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夏彦>おはよう、ゆり。
ゆり>おはよう夏彦さん。
普通の挨拶。
でも、私は決めていたのだ。
ゆり>良く眠れましたか?
夏彦>ええ、少し前に起きたところですよ。ゆりは?
ゆり>まぁ・・・一応。
私は言葉を捜す。
どういったらいいのだろうか?
夏彦>・・どうしました?
ゆり>・・・・・・・
夏彦>何か私が気に障ることでもしましたか?
ゆり>いいえ・・・・・
そうじゃない、そうじゃないからこそ言葉を悩んだ。
でも、言わなくてはならないのだ。
ゆり>・・・・夏彦さん・・
夏彦>はい。
ゆり>私は貴方にまだ、言ってないことがあります。
ゆり>たぶんこれを言ったらふざけるなとなるんじゃないかな・・・
ゆり>でも真剣に対峙してくれている貴方に対して失礼だから・・・
もう、止めることなど出来やしない。
夏彦>なにを・・・隠しているのですか?言うことで楽になるなら言ってください。
ゆり>・・・私が貴方とこうして話すことは、
ゆり>私の知人が見たらきっと。
ゆり>不倫とののしられることでしょう・・
ゆり>たとえ、現実に会うことがないとしてもです。
ゆり>だから・・・これ以上続けては貴方にとってのリスクが発生します・・だから・・・
言ってしまった・・終わりだ・・・そう・・・
私は苦しかった、逃げたかったのだ。
これ以上彼に惹かれていく前に。
身体から心ごと持っていかれる前に。
自分の中に生まれるとは考えもつかなかった感情から私は逃げたかったのだ。
彼から言わせるという卑怯な方法で。
私は賭けたのだ。彼から”わかりました、もう逢わない方がいいでしょう”と言われるのを。
辛いのだ。私は彼を欲しいから私から言うことなど不可能なのだから。
だから、彼にその意志決定を委ねたふりをする。
しかし、彼からは意外な言葉が返ってきた。
夏彦>・・・・ゆり、、
夏彦>私は以前言いました、貴女と現実の彼との間に割ってはいることは無いと。
夏彦>ここでは私と貴女、二人だけの世界です。
ゆり>でも・・・!
夏彦>ここで、貴女が私に対して偽りがなければそれでいいのですよ・・・・
夏彦>私のことを思うからこそ、真実を告白されたわけでしょう?
ゆり>・・・・・そんな・・・
私は混乱した。
まさか、そんな答えが返ってくるとは考えても見なかったのだ。
夏彦>ゆり、貴女がもしこの関係を続けるのが嫌ならば、こなければいいだけの話です。
夏彦>でも、貴女は私に真実を告白した。私を・・思ってのことでしょう?
夏彦>止めたいというわけではなかった、だから私に判断を委ねた・・・・
そうだ・・・そうなのだ・・・
すべて見抜かれていたのだ、彼”夏彦”にとって私の浅はかな考えなど簡単に看破していたのだ。
私は、もう、逃げられない。
彼”夏彦”にすべて絡めとられ、それに相反し、胎内から疼きを覚えた。
もはやもう後ろには戻る道など無くなった。
ただ、彼の言葉に一喜一憂し、その甘美な指示に身体を支配されていくのだろう・・・
その事実は私に最上級の快楽を与えるだろう。
彼にこの世界で逢い、そしてその恐ろしいまでに的確な調教で、私のすべてが塗りかえられていく。
今までに味わったことのないほどの深い奈落の底へ。
ゆり>・・それで・・いいの?
夏彦>私は言いました、忘れましたか?
ゆり>いいえ・・・・
彼”夏彦”もおそらくは私を失うのを恐れている・・・・?そんな自惚れすら生まれそうなほど。
間違ってはいけない、少なくとも私は彼が必要だ。
それだけは見誤ってはいけない。
彼が終わりにしようとしたときには私はその言葉に異議申し立ては出来ない。
ならば・・それまでは・・・
堕ちてみよう、先が見えない、これからに。
彼の言葉に、身体が添って、快楽の海を溺れていくのを・・・。
私はそう思った瞬間、全身に破滅と引き換えのすさまじいまでの快楽を覚えた。
パートナーのことを完全に、考えてなどいなかった。
エゴイズム・・ただ、それだけ。
彼が欲しい・・・
その身に。
心から願った・・・。 |