|
彼の雄が私の口内にあった。
大きく猛ったそれを精一杯しゃぶる。
収まりきらないその隙間から唾液が零れ落ちるのすら厭わないほど、その感触を味わいつくす。
欲しいとねだったのは私。
「しゃぶりたいか?」
見下ろすその瞳の冷静さとは比べようもないほど熱いそれ。
冷静なわけではない。
彼もまた熱くなっているのだと教えてくれているのだ。
「・・・はい・・・」
下から彼を見つめたまま私は答える。
「何が欲しい?」
「・・りょ・・・涼の・・・が・・・」
「俺の何が欲しいか、ちゃんと言うんだ。」
「・・・・お・・○○・・・」
言い終わるか終わらないかに私の唇に熱いそれが突っ込まれる。
「ん・・ぐぅ・・・ん・・ん・・・」
喉の奥にまで届きそうなほどのそれ。
その行為ですら私を高ぶらせていることに今は気がついてきている。
そう−
私は、彼に調教されている。
彼は、私を調教している。
それを互いに望んでいる。
何故なのだろうか?
考えないまでも私にも、そして多分彼にもわかっている。
逢わなければきっと、こうなりはしなかっただろう。
でも逢ってしまったのだから。
行き着くところまで互いを求めているのだ。
それをなんと呼ぶのかは知っている。
認めるのはとても怖い。
でも認めているから二人でいる。
相手を想っているから。
そう単純で簡単な想いではない。
他の誰でもない、互いだからここまで来た。
そうしてこれからもきっとこれ以上を望む。
二人の間にタブーがないなら。
二人の間にだけの決まりごとがあるなら。
互いが互いを必要としているから。
そうして−
相手を自分が欲しいから。
欲しいと願って良いと教えてくれた人がいたから。
互いに繋がれたい、束縛されたい、お互いを自分だけのものに全てして欲しい。
そこになんの打算も邪心もないけれども。
だからこそ、互いの邪魔はしたくないのだ。
互いがあまりにも大事だから。
この関係性を壊すのはいやだから。
ずっとこのまま二人、過ごして生きて行きたいから。
快楽だけで繋がったわけじゃない。
快楽も感情も全て互いが欲しいと望むからだ。
他の誰でもない、相手だけが欲しい。
この感情はなんと呼ぶ?
ただ、好きなだけでは相手の全てを欲しがらない。
そして−
相手の全てを認めたうえで、受けとめて、差し出す。
恐ろしいほどぎりぎりのラインにある。
愛情だと。
互いに、刻み込まれていく、調教という名前で。
|