、野ブタが倒れそうになる。
うしろから抱きかかえたノムラが、にんまりと笑って耳をしゃぶった。
ヌマタとハシモトは、濡れた眼で野ブタを見つめると胸にしゃぶりつく。
「……あ、あ、……やぁッ、め、……、て、……くだ……あぁ……ん!」
熱くなった蜜壺をかき回されて、身体をぶるりと震わせる野ブタ。
その紅い頬、欲望でうつろにうるんだ瞳、半開きの濡れた唇。
バンドーはそれを確認すると、生まれて初めて、女子のソコにキスをした。
乱暴にしてやりたくなって、わざと強くクリトリスを舐める。
「……ひゃ、やああああ、ふぁ……ぁはぁ……あぁん!」
溢れてくる蜜を舐め取って、これが女の子の味か、と思ったら
自分のソコからもとろりと零れだしている感じがした。
あぁ、……イキたい。イカせてしまいたい。
それからのことを、バンドーは正直ちゃんと覚えていない。
全員で野ブタを貪るように愛撫して、バンドーが野ブタのソコに
中指と人差し指を突き立ててかき回し、クリトリスを舐めて……
「あ、ああッあああ、ダ、ぁ……メ……で、……ああああ、ふぁ……」
空を掴むように野ブタの手が差し伸べられて。
「どうしたの?」
その手を掴んで、バンドーはわかっているのにわざと意地悪く訊いた。
「なん、…………ああああ……、へ、ヘン、ヘンな……の……ああん、やぁ」
バンドーはその手を掴んだまま、クリトリスから顔を離して立ち上がる。
指で執拗にいじりながら、野ブタに唇を重ねた。
「ふぁ、……やぁ……、あああっ、ダ、ダメ、やぁッ、あ、あ、ーーーーー……ーー!」
絶頂にたどり着く瞬間、野ブタは誰かの名前を叫んだ、と
バンドーの聴覚は認識していた。
その意味を深く考えることが出来ない程度に、彼女も絶頂を迎えていた。
誰にも触られていないというのに。
その瞬間、バンドーはとても幸せだった。
が、眼を開けたバンドーは後ろを振り返り、愕然とする。
ノムラの腕の中、失神した野ブタが最後に叫んだ名前―――その、持ち主が。
走ってきたらしい息遣いの中、怒りに震える眼で、少女達を睨んでいた。
初めて見る彼の真剣に怒った表情に、バンドーは身震いした。
おそらく誰かにバンドーグループに連れ去られた野ブタのことを聞いて、
走り回ったに違いない彼は肩で息をしていて、こちらを睨みすえたまま
その肩を怒らせるとバンドーに近付いた。
否。
野ブタに近付いた。
何も言わずに、地面に落ちた野ブタの制服を拾い集める。
引き裂かれたシャツに顔を顰めると、全てを腕にかけた、
ノムラの腕から野ブタを奪い取るように抱き上げて上着をかぶせる。
その無言の背中が「許さない」と言っているようで、
少女達は何も出来ず立ち尽くした。
人気のない非常階段を昇り、彼は野ブタを屋上に連れて行く。
本当ならどこか暖かいところへ連れて行くべきなのだろうが―――
ここの他に、連れてくるべきところを思いつけなかったのだ。
そっと床に野ブタを下ろすと、コートを脱いで下に敷く。
上に野ブタを寝かせて、2人分のジャケットをかけてやった。
ところどこに残る紅い痕を見ながらそっとスカートをはかせる。
それでもまだ寒々しく感じて、一度下ろした野ブタを抱き上げる。
無残な状態になってしまったシャツを着せるのはしのびなくて、
素肌にジャケットを2枚着せて、腕に抱いたままコートをかける。
「信子……」
腕の中で無垢な表情をしている少女に、自分が恋していることに気づいたのは、最近。
見当たらない彼女が連れ去られたと聞いて探し回って、見つけて。
自らのキャラが崩壊するくらいの怒りを覚えた。
彼女のことだ、どうせほとんど抵抗らしき抵抗もしなかったのだろう。
あの場に女子しかいなかったことで、ある意味で彼は安心もしたのだが………
それが、まさかバンドーの精一杯の優しさだとは、彼にも気づけなかった。
ただ、あの現場を見てしまって、平静でいられるほどには、彼は大人ではなかった。
彼女の汗で湿り、すこし冷たい髪を、男にしては細く長い指で梳かす。
そのまま流したらしい涙の跡をぬぐって、やや半開きになった唇をなぞる。
身震いするほど寒い空気の中で、上気した桃色の頬がゾクゾクするくらいいやらしい。
目尻に残る涙の雫に、思い余って口づけた。
抱きしめた腕に力を入れすぎたか、それとも―――
姫は本当に王子様のキスで目覚めるものなのか、などと完全にメルヘンなことを考えてしまう
そんなタイミングで―――彼女の睫毛が震える。
ゆっくりと開いていくその瞳に、自分の邪な欲望が映った気がした。
だから、何も言えずにただ抱きしめて、開いた瞼を再び閉ざすように口づけた。
柔らかい唇。あたたかく湿って、甘い。
腕の中、少女はわずかに身じろぎをして、安心したかのように力を抜いて応えた。
その反応に驚いて、彼は身を起こす。
さっきまであんなことの渦中にいて、今、男の自分と二人きりで、何をされているのか、
彼女は本当にわかっているのだろうか?
突然離れたぬくもりに眼を開けた彼女は、いつもの無表情だった。
けれどその瞳はいつになくまっすぐ彼を見ていて、そしてとても澄んでいた。
彼は突然、言うべき言葉を思いついた気がした。
「……俺、信子が好きなんだ」
他の誰かが見たらわからなかったかもしれない。でも、彼にはわかる。
彼女は瞳を細めて……かすかに、微笑った。
side-s[修×信]
side-a[彰×信]