わずかに微笑んだ彼女に、彼はめまいすら覚える。
その反応は、オッケーってことなのか?
自分の知識を端からひっくり返してみても、その答は見つからなかった。
戸惑う彼に、彼女はそっと手を伸ばす。
「あの……」
おずおずとかけられた声に、彼はどう応えて良いのか視線をさまよわせた。
きゅ、と握られた手に、全身の血が駆け巡る。
「……何?」
今の言葉は冷たくなかっただろうか。傷ついている筈の彼女にひどくはなかったか。
彼は答えた瞬間にそう後悔したが、彼女は特に気にしなかったようだった。
「わ…わた……し、ね、きっと…………助けに、……、来て……くれる、
気が、…………………して……」
予想もしていなかった言葉に、思わず「俺が?!」と問い返してしまう。
「うん、……………き、……りたに君、が」
切れ切れに呼ばれたその名前に、胸が締め付けられた。
人気者の桐谷修二を投げ捨てて、助けに来ると、信じていた?
今までの彼女の思考ではありえない発想じゃないか。
「どうして?」
「どうして…………?だろう……?だっ……て、桐谷君は……」
わずかに息をつくと、こんなこと言って良いのだろうか、と逡巡する。
なるべく優しく響くように心がけて、「俺が?」と相槌を打ってみた。
「……いつも………………最後は…………助けようと、してくれるから」
主人を信じきっている犬みたいに、信頼に溢れているその瞳を見て。
カラッポの桐谷修二は、もう我慢できなかった。
すがり付きたかったのは、桐谷修二、俺の方だった。
再び重ねた唇は、さっきより少しだけ熱かった。
やや開いていた唇の中、割って入って感じたのは未知の甘さ。
ありえないくらいやわらかくて、強く吸ったら溶けてしまいそうで、修二は躊躇する。
そんな理性とは裏腹に、身体はもう暴走を始めていて。
彼女が握っていた手をそっとはなすと、首の後ろに手を添えて支える。
もう片方の手で床にコートを敷くと、ゆっくりと押し倒した。
全く抵抗しない彼女に不安になる。
「……いいの?」
ごく小さく震えて、彼女は彼を見つめたまま、頷いた。
片手で背中を支えたまま、さっき着せかけたジャケットを開いて、驚くほど柔らかい胸に触れる。
「あ……」
微かに息を乱した彼女の、桜色の乳首を弄る。
「んッ……あ……あぁ……ン」
気絶するまで弄られていた快感が尾を引いていたのか、女はそういうものなのか。
修二は判断に困りながら、欲望のままその胸に吸い付いた。
やわらかい先端を舌で転がすように舐める。
開いている方の手で、もう片方の乳首をひねるようになぶる。
「あッ……んんん、……あ、あぁ……や、桐谷く……」
下半身がより昂ぶるのを感じて、修二は彼女に要求していた。
「修二。修二って呼んで」
潤んだ瞳で彼を見つめて、恥ずかしそうに彼女はまばたきした。
どうしても呼ばせたくて、より一層熱心に愛撫する。
「ふ……あ……あ、あああああッ……」
腕の中で、まるで暴れるように身をくねらせて、彼女が喘ぐ。
明らかに熱を持ってきているその身体を押さえつけるように、
かるく左の乳首を噛んだ。
「……ぃ……た……ッ、あ……あん」
その反応を見ていると、彼女を苛めたくなったバンドー達の気持ちが……
少しだけ、判る、そんな気がした。
「痛いの?気持ちいいの?」
ついかけてしまった意地悪な言葉に、彼女は素直に反応した。
「あ……気……持ち、……い……ぃ……ぁ……で……す…………んッ!」
思いのほか素直な反応に、修二は昂ぶった自分を御せなかった。
執拗に乳首を攻めて、彼女が苦しそうに喘ぐ。
ただしゃぶっていたかった。
だんだん桜色に染まりつつある彼女の全身を舐め尽したかった。
たっぷりと濡れてうつろに修二を映すその瞳を、至近距離で見つめる。
「信子……」
名前を呼ばれて、彼女の瞳に光が宿る。
見つめ返された自分がその瞳に映って、二人ともとてもいやらしい表情をしていた。
「いい……?」
ためらいながらスカートに触れると、かすかに彼女が頷いた。
先程拾ったはいいものの、下着は履かせることが困難な状態だったから、
スカートに手を入れると、そこはもう熱い泉だった。
触れてしまったら、もう我慢できなくて、修二はうめく。
「信子……俺、してほしいことが、ある……」
「う……ぁ、わた、わたし……に?」
首をかしげる彼女の前で、修二は制服のパンツのチャックを下ろした。
トランクスをずり下げると、熱い塊が飛び出す。
驚愕の表情の信子の、小さな唇の前に、酷と判っていてもつき出さずにはいられなかった。
「しゃぶって」
こくりと息を呑むと、彼女は、どうして良いかわからない、という表情をする。
実は修二だって、どうすれば良いのかなんて判っていなかったのだが。
「握って、口開けて」
おそるおそる、といった風情で小さな手を伸ばし、包み込まれる。
修二のそれは既に熱く硬い棒になっていて、おそらく初めて見たのであろう信子は
握って唇を寄せた後、当然のようにためらった。
「……信子」
欲望でかすれた声に呼ばれて、唇を開く。
「………………………………ッ!」
触れられた、そのあまりの快感に、修二の背中を何かが走った。
誰に教えられたわけでもないのに、亀頭を口に含むと、一生懸命先を舐め始める。
やわらかくて、ぬめぬめしていて、熱い。
圧倒的なまでの気持ち良さに、修二は陶然とした。
先からにじみ出る透明なモノが苦くて、信子はすこし眉をしかめる。
それにも気づかないくらい、修二は信子のフェラに没頭していた。
そのままでは出してしまいそうだ、と感じて、修二は慌ててソレを引き抜く。
不思議そうな表情の信子に、「サ……ンキュ、気持ち……良かった」
と言葉をかけると、顔を真っ赤にして俯いた。
それが可愛くて、もう一度コートの上に押し倒す。
先程触れた蜜壺に指を差し入れる。
「う……あああん、……あふ……あ……あァんッ……」
一気に快楽に溺れる彼女に、修二は分身をあてがった。
さすがに彼女がすこしこわばる。
「痛かったら、言って」
声をかけて、我慢できずに欲望の塊を突き入れた。
腰から下が溶けるかと思った。
信子は声も出せず、瞳を見開いた後、ぎゅうっと瞼をきつく閉じた。
「痛い……?」
ふるふると首を振ったが、痛いに違いない。けれど。
修二には思いやってやれる余裕がなかった。
「ん………………ッ!」
一気に腰を動かして、あっという間に登りつめて行く。
最後の理性で白濁液だけは外に暴発させた後、修二は焦った。
「ごめ……ッ!信子、信子、大丈夫?」
慌てる彼に、信子は涙をたたえた瞳をゆっくり上げた。
「……だいじょうぶ、……です、…………修二君……」
その瞬間、「桐谷修二」は「カラッポ」ではなくなった。 [side-s/終了]