realize
22th The whereabouts of a thought
緩やかな午後、一人の休日を過ごすことに慣れている私。

一人で過ごす時間をもてあまし、そして・・・・・。
出逢ってしまった・・彼がいる。

それでももがき、苦しんで、パートナーのことだけを考えようとする自分もまたいる。

受け入れなくてはならない。
彼を拒絶することはしてはならない。

そう思いながら、触れられても感じることが出来なかった自分が、情けなかった。
感じなくてはならない・・・その感情が。
私を封じ込めている?

じゃぁ・・?
誰に触れられても?

そう思い、私は、彼”夏彦”を想う。
その瞬間、全身を走る、甘い快楽に私は身震いする。

眼を閉じ、ログを、思い浮かべる・・・・。
彼に言われるがまま、身体に刻んだ、ルージュの文字。
”・・・・・・夏彦さん・・・・私を見て・・・・じっと・・・・私を・・・・”
そのとき姿身に映し出された自分の姿が閉じた眼の裏に浮かぶ。
彼の言葉に誘導されて、動く自分の指が、まるで彼の指のようで。
全身にありえないはずの彼の手の動き、温かく、ぬめる舌の這う感触。
実際に逢ったことなどないのに。
触れ合ったことも、声すらも聞いたことがないのに。
その吐息すら耳元に聞こえてくる。

私はいつしか、身体を熱く、高ぶらせていく・・・
ニットの上から乳房に重なる自分の手。
そして、秘めたる部分を覆う下着が冷たくなっていくのを感じ。
指先は張り詰めた頂点に触れる。

片手は、スカートの中の湿った部分を布越しに触れる。

ビクンっと身体が弓なりにしなった。

一瞬眼を見ひらき、しかし私は、その指を止めることなど出来なかった。
下着越しに私の指先が敏感な芽の部分をやさしく撫で。
頂点に触れていたはずの手はいつしか乳房全体を揉みあげている。
湿った部分が、さらに広がっていく。

「・・・ぁぁ・・・・・」

思わず漏れてしまう自身の甘い声すらも自分を高ぶらせるだけ。
いいえ、違う。

(思わず声が漏れてしまうのですね・・・・・)

そんな彼の言葉が耳元で囁かれているような錯覚。

何故?

そんな疑問符すら投げかける間もなく、指が知らずに下着の隙間から滑り込む。
指先に感じられるその潤みの熱さに驚きながらも。
それに滑らせながら私の指が彼の指と重なったようにも感じられる。

「・・ふ・・・」

誰もいない午後の部屋。
PCの前で。
私は液晶越しに彼に見られているように感じながら。
静かなその空間に私の秘部から上がる水音と唇からもれる喘ぎだけが。
響く、部屋に、耳に。

手がいつの間にかニットの中へ入り、直接乳房を強く揉み、乳首を摘んでいる。
”こよりのようによじりあげて・・・・”
耳に響く水音は彼の舌が舐めあげているかのように。
”・・・耳・・・わた・・し・・の唾液・・・で・・・いっぱい・・・にして・・しまいま・・しょう・・”
撫で擦る潤みが彼の舌の動きのようで。
”・・・・を・・舌で・・・・なぞるように・・・・・”

そのすべてで彼を感じながら、私は私自身を愛撫する。
その手が、その指が、すべてが私ではなく彼のようで。

指先が私の胎内へ飲み込まれる。
きつく、追い出してしまいそうなほどそこは指を締め付けてくる。
それでも彼が欲しくて。
彼を感じたくて。
私はその指を動かしてしまう・・・・。

くちゅくちゅという水音が私の身体を痺れさせてくる。
もっと強くと。
もっと彼をと。
私の身体の熱がさらに上がる。

「ぁ・・・ぁあ・・んん・・」

唇を噛み締めながら声を出さないようにと堪えても湧き上がる快楽に流される。

中指が私の胎内で蠢き、
親指で芽の部分を押さえ、
そして、乳房を握りつぶすかのごとく。

絶頂だけを目指して、私は自分を追い立ててしまっている。

指を動かし、ある部分に触れると私の身体がしなる。
一気に絶頂へと駆け上ると、私の身体が一瞬張り詰める。
そしてその部分が激しく痙攣し、指が追い出される。
全身からぐったりと力が抜ける。
呼吸は荒く、肩が上下する。

「・・!・・な・・つひこ・・・さん・・・」

彼ともパートナーとも味わうものとはまた違う絶頂であったが、それでも・・・・
絶頂の瞬間、口をついて出た名前が・・・彼だった・・・。

私はその余韻に身をまかせた・・・・。

本当の意味で一人でしたことなどほとんどなかった。
興味本位で触れてみたことはあってもそれはそれでしかなかったから。
彼とのチャット、では確かに自分自身で触れる。
しかし互いを感じながらのそれは一人でするのとはまた違うから。
自分自身でそのような行為をすることなど罪悪感しか残らなかった。
なのに・・・

今の自分の中に残る快感の名残はなんなのか・・?
自分自身で驚きを隠しきれなかった。
こんな感覚は今まで知らなかった。
パートナーを思ってしようと思ったことはなかった、そう、パートナーとの歴史の方が長いはずなのに。
こんな風に感じることはなかった。

知ったのは、彼”夏彦”と味わう、刹那の快楽。
私が望む、それを与えてくれる彼を私の身体も、心も求めていること。

苦しみ、もがき、あがいて、パートナーを想ってみても、たどり着いたのは彼”夏彦”だったのだ。

彼が私を感じてくれているだけでうれしいと思っていた。
でも、きっと、もっと私の方が彼を感じられる。
そう、それは彼が私をきちんと見てくれているから。
私を、私の心ごとすべて、言葉で抱いてくれているから。
だから、私は、心の奥底に彼を置いてしまった・・・・・・・。

私はその波が去った後の身体を抱きしめる。
私は、彼を想うことは止めることが出来なくなってしまっていることを自分自身の中で認めた。

身体だけでいいならこんなに苦しい想いをせずにすんだ。
そう、遊びだと割り切れるなら。
たとえ彼がそうでも、私は・・・・・
そうじゃないと今はわかる、じゃなきゃ・・
こんなに心で求めたりしない・・・・・。
「遊びだし、その場限りだ」
と彼に言えるほど私は器用じゃない・・。

でも「逢わない」と、自分に嘘をついて、苦しいままでいるくらいなら。
もし、彼”夏彦”も私を少しでも欲しいと言ってくれるなら。
すべて壊れてもいいから、この想いのまま行動して、前を向いて進みたい・・・・
そこにあるのが茨の道でも。
それが私の選んだ道であるならば。

何度となく、彼を想い、彼を感じて、私は一人、パートナーのいない、彼を思う時間を過ごす・・・・・。
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