|
彼の指が私の一番敏感な部分だけを避け、巧みに私を堕としていく。
私は彼の動きすべてに翻弄される、波間に漂う船のように。
その快楽の海で一人、呑まれていく。
それはいやなものではなかったが、恐ろしかった。
自分がどこへ連れて行かれるのかもわからない。
ただ、彼の動きに添い、砕かれ、私の理性などもう、とうにどこかへ消え去っていた。
「ぁ・・ぁぁ・・・・あんんん・・・んん・・・」
私の口から出るのはただ、の雌の声だけ。
彼の低い声が、私の耳になにやら言うが、その言葉に意味すらもう理解することなど出来ようもない。
あふれ出した水が止まることがないように。
私の快楽は既に高みだけを目指していた。
その何たる、浅ましくも、いやらしい、姿。
私のすべてが、それだけを求め、くねり、叫ぶ。
彼の指先から起こるその漣が、私の身体に大きな波を巻き起こす。
それはもはや流されてしまうしかない。
「ぁ・・ぁぁ・・・も・・・う・・・」
「いいよ・・・イって・・」
「だ・・・めぇ・・・・・」
「まだ・・・だから・・ね・・・」
・・まだ・・・・
その言葉は私の身体の疼きをさらに大きくする。
私は彼の囁きと、指先だけで絶頂に達せさせられてしまった・・・。
大きく息をつきながら、私はやわらかいベッドに沈む・・・・
その私の身体に彼が大きな手を優しく触れた。
「・・そんなに・・・よかった・・・?」
彼の低い声が私に降り注ぐ。
リネンに吸い込まれながらも私は小さく頷いた。
初めて味わう、恐ろしいまでの絶頂感。
それも、彼自身の欲望を満たすような行為無しで。
私はこの後に待っていることに思いをめぐらす。
この状態で彼自身を受け入れたらどうなるのか・・?
怖さと反対に、身体が熱くなる。
私が今まで知っていた快楽とは何だったのだろうか・・・
そんな風に思うほど、彼の愛撫は私を夢中にさせた。
私は息が落ち着いてくるのが分かった・・。
ぎしっと彼がベッドから立ち上がる感覚があった。
冷蔵庫を開ける音、そして閉めた音。
「いる・・?」
ミネラルウォーターのボトルを私の頬にこつんと当てる。
冷たいその感触が心地よかった。
私は身体をゆっくりと持ち上げる。
そして手を伸ばしそのボトルをもらおうとしたとき、彼の唇が私の唇をふさぐ。
そして口移しに飲まされる、冷たい水・・・・・
飲みきれないそれが唇の端から細い糸を作ってシーツに染みを残す。
「んん・・・・んん・・」
水のあとに口内には彼の舌先がもぐりこんできていた。
冷えた粘膜が、また、熱く激しく、燃え上がっていく。
私は無我夢中でその貪られるような口付けに応えていく。
彼の手が私の身体のラインを一筆書きするようになぞるたび、
喉の奥から湧き上がる喘ぎを抑えることが出来ない。
彼の手が私の手首を掴み、どこかへと誘導する。
半分は予感しながらも、私はその高揚感に酔った。
ほんのわずかな時間がとても長く感じられた。
・・早く・・・
私だけではない、
彼も私を求めていることを感じたい・・
私の手の甲が灼熱の杭を感じ取る。
「わかる・・?」
彼が耳元で囁く・・・。 |