realize
18th Ruination
なんの変化もない日々、日常が過ぎていく・・・・
その中で私の中だけが変わっていくのに私は驚愕している。
パートナーを想う自分。
彼”夏彦”を想う自分。
どちらも間違うことなく私なのだ。
大きさとか重さとかではない。比較もない。ただ、穏やかにその感情を見つめる。
そして、自分の中が壊れていくのがわかる。
一気にではない。ただ、何かが確実に壊れていっていることだけがわかる。

そして、突然理解したのだ。
選ぶ、のではない、時間に私はきっと、裁かれるのだろう。
この、今の自分勝手な関係を、感情を。
そして、裁かれるのは、この勝手な私一人。
誰も、そう、パートナーも彼”夏彦”も何も悪くないのだから。
そのとき私は、本当の意味での自分を知ることになるのだろう・・と。
それまで、待ってみよう、このまま、この関係のまま。私は、どうなろうと、後悔だけはしないとわかる。
それが、きっと私の本当なのだから。

彼”夏彦”にも複雑な感情が、ある。
彼女の・・ゆりの何かを壊している、感覚は、いつしか感じ取っていた。
会話の中の言葉にしろ、メールにしろ、織り交ぜられている、その中に。
彼女の真実であることは間違いない、しかし・・・。
それに対する罪悪感も・・もちろん存在している。

彼女は、そう、いわゆるアバンチュールを求めたわけではないことも、
パートナーに不満があって、それで、出会いを求めていたわけじゃないことも、
そんなことが容易に出来るような人間ではないことも、
わかってきていた。
ただ、彼女は、最初から、真正面に、自分を見てくれた、少しだけ無防備な、素直な彼女自身で。
だからこそ一瞬で彼女のことが視えた、のだろう。

しかし、自分とめぐり合ったことで、彼女の中の何かが揺らぎ、そして、気がついてしまった。
なにより、彼女がどこか、変わってしまったことも感じた。
自分の存在で彼女の生活を壊そうなんて思っていない、そんなことを望んでもいない。
このままでいい、このまま、で・・・と思う反面、確かに彼女に逢ってみたいと思う自分がいた。

逢うことで彼女の環境を変えたいわけじゃない。

本来ならば、そう、たとえ彼女がそう想ってくれたとしても、返してはならなかったのかもしれない。
ここだけで。
仮想空間の、ある種の現実だけで。
互いを感じているだけにするべきだと、理性でわかっている。

彼女のために、と思うならば、二度と、そう、この空間ですら逢わなければいいだけ。
わかっていた、わかっているのだが、それをすれば自分が後悔に苛まれることも、またわかっているのだ。
そして、きっと彼女自身も、苦しむことになるだろうことも。

この出会った偶然を、つらいものになんてしたくない・・・・。
だからこそ、リアルに互いを、感じて、これからを見つめたいのだ。
そうすれば、きっと、もっと、互いをわかることが出来ると・・思うのだ。

彼女の感情も。
自分のよくわからない感情も。

単純に、好き・・だけでは多分、収まらないであろう、その感情。
自分は、彼女のすべてを請け負えるのか?少なくともこの空間では請け負うつもりも自信もある。
だが、リアルでは?それは、まだ、出せない、また出してはならない結論だ。

先のことを憂いても仕方がない、ただ、このとき、彼女と過ごす時間を、大切に見つめたい・・。
そこからきっと何か見えてくると感じている・・・。
罪悪感でも、後悔でもない。ただの自分自身の感情。
彼女を愛しいと感じている今は、確かな自分の真実だろう。

確証を欲しがる彼女に、自分がそれを与えることなんて出来るわけがない。
自分自身ですらわからないのだから。
言葉、だけの関係。だが、もっとおそらくは深い関係。が出来ていると思わざるを得ない。
なぜ・・と問われても答えようがないが。

答えは必ず見つかる、それが是でも否でも。

だとしたならば・・・自分の取る行動はたった一つ。
無理をせず、彼女と逢い、お互いを見つめること、ただ、それだけ。
彼女が望むものはなにか、そして自分の求めるものはなんなのか。
思い、悩むより、直接会話し、知りえる事実。

安定した、関係の中で見つめる時間を、互いのために、自分のために。

次に逢うのは、いつだろうか。
互いの関係にはエンドマークだけが今のところないだけ。まだ、そう始まったばかりの関係なのだから。
日常の中の、無理のない時間は、2人だけで過ごしたい。
邪魔はされたくない・・・。
言葉で重ねる身体に、嘘も偽りもないのだから。
ただ、互いの欲望の重なりだけが、一致している。
彼女の感情は、少しだけ重い、それでも、その重さを受け止めるのは、おそらくは今は自分なのだと感じている。
忙しさの隙間に送る自分のメール。彼女からのメールは届いているけれども。

‘毎日忙しいみたいですけど、無理しないでくださいね。 ゆり‘

”身体に気をつけて、風邪なんか引かないでください。 夏彦”

‘でも、やっぱり逢いたいです・・・ ゆり‘

私は少しだけ、ほんの少しだけわがままを言ってみる。
叶えたいと思っているわけでもないのだが、言ってみたい、甘えてみる。
そんな事すらも私はパートナーにそれほど言うことが出来ていなかった。
言えば、いやな顔をされるだけだったから。言葉を飲み込んで、いたのに。
何故、彼には率直に言ってしまえるのか?

とてもとても大事な、関係。
互いを気遣い、気遣われる、不思議な関係。

壊さないで、壊れないで。
・・・・・・壊してしまって・・・・・
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