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「・・り・・?ゆり・・?」
「・・ん・・・?・・」
「大丈夫?」
「・・う・・ん・・?・・・ん?・・」
そっと差し出される冷たい水。
意識が緩やかに覚醒する。
じっと見つめる視線にふと照れ笑いをして見返す。
「どしたの?」
「ん?・・」
やわらかく髪を撫で、そっとその頬に触れる。
「・・ふ・・・」
「・・わ・・・い・・」
「なに?」
「ん?・・・・・ゆりは、俺の、だよ。」
「・・・・・・うん・・・」
「俺だけの・・・・だ。」
「うん・・・・いいの?私で。」
「ゆりが、いい。」
「うん・・・」
グラスをサイドテーブルの上に置くと、そのまま抱きすくめられる。
「いてくれる?」
「・・・・え?」
「いや・・・」
顔を見られないように腕の中にゆりを抱きすくめるとベッドに横たわる。
・・・・・この人は・・・・
ためらいながらも、認めた。
私を、必要として、くれている。
その感情は、まだあやふやなものかもしれないけれども。
私は、彼が必要?
自問自答する。
答えはずっと決まっていた。
そう、感情はゆっくりと彼に寄り添っていって、その事実を身体で確かめあった。
まだ、小さなものだけど、二人で作っていける何かがあると。
きっと何度も、いろんな事で壁にぶつかるかもしれないけれども。
そのたびに、互いを理解しようと、していけばいい。
そうして、二人で作り上げる、ものはきっと
以前のような砂上の楼閣ではなく、もっと−
少しのことでは壊れたりなんかしない、強い、なにか。
それが何かはまだ見えないけど、それでもいい。
小さな、小さな、希望の光。
私だけの気持ちでも、相手だけの気持ちでもない。
二人で創る、新しい形で。
ようやく、そこまでたどり着けた。
きっと、彼がいてくれて、そうして、今こうして彼がいるから−
「私・・・は、涼の・・・だよ?」
小さな声で、でもはっきりと彼に届くようにつぶやく。
「・・・・・・・・」
髪をやさしく撫で続ける。
「りょ・・う・・が必要と、してくれる間・・ずっと・・・涼だけの・・だよ・・・」
言葉が欲しいのなら、言葉を。
身体が欲しいのなら、身体を。
気持ちが欲しいのなら、気持ちを。
与えてくれる。
欲しいと想うこと、を。
言わなくても、わかってもらえるけど、言わなきゃ、信じてもらえないことだって、あるから。
「ゆり・・・・」
「涼、だけ・・だよ・・・私に触れるのは・・・?」
「・・俺・・だけ・・の・・・・ものだ。俺だけ感じて、ここにいればいい。」
秘密の呪文。
魔法の言葉。
二人だけの時間で見つけた真実。
ようやく見つけた、互いの安息の地。
身体だけでもいいと、思って触れ合った。
触れ合うたびに、心が近づいていくのが分かる。
その指先が、私を確かめるように。
その唇が、私を責め立てるけど。
触れるのは限りなくやさしく、私の全てを抱きしめるように。
同じ想いを抱いていると、今なら言える。
そうして、これから。
新しい、道を、二人で探す。
彼がいなければきっとこの気持ちを見つけることなど出来なかったから。
でも、彼とでは育てられなかったから。
頑張らない、でも、生きていく。
新たな鍵が今、二人の手に降りてきた。
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