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「え?」
疲れきった顔で俊も出てきた。しのやまと蘭世が話している所へやってきて、
「すいません、勝手なやつで来てしまいまして・・」
「いや、いいねぇ。な、真壁くん。どうだね記念に一枚奥さんと。」
「ええ??」
夫婦とも声がそろって叫んでしまった。
「よし、そうしよう。おい準備して。」
「え・・あの・・や・・その・・・」
「困ります!!!!!」
「無理ですよ、センセがああなったら誰も言うこと聞かないから。さ、奥さんに着替え。」
スタイリストが強引に蘭世を連れ去った。俊も後から追いかける。
「真壁さんの奥様かぁ・・・いいですねぇ。あんなたくましい旦那様なんて・・・」
「いや・・その・・・・あの・・私・・・」
「奥様もきれいねぇ、黒髪とか肌なんか真っ白で、さ、この衣装着てみて。」
「え・・・これって・・・・・」
「そうそう、旦那様にも準備が必要ですね。」
いそいそと部屋を出て俊の衣装を取りに行く。部屋の片隅でうんざりした顔で蘭世を眺める俊。
「ごめんね、俊。」
「ああ、まったくだ。こんなとこに来やがって。」
・・・それにその衣装・・・なんだよ・・・・・
きれいな衣装なのだが、透けるのだ。
「ごめんなさい、はい、真壁さんのほうはこれね。」
「へ?」
「アラビアンナイトって所。似合うわよお二人とも。」
・・・勘弁してくれよ・・・・
俊は頭を抱えた。
「さ、着替えて、先生がお待ちかねよ。」
夫婦は顔を見合わせ、あきらめたように着替えると、俊は蘭世にバスローブを羽織らせてスタジオへ連れて行った。
・・・・他の男になんぞ見せてたまるか・・・
そういう俊の嫉妬はおくびにも出さなかったが。
「じゃ、お二人さん。家でいつもするようにいちゃついて。」
「ええ!!!そんなこと・・・」
「人前じゃいやかい?じゃぁ、真壁くん、奥さん抱き寄せて・・・・・そう・・・・それから・・・」
俊は必死でカメラの方を見るようにしていた。下を見れば透け透けの衣装を着た蘭世、それも見えそうで見えないから想像力でいつもの素肌の蘭世を想像してしまう。
・・・・やべぇ・・よなぁ・・・・
「奥さん・・・・旦那さんのほう・・・向いて・・・・そう・・・」
シャッター音が響く。ライトの暑さで頬が上気して、いつもにもまして色っぽく見える。
・・・・・ちくしょー・・・・
ここがスタジオでなければ迷わず襲い掛かっているところだ。
「真壁くん、もうちょっと奥さんを情熱的に抱きしめてくれよ。・・そうそう、そんな感じ・・・
よし、いいぞ。・・・・・・よっしゃ!終了。」
詰めていた息を互いに大きくつく。
「さ、休憩したら真壁くんの続き撮るぞ!」
二人は控え室に行った。着替えを終えると
「も、帰れよ。ったく、もう・・・」
「はぁ〜〜い。ごめんなさ〜い。」
「いいさ、しかたねぇよ。忘れたのは俺だしな。」
・・・みれねぇもんも見れたしな・・・・
今夜が楽しみだなんて思ったことは内緒だ。 |