Realize 2
chapter 10 翻弄
夏彦の囁きとともに、私の身体が宙に浮かぶような感覚に襲われる。
「や・・・やぁぁ・・・!・・・」
「ここ・・に・・・いるよ・・・・・・」
手を捜し、必死で握り締め、自分を探す。
「や・・ぁぁ・・ぁ・・ぁ・・」
快楽の出口を何度となく求めた。
「ほら・・逝って・・・いいよ・・」
「だ・・めぇ・・・」
「ゆり・・・・・」

声と、指と、舌とに嬲られながら私は知らなかったものを知らされていく。
それは言葉ではなく。
感覚として。
そして、それをはじめて感情に教えてくれたのは、夏彦だった。
そして、それをはじめて身体に教えてくれたのは、涼だった。

私は、ずっと『夏彦』を求め続けていたのだ。

もらえなかったから。
ずっと、もらえるんじゃないかと信じて、信じて、欲しがって。
いつか。
チャットだけじゃない。
声だけじゃない。

リアルな彼から、本当の意味でもらえると。

求め、信じているから。

そして今それが叶っている。
知っているのに。

全身で欲しいと叫び、彼も応えてくれている。
感情が先走った。

ただのメル友だとわかっていても、ほかにすがる人がいなかった。

逃げ道なんて無かった。

本当は知っていた。
抱かれたい。
そうして−

私はそれほどまでにして。

パートナーにずっと感じていた違和感を、確かなものにしたかった。
離れる力が欲しかった。
言葉で後押しをして欲しいわけじゃない。

違う。

私の中にある、既成概念を壊したかった。

唯一つ。

初めての人だった、パートナーとの関係が不毛な、先の無いものだとわかっていながら。
それと離れる決断が出来なかった自分を。

「私が居なければ何も出来ない」

違うのだ。そういう人は。

「私が居なければ、またほかに同じような人を見つけ、何も出来ない自分でいる」だけなのだ。

そういうことを彼ー夏彦ーとの会話の中で見つけ出した自分で走り出したかった、ただ、そのために。
彼を利用したのだ。

そう、理解して。

−一人になった。
そして、今も一人でいる。

「ほら・・・ここ・・・こんなに・・・」
「ぁ・・ぁぁ!・・・も・・もう・・・」
「どうしたい?」
私の発する答えを知っていながらあえて、私からその言葉を言わせようとする。

−サディスト。
というには少し、異なっているけど。

「欲しい・・・のぉ・・・もぉ・・・もぉ・・・」
「なにが?」
「夏・・・彦・・さん・・が・・・欲しい・・・」

偽らざる真実だった。
もう、限界だった。

焦らされ、嬲られ、弄ばれ、全身がいやらしくくねり、彼が欲しいと蜜をあふれさす。
「どこに?」
「ん・・・ん・・・ゆりに・・・入れて・・・」
「もっと・・」
「ゆりの・・・・・中に・・・欲しい・・・」
「ここ?」
夏彦の指先が私の中で蠢いた。
「ぁぁ!もぉ・・・お願い・・・・・して・・・してぇ・・・!・・・」

恥ずかしい言葉だった。
でも、もう耐えられなかった。

この熱さを彼の熱さで貫いてー

もっとと。
指じゃない、その滾ったそれで私を埋め尽くして。
誰よりも、何よりも望んでいた。

彼に抱きしめられ、抱かれ、抱き合い、その身に彼自身を受け入れること。
それが−
私の望み。

ずっと、望んで、叶えられなかったそれを。
今、リアルに叶えたいの。

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