「そう……大分、上手くなったわね。サキちゃん」 アタシは荒くなりつつある息をできるだけ抑えて、妹のサキの耳元に、そう囁いた。 「うん……実はサキちゃん、一人でこっそり練習してたの」 と、サキは顔を赤く染めながら答える。 「練習?」 「うん、本とかも買って、それを見ながら……きゃうっ」 恥ずかしそうに告白するサキを見て、アタシは思わず彼女を抱きしめていた。 だって……反則な程に可愛かったから……。 「だ、ダメだよぅ、おねぇちゃん! 急に動いたら危ないよっ、ケガしちゃう」 慌てて、サキの身体がアタシの腕から逃れる。 「あ、ゴメンね……続けて」 「うん、分かった」 再び、サキの指が動き出す。 「んっ……眼で見ちゃ駄目よ。指先だけで感じるの」 「こ、こう……かな?」 サキの細い指が、たどたどしいながらも的確に場所を探り当てる。 流石、アタシの妹なだけあってか、素質は十二分にありそうだ。 ……お姉ちゃんは嬉しいよ。 「っ……そう、いいわ……もっと速く動かして」 徐々にアタシの吐く息が荒くなり、心臓の鼓動が速くなってくる。 「う、うん」 「……っ!」 その刹那、アタシの脳髄まで痛みが走った。 激痛、と言う程ではなかったが、つい声が漏れてしまった。 「!? だ、大丈夫!? おねぇちゃん!」 案の定、サキが指を止めて心配そうな目でアタシを見る。 「だ、大丈夫よ……続けて」 アタシはサキを安心させようと、優しく微笑んで見せた。 「う、うん」 それを見て、サキは安堵の表情を浮かべる。 そして、指の動きが再開される。 「そう……まだ速くっ」 「う、うん」 「……もっと速くっ!」 「はい、10分」 「ふい〜」 「180文字か……まだまだねぇ……んっ」 「ブラインドタッチってのは、難しいよ……」 「キーボード見ちゃ駄目よ……くっ」 「っていうか、おねぇちゃん、なんでダンベル持ってるの?」 「ダイエットよ、ダンベル痩身法だって。……んんっ、って、こりゃ明日は筋肉痛かも……」 「また太ったの?」 「……うるさいよ」 |