realize
27th A future gate
夏彦>・・・では、ゆり・・・
ゆり>な・・なに・・?
夏彦>久しぶりに・・課題を出しましょうか・・・
ゆり>え・・・?

その日は、彼とたわいもないチャットをしていた。
そんな中でなにか、二人の間にかちりとスイッチが入る。

先日手に入れた、ローターによく似た物体。
手のひらにおさまる程度のマッサージ器。
それの効果は、彼によって身体に叩き込まれた。
初めて味わった、今までにない刺激に私の身体は跳ね上がり、彼の言葉に呼応したのだ。
全身を襲う痺れるような高揚感。
自身の言うことを聞かないほど濡れそぼり、ひくつくそこ。
しばらくは動けないほど。

夏彦>あれの・・・スイッチをオンにして、ショーツの中に入れて・・・
夏彦>帰宅・・・してもらいましょう・・・
ゆり>!!・・やだぁ!!!
ゆり>・・歩けない・・・・
夏彦>歩かなければ、帰宅できませんよ・・・・
ゆり>でも・・だって・・・・無理・・・
夏彦>今までで一番・・でしょうね・・・
夏彦>ゆり・・の帰宅時間には・・・私は家にいるでしょうし・・・
ゆり>・・・え・・?・・それって・・・・
夏彦>メールを送ってあげられますよ・・・・

言葉で抗いながら、私の身体はもう、疼いてしまっていた・・・
彼の言葉に、ここまで反応してしまう・・自分に驚きながらも、許容していた。

翌日、彼に指示されたとおりの格好で、仕事に向かう。
すでにそのときには身体の奥底に疼く何かを感じてしまっていたのだが。
それでも、仕事に集中することでそれを抑える。

帰宅時間が迫る、彼からのメールはまだ来ない。
少しだけほっとしながら、彼にこちらからメールを送った。
 ”しなくても・・・いいよね?”
と。

でも、そのメールをするという行為に私は。
身体をもはや、潤ませていることに気がついている。
心臓の鼓動が跳ね上がりながら、待っていることを知っている。
彼の返事を。

あと少し・・・と仕事を片付けている時に携帯が鳴った・・・・・
”間に合いましたね・・・?”
彼からのメールが飛んでくる。
”実行するのですよ・・・”
私の中で、どくんと音がする。
”そして・・・メールをしなさい・・・・・”

見えないのだから、しなければすむこと。
分かっているのだ。
だが、私は彼の指令に従ってしまう・・・彼の手の中で壊されたいから。
化粧室で帰宅間際、下着の中にそれを滑り込ませ、敏感な部分に添えた・・・・・・

”静かなトイレの中では、音は響いているのでしょうね・・・・”
そのとおり、誰かに聞かれるんではないかと心臓が跳ね上がる。
歩くたびに、刺激されるそこ。
必死で堪えるが、そのたび潤んでくるのが分かる。
熱く、疼き、私の頬が紅潮する。
冷たい風が当たる事でごまかせていたけど。

”ホームで電車を待ってるときに、人の視線を伺って御覧なさい・・・・
 気づかれてはいませんか・・・?”
そんなこと・・・・考えるだに狂おしいほど身体が高ぶる。

電車のゆれと、その振動に私の身体はそのままイってしまいそうなほど。
必死でこらえた、家まで。
彼の腕の中に倒れこんでしまえたら・・・・と思いすらした。
もし、横に彼がいたら、おそらくは立ってなどいられなかっただろう。

やっとの思いで家にたどり着く。
彼の最後の指示・・・
その状態の私を、撮ること・・・・
・・・それを終えた私を彼はチャットで待っていた。

夏彦>お帰り、ゆり。
ゆり>・・・ただいま夏彦さん・・・
夏彦>まだ・・・動いているのですか?
ゆり>・・いいえ・・・電池切れ・・した・・・みたいで・・・

夏彦>何を考えて電車に乗っていたのですか?
ゆり>怒らない・・?
ゆり>・・・そばに・・・いて欲しいって・・・それ・・・ばっかり・・・
ゆり> 考えてた・・・
夏彦>触っていて欲しかったのですね
夏彦>そばで・・。
ゆり>・・隠していて・・ほしかったんだもん・・・
夏彦>ゆりの身体を。

彼の腕の中に抱かれて、触れられたかった・・・。
熱くなった身体を。
彼だけしか知らない、こんな私の淫らな姿。

そして、彼に乞われるがまま、写真を送る。

夏彦>こんなに・・ヘアーまで・・濡れて・・そうとうな・・・・
ゆり>・・貴方のことを・・・思うと・・・
夏彦>息を吹きかけると・・・もっと・・感じてしまうのでしょう?・・・
夏彦>ふぅ・・っと・・・
ゆり>・・ぁぁ!!・・

ありえないはずの彼の吐息が私の全身を蕩けさせる。

私の身体はもう、彼にしか反応できないのだろう、今は。
リアルではない、彼だというのに。
望むものが互いに合致して、感じられる快感がここに、二人の手の中にある。

この世界は不思議な世界。
現実であって現実ではない世界。
それはよくわかっていた。

でも・・・

彼”夏彦”は確かにここに、私の中にある。
きっと彼の中にも、私はいると、感じている。

互いが互いを感じる。

逢うことがたとえなかったとしても。
逢ったとしても。

2人の間にこれから何が起こったとしても。

この積み重ねていく時間を無駄なものにはしたくないから。
別の道を進むかもしれない、重なる道を進むかもしれない。
そんな先のことはわからない。

わからないからこそ、探そうとする。
自分を、見つめて、自分を模索する。
そして、自分で決めること。

誰も自分の代わりに決めてくれたりはしないのだから。

見つけられる?
見つけてみせる。

私の未来への扉を。
私自身の力で。

そのとき彼が隣にいて欲しいと望み、いないことを願うー矛盾。
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