realize
7th immoral
彼の思いもまた複雑であった。
ただの、気まぐれのつもりだった。

単なる、チャットでのパートナー探し。
飽きれば、連絡をやめればよいだけの相手。
それだけのはず。

しかし自分の中で一番の驚きは彼女が既婚者であったと言われたとき、やめようと思わなかったことだ。
なぜならば、誰がなんと言おうとこれは不倫である。
確かに直接身体を触れ合わすだの、密会だのではないのだが。
彼は、極力彼女のその諸事情は考えないようにしようと決めた。
自分が考え、気を使うほど、彼女が苦しむことになるのではないかと。
であるならば、自分が思う、自分が出来る最大限で持って彼女を導いていきたい。
その感情はなんと言うのかはわからない。
ただの、欲望を満たす・・・というだけではないような気がしていた。

その感情の正体が知りたいと思っていた。

わけのわからない、自分の中にあらためて見つけ出した感情を。

それの名前はなんと言うかはわからないなりにも、彼は彼自身の感情の変化に戸惑いを隠せなかった。
その場限り、そう、この現実的な仮想空間の中で繰り広げられる、だけのはずのこと。
他の誰も知らない。
二人だけの時間、空間、秘め事。
自分の欲望と彼女の欲望がかちっと音を立ててはまった瞬間。
彼”夏彦”もそんな相手にこういう場所で出会うなどとは考えも及ばなかったのだ。
いけるところまで行ってみようか・・そんな気すらおこっていた。

二人の前に示された道にはどこからでも逃げられるが、どこへも逃げられない道。

降りてしまえば、そこには通いなれた平坦な道。
以前の・・自分に戻るだけなのだ。

だが、もはや二人は選んでしまった。
二人でこの戻れない険しい道を進むことを。

終わりを恐れて。
終わりを見ないで。

ただ・・二人だけがあるのだ。

ほかに何もいらない。
純粋な何か・・だったのだろうか・・?

ゆり>こんばんわ?夏彦さん。
夏彦>いらっしゃい、ゆり。

そう言葉を冷静に返しながら彼は思う。
自分が思うように彼女も思ってくれているのか?
彼女の思いは何処にあるのか?
自分にどれだけのことが出来ているのか・・・?

彼女の身体を弄び、彼女がそれに反応を過敏に返してくる、その感覚の中、彼女自身がまるで目の前にいるように感じられる。
その吐息、その熱、その彼女自身のリアル。
もっと知りたい。
もっと・・・感じたいのだ・・・。
少なくとも、今は、自分は、彼女との行く末など考えずに、快楽に溺れてみよう。
答えなんてあとでいい。

夏彦>ゆり・・・・・・・!!

自身の熱が全身を駆け巡っていく。
これは、背徳の快楽なのか、それとも純粋な快楽なのか・・・・。
それすらももう、考えることは無い。
彼自身の中に渦巻くそれは、おそらくは彼女と同じなのだから・・・・
そう、信じている・・・。
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