サキとおねぇちゃん

 ナイショ話2




「そう……大分、上手くなったわね。サキちゃん」

 アタシは荒くなりつつある息をできるだけ抑えて、妹のサキの耳元に、そう囁いた。

「うん……実はサキちゃん、一人でこっそり練習してたの」

 と、サキは顔を赤く染めながら答える。

「練習?」

「うん、本とかも買って、それを見ながら……きゃうっ」

 恥ずかしそうに告白するサキを見て、アタシは思わず彼女を抱きしめていた。

 だって……反則な程に可愛かったから……。

「だ、ダメだよぅ、おねぇちゃん! 急に動いたら危ないよっ、ケガしちゃう」

 慌てて、サキの身体がアタシの腕から逃れる。

「あ、ゴメンね……続けて」

「うん、分かった」

 再び、サキの指が動き出す。

「んっ……眼で見ちゃ駄目よ。指先だけで感じるの」

「こ、こう……かな?」

 サキの細い指が、たどたどしいながらも的確に場所を探り当てる。

 流石、アタシの妹なだけあってか、素質は十二分にありそうだ。

 ……お姉ちゃんは嬉しいよ。

「っ……そう、いいわ……もっと速く動かして」

 徐々にアタシの吐く息が荒くなり、心臓の鼓動が速くなってくる。

「う、うん」

「……っ!」

 その刹那、アタシの脳髄まで痛みが走った。

 激痛、と言う程ではなかったが、つい声が漏れてしまった。

「!? だ、大丈夫!? おねぇちゃん!」

 案の定、サキが指を止めて心配そうな目でアタシを見る。

「だ、大丈夫よ……続けて」

 アタシはサキを安心させようと、優しく微笑んで見せた。

「う、うん」

 それを見て、サキは安堵の表情を浮かべる。

 そして、指の動きが再開される。

「そう……まだ速くっ」

「う、うん」

「……もっと速くっ!」








「はい、10分」

「ふい〜」

「180文字か……まだまだねぇ……んっ」

「ブラインドタッチってのは、難しいよ……」

「キーボード見ちゃ駄目よ……くっ」

「っていうか、おねぇちゃん、なんでダンベル持ってるの?」

「ダイエットよ、ダンベル痩身法だって。……んんっ、って、こりゃ明日は筋肉痛かも……」

「また太ったの?」

「……うるさいよ」




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