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「はい?」
返事はない。俊は仕方なくドアを開けた。
「おっおっおっまえ・・・・・・・・」
驚きで言葉が出ない。
「これ、忘れていったでしょ?」
いたずらっぽく笑いながら蘭世がそこに立っていた。
「来るなって言った筈だ!」
「忘れ物したのは誰?」
二人一瞬にらみ合った。それでもこのままでは人目につくと思ったのか俊は蘭世を控え室に入れた。
「それ、置いたらとっとと帰れよ。」
「・・・・ふ〜ん、こういうの着るの?」
「聞いてンのか!」
「聞いてるわよ。もう、どうして黙ってるのよ。ビックリしたじゃない。」
・・・・恥ずかしいんだよ、こんなん・・・・
俊が黙っているのをいいことに蘭世は続けた。
「見られるのイヤ?」
「・・・分かっていってるだろ。」
「まぁね。」
ぺろっと舌を出して、俊をからかう。
「ったく・・・」
俊は呆れたように肩をすくめる。
「真壁さん、そろそろいいですか?」
アシスタントが声をかけ、ドアを開ける。
「あれ?どなたですか。」
「あの・・・」
蘭世はどぎまぎして俊を見上げる。
「・・・妻です。すいません、突然来まして・・・」
「あら、奥様。じゃ少し見ていきませんか?すっごくいいんですよ旦那様。」
「え・・あ・・・じゃぁ・・・少しだけ・・」
躊躇いながら蘭世は受け入れる。俊はあきらめたように蘭世の頭をぽんとはたいた。
邪魔すんなよ、仕事中だの意味である。
「じゃ、どうぞ。」
二人はアシスタントについてスタジオに入っていった。
「真壁さんはあちらに・・・・奥様こちらの椅子でどうぞ。」
「じゃいきま〜す。」
シャッターの下りる音、ライティングの暑さ。
「パーテーション囲って、撮るから。」
蘭世はこっそり、アシスタントの方に聞いてみる。
「何してるんですか?」
「ああ、たぶん露出が高いものとるんでしょう。多いですよ、うちのセンセは。」
「そうなんですか・・・。」
露出が高いって・・・・それって・・・・。
蘭世は一人想像して、真っ赤になった。
「OK〜〜!いいよ・・・そう。・・・・こっち・・・・にらんで・・・」
間断なく聞こえてくるシャッター音、熱気が高まる。
「もう・・・・少し・・・・そう・・・そんな・・・・いいよ・・・・」
「OK!!!休憩入れて。」
影からカメラマンしのやまが出てきた。
「いいねぇ〜〜彼の身体、ほれぼれしちゃうねぇ・・・・あれ、この人は?」
「真壁さんの奥さんです。」
「へ〜そうなの。・・・・・・うん、いいなぁ・・・」 |