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夏彦の囁きとともに、私の身体が宙に浮かぶような感覚に襲われる。
「や・・・やぁぁ・・・!・・・」
「ここ・・に・・・いるよ・・・・・・」
手を捜し、必死で握り締め、自分を探す。
「や・・ぁぁ・・ぁ・・ぁ・・」
快楽の出口を何度となく求めた。
「ほら・・逝って・・・いいよ・・」
「だ・・めぇ・・・」
「ゆり・・・・・」
声と、指と、舌とに嬲られながら私は知らなかったものを知らされていく。
それは言葉ではなく。
感覚として。
そして、それをはじめて感情に教えてくれたのは、夏彦だった。
そして、それをはじめて身体に教えてくれたのは、涼だった。
私は、ずっと『夏彦』を求め続けていたのだ。
もらえなかったから。
ずっと、もらえるんじゃないかと信じて、信じて、欲しがって。
いつか。
チャットだけじゃない。
声だけじゃない。
リアルな彼から、本当の意味でもらえると。
求め、信じているから。
そして今それが叶っている。
知っているのに。
全身で欲しいと叫び、彼も応えてくれている。
感情が先走った。
ただのメル友だとわかっていても、ほかにすがる人がいなかった。
逃げ道なんて無かった。
本当は知っていた。
抱かれたい。
そうして−
私はそれほどまでにして。
パートナーにずっと感じていた違和感を、確かなものにしたかった。
離れる力が欲しかった。
言葉で後押しをして欲しいわけじゃない。
違う。
私の中にある、既成概念を壊したかった。
唯一つ。
初めての人だった、パートナーとの関係が不毛な、先の無いものだとわかっていながら。
それと離れる決断が出来なかった自分を。
「私が居なければ何も出来ない」
違うのだ。そういう人は。
「私が居なければ、またほかに同じような人を見つけ、何も出来ない自分でいる」だけなのだ。
そういうことを彼ー夏彦ーとの会話の中で見つけ出した自分で走り出したかった、ただ、そのために。
彼を利用したのだ。
そう、理解して。
−一人になった。
そして、今も一人でいる。
「ほら・・・ここ・・・こんなに・・・」
「ぁ・・ぁぁ!・・・も・・もう・・・」
「どうしたい?」
私の発する答えを知っていながらあえて、私からその言葉を言わせようとする。
−サディスト。
というには少し、異なっているけど。
「欲しい・・・のぉ・・・もぉ・・・もぉ・・・」
「なにが?」
「夏・・・彦・・さん・・が・・・欲しい・・・」
偽らざる真実だった。
もう、限界だった。
焦らされ、嬲られ、弄ばれ、全身がいやらしくくねり、彼が欲しいと蜜をあふれさす。
「どこに?」
「ん・・・ん・・・ゆりに・・・入れて・・・」
「もっと・・」
「ゆりの・・・・・中に・・・欲しい・・・」
「ここ?」
夏彦の指先が私の中で蠢いた。
「ぁぁ!もぉ・・・お願い・・・・・して・・・してぇ・・・!・・・」
恥ずかしい言葉だった。
でも、もう耐えられなかった。
この熱さを彼の熱さで貫いてー
もっとと。
指じゃない、その滾ったそれで私を埋め尽くして。
誰よりも、何よりも望んでいた。
彼に抱きしめられ、抱かれ、抱き合い、その身に彼自身を受け入れること。
それが−
私の望み。
ずっと、望んで、叶えられなかったそれを。
今、リアルに叶えたいの。
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