***4:オルガの初恋***
 

361 名前: オルガ ◆TfPXe8kems [sage] 投稿日: 03/07/15 14:44 ID:???
休暇だ。やっと休暇だ。作戦がひと段落したらしい。
休暇か、どこ行くかな。やっと給料も入ってきた。DVDプレイヤーとDVDでも買うか?
もう一回見れるのか。あれが。ちょっと顔がにやけた。そんなことをしながらベッドでごろごろしていると、
インターホンが鳴った。アズラエルだった。俺たちを日本に連れてってくれるらしい。
日本なんて知らなかったが、海外旅行なんて久しぶりだ。海外侵略しかしてなかったからな。
シャニは、行きたくなさそうだ。クロトも嫌みたいだ。やっぱり俺はがきなんだろうか?
しかし、三人中二人行きたくないなら中止だろうと思った。が、アズラエルは俺が行きたそうなことを察知したようで、
俺だけで行けといった。どうしても行かせたいようだ。聞けば買ってきてほしいものがあるそうだ。
ウメボシ、漢字入りのTシャツ、等など、わけがわからないが日本らしそうな物がいっぱいだ。
結局アズラエルのお使いに俺一人で日本に行くことになった。民間の航空機に乗っていくことになった。
飛行機の中、俺は日本ガイドを見た。俺のつくころには、夏祭りというものがやっているらしい。
妙に心が引かれた。運命的なものだ。何がなんだかはわからなかったが。
そろそろ着くようだ。久しぶりの休暇、充実してすごせそうだ。

出発編 終

368 名前: オルガ ◆TfPXe8kems [sage] 投稿日: 03/07/15 15:09 ID:???
日本に着いた。空港は人が多い。暑苦しい。暑苦しいのは人が多いせいだけではないようだ。
日本の夏はとても暑いのである。ちょっと動かないとくらっときそうだ。さっさとホテルに行こう。バスに乗って、2,3時間かかるそうだ。
暑さでだれていたが、バス内はエアコンが効いておりとても心地よかった。目的地に着いた。
バスを降りる。辺りを見回した。海が見える以外何もないところだ。アズラエルがホテルは
海が見えるいいところだといっていた。しかし、車も出ないのか。徒歩で妙に田舎っぽい道を歩く。
熱かった。アスファルトに反射した太陽光でさらに熱かった。そろそろホテルのはずだ。
ここのはずだ。え〜と、杉原荘か、どこだ、あったここだ。看板が、、、 えっ、嘘だよな。
いくらアズラエルでもこんなところにとまれとは。目の前にはボロボロの民宿が建っていた。
その場で呆然とした。もう熱くない。背筋がサムい。ガラガラっと音がした。はっとした。
中から出てきたのは老婆だった。おそらく宿主だろう。外に水を撒きに来たのか、手には桶とひしゃくを持っていた。
老婆は俺の事を見た。その瞬間目をまん丸にして俺を凝視した。
「あんた、オルガさんかえ?」
俺はこくりとうなずいた。さあさあこっちだと、中へ俺を案内した。マジかよ。
俺は荷物を思わずとりおとした。

アニメのタイプが変わり始めている第二部 終

375 名前: オルガ ◆TfPXe8kems [sage] 投稿日: 03/07/15 16:43 ID:???
部屋でやはり俺は呆けている。部屋を見回した。あちこち痛んでいる。また俺はぼぅとした。
あぐらをかいたまま左に倒れる。思いっきりため息をついた。アズラエルのことだ。予想しつくされていた展開なのに、
何故来てしまったのだろうか?…眠い。端の方に布団があった。敷布か。使ったことがないな。別に問題ないか。
とりあえず眠たかったので、自分で敷き、その上に寝転んだ。……寝つけない。背中が地面についてる感じが、
なんとなく嫌だった。右に転がり、左に転がり。落ち着かない。徒然なるままに時は過ぎていった。
そうしていると襖をとんとんとノックする音が聞こえた。はっとした。さっと起き直して、はい と言った。
すると例の老婆が入ってきた。そろそろ夏祭りが始まるらしい。浴衣を入り口のところへ置き、老婆はぴしゃりと襖を閉め、
そそくさと下へ降りていった。浴衣か。入り口のほうへ、四つん這いで歩いていった。ちょっと、着てみるか。
ちょっと着てみるかと言ってみたものの着かたがわからない。そういえば、俺はかばんの中からガイドを取り出した。
あった。浴衣の着かた。ふん、なるほど。ここをこうして。いやっ。違うかも。あっこうか。よし、着れた。
試行錯誤の末やっと浴衣を着た俺。鏡はと、、、無いのか。大して驚くことでもない。
さて、行くか。

言語の壁はご都合主義で解決!

378 名前: オルガ ◆TfPXe8kems [sage] 投稿日: 03/07/15 17:31 ID:???
宿主に神社までの道を聞いた。一本道だそうだ。外に出て宿を見た。
古いな。見直しても。俺は神社への道を歩き始めた。しかしこの光景は何度見ても飽き飽きする。
15分位して神社に着いた。田舎だと思っていたけど、この神社は空港ぐらい混んでいる。
人の流れに任せて歩いた。ちょうちんの赤い光がちらついた。黒い山の中で俺は相当目立ってんだろうな等と考えた。
そんなことを考えている自分がとても平和だと感じた。そんな時ひとつの出店に目が留まった。金魚すくいか。
ガイドにも書いてあったな。やってみよう。やっぱり俺はがきっぽいようだ。
「すいません、一回分お願いします」
店主に100円を渡しました。換金を50000円分済ませてある。金は十分にある。ボウルとすくいをもらった。
たくさんの金魚が水槽の中で泳いでいる。一匹だけ目の大きくて、黒いものがいた。こいつをとろう。
静かに狙いを定めて、じっくりと見つめ続けた。よし、いまだ!すくいを急いで滑り込ませた。
よっしゃ!しかしすくいに上にはには金魚はいなかった。よくみると俺のすくいともうひとつのすくいとがぶつかっていた。
「す、すいません」
おれは明らかに嫌な顔をして、声がしたほうを見た。と、同時に俺の顔は驚いた顔になった。
そこにいたのは髪を後ろで玉にしてまとめ、浴衣を着た、可愛い女の子がいた。

427 名前: オルガ ◆TfPXe8kems [sage] 投稿日: 03/07/15 20:23 ID:???
「本当にすみません」
その子は本当にすまなそうな顔をしていた。
「いえ、その、いや、いえいえ。別に気にしないで!」
何を興奮してるんだ。俺!顔が一気に赤くなった。どうにかして目線をそらしたかったので、ふと水槽を見た。
その子のすくいは破れていた。
「ご、ごめんなさい、それ破っちゃって。」
いつもは絶対飛び出さない敬語まで出てしまった。この衝動は仮面ライダー以上だ。
今度は自分のすくいに目を向けた。破れてない。いい提案が浮かんだ。
「その金魚、俺が取ってあげる。」
「えっ!?」
俺はまた例の金魚を凝視した。今度こそは……絶対外せない。もう一度すくいを滑り込ませた。
さっと金魚をすくいにのせボウルに入れた。それを店の親父に渡した。親父は手馴れた手つきでビニールに入れ、それを俺に渡した。
「はい。」
金魚を手渡す。
「ありがとう!」
ニコッと笑った。
(!!!!!)
衝撃が俺を駆け巡る。どうかなってしまっている。薬が切れたときより苦しい。
「本当にありがとうございました!」
やっぱり俺ははっとした。
「あっ、うん。また…」
またってなんだ!俺!!そう思ったときには、既に彼女の姿は無かった。
俺はまだあの金魚を凝視していた、金魚まで真っ赤になっている

実はいろいろ考えさせられる終わり方をします。

442 名前: オルガ ◆TfPXe8kems [sage] 投稿日: 03/07/15 20:46 ID:???
「ふぅ。」
溜息をつく。なんて喪失感だ。祭りなんて大して見ないまま俺は宿に帰ることにした。
「ありがとう!」
あの顔を思い出すとその辺をのたうち回りたくなる。ううう…顔の紅潮が最高潮にたっした。
顔をパンパンと叩いた。こんな顔を誰かに見られる前に、俺は走って宿に帰った。
すばやく中に入った。2階の自分の部屋へとどたどたとあがっていく。
布団に突っ込んだ。熱がおさまるまで待つ。やっと顔が冷えてきた。
部屋の真ん中に移動する。しかしあの子は……
「ありがとう!」
また顔が熱くなってきた。もう一度布団に突っ込む。ふうう。重症だ、な。
もう一度部屋の真ん中に戻った。階段を上がってくる音がする。トントンッとノックされた。
「はい」
顔が冷えてることを確認してから言った。夕飯の支度ができたらしい。下にある食堂へと移動した。
木のいすだ。安心するな。目の前には和食が用意されていた。漬物をつまむ。食る。うまい。
もう一切れつまんだ。
「おばあちゃん、ただいま〜。」
機械的に後ろを見た。漬物を落とした。
そこにいたのは、あの女の子だった。

498 名前: オルガ ◆TfPXe8kems [sage] 投稿日: 03/07/15 22:50 ID:???
今回ばかりはびっくりしたのは俺だけではなかった。
「あなた、さっきの!」
口は開きっぱなし。箸も開きっぱなしだ。
「あの、さっきはありがとうございました。」
本当にありがたそうだった。俺は体勢をまったく変えずにうなずいた。
「うちのお客様だったなんて。」
そういうと彼女はそそくさと食堂の向かいの部屋へと入っていった。ここの人だったのか。
興奮より驚きが先走って、動けなかった。深呼吸をひとつした。相当深い深呼吸である。
次に顔が赤くなった。そして体中に痺れが走った。別にここの人だったからといってどうということはない。
しかしなんとなく嬉しかった。本当に嬉しかった。こんな感覚は初めてだった。恐らく夢だろう。これは夢だ。
あんなかわいい子がいることからおかしかった。ついに薬による幻覚がでたか?と思った。
とりあえず夢を覚ますべく、夕飯を一気に食べて二階に上がり寝ることにした。
布団に入っても彼女の顔しか浮かばない。もはやおきているのかいないのかわからなかった。
明日なったらすべて消えることへの希望と不安とともにいつの間にか俺は眠っていた。

次回最終回 苦悩編 苦悩で終わりかよ!

517 名前: オルガ ◆TfPXe8kems [sage] 投稿日: 03/07/16 00:20 ID:???
朝だ、たぶん朝だ。起きてしまったんだ。きっと朝だ。俺は上体を起こした。時計を見る。深夜だ。時差のせいで眠れない。
しかしそれだけの理由ではないことも明白だ。あの子のことがずっと気にかかっている。
ふぅ、溜息をつくのもこれで何回目だ?本当につらい。これが好きってことなのか?
……好きぃぃ!?あの子をか!? 夜にもかまわずドタバタしてしまった。落ち着け。俺。落ち着け。はい!
本当にこんなこと初めてだ。何かを抱きしめて、胸の空虚感を埋めたくなる。それがかなわない切なさってもんがあるんだろう。
なんかおれすごい感傷的になってる。しかも頭の中で物事がまとまらない。そんなことを考えていた。しかし、その思いを妨げるものは
突然やってきた。胸だ。胸が苦しい。咳が出る。いままでの痛さとは違う。……薬か!
俺は急いでトランクのところへといき、薬を吸った。今回のは別段ハイになることもない。言わば鎮痛剤のようなものだ。
少し落ち着いた。そのとき階段を上がってくる音が聞こえた。薬のビンを急いで隠した。
戸がぴしゃりと開いた。
「お客様、大丈夫ですか!?」
あの子だった。今度は本当に心配そうな顔をしている。この子はやさしい子なんだと思った。
「大丈夫だ、薬を飲んだから。」
嘘にはならないことを言った。そういう曖昧なことを言って罪悪感を紛らわせた。
「大丈夫ならいいんですが…。」
不安の中に少し安堵の表情を見せた。そしてちょっと間をおいてからこういった。
「寝付けるまでここにいます。もしものことがあったら困るので。」
俺の意識はその台詞でかなりはっきりとした。目を丸くして彼女を見る。またあのニコッとした顔を見せてくれた。
でももう顔が赤くなることはない。この子がとても優しいと知っているから。
「そいつはありがたいな。安心して寝れる。」
ちょっと調子に乗ったかもしれないが、なんとなく彼女といる時間がほしかった。俺は寝床についた。

苦悩編前編  終

529 名前: オルガ ◆TfPXe8kems [sage] 投稿日: 03/07/16 00:40 ID:???
枕元には彼女がいる。俺はとても安心している。嬉しさと興奮が入り混じっている。それが今の俺の安心だ。
少し話しかけようと思った。
「あんた、両親は?」
少し彼女は暗い顔になった。無理して笑った顔を作っていた。
「この戦争で、なくしたんです。」
俺の体が凍てついた。聞かなきゃよかった。そう思った。
「そうか。」
それしかいえない。俺は軍人だから。軍人のオルガだからだ。それからは会話はしなかった。
俺はうつむいて寝たフリをした。彼女は俺を見てねたことを確認したようだった。俺の頬に何かが当たった気がした。
そして彼女は去っていった。当たったもの、それは確かに彼女の涙だった。
彼女はもういないはずなのに、俺の頬はぬれ続けた。
朝になった。ほとんど寝ていない。帰る支度をまとめた。もう変える気持ちの整理はついていた。
下に下りるとそこには金魚鉢が置いてあり、おれのすくった金魚が入っていた。その金魚に落胆にも似た軽い笑いを放った。
(あの子だけは、お前に任せるよ)
「すいません。」
ロビーから人を呼んだ。部屋からは彼女が出てきた。
「もうお帰りになられるんですか?」
「ああ、多忙なものでな」
そうですか、と彼女の口が動いた気がした。
玄関へと向かった。そこで立ち止まり俺は言った。

また来るよ。



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