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なんの変化もない日々、日常が過ぎていく・・・・
その中で私の中だけが変わっていくのに私は驚愕している。
パートナーを想う自分。
彼”夏彦”を想う自分。
どちらも間違うことなく私なのだ。
大きさとか重さとかではない。比較もない。ただ、穏やかにその感情を見つめる。
そして、自分の中が壊れていくのがわかる。
一気にではない。ただ、何かが確実に壊れていっていることだけがわかる。
そして、突然理解したのだ。
選ぶ、のではない、時間に私はきっと、裁かれるのだろう。
この、今の自分勝手な関係を、感情を。
そして、裁かれるのは、この勝手な私一人。
誰も、そう、パートナーも彼”夏彦”も何も悪くないのだから。
そのとき私は、本当の意味での自分を知ることになるのだろう・・と。
それまで、待ってみよう、このまま、この関係のまま。私は、どうなろうと、後悔だけはしないとわかる。
それが、きっと私の本当なのだから。
彼”夏彦”にも複雑な感情が、ある。
彼女の・・ゆりの何かを壊している、感覚は、いつしか感じ取っていた。
会話の中の言葉にしろ、メールにしろ、織り交ぜられている、その中に。
彼女の真実であることは間違いない、しかし・・・。
それに対する罪悪感も・・もちろん存在している。
彼女は、そう、いわゆるアバンチュールを求めたわけではないことも、
パートナーに不満があって、それで、出会いを求めていたわけじゃないことも、
そんなことが容易に出来るような人間ではないことも、
わかってきていた。
ただ、彼女は、最初から、真正面に、自分を見てくれた、少しだけ無防備な、素直な彼女自身で。
だからこそ一瞬で彼女のことが視えた、のだろう。
しかし、自分とめぐり合ったことで、彼女の中の何かが揺らぎ、そして、気がついてしまった。
なにより、彼女がどこか、変わってしまったことも感じた。
自分の存在で彼女の生活を壊そうなんて思っていない、そんなことを望んでもいない。
このままでいい、このまま、で・・・と思う反面、確かに彼女に逢ってみたいと思う自分がいた。
逢うことで彼女の環境を変えたいわけじゃない。
本来ならば、そう、たとえ彼女がそう想ってくれたとしても、返してはならなかったのかもしれない。
ここだけで。
仮想空間の、ある種の現実だけで。
互いを感じているだけにするべきだと、理性でわかっている。
彼女のために、と思うならば、二度と、そう、この空間ですら逢わなければいいだけ。
わかっていた、わかっているのだが、それをすれば自分が後悔に苛まれることも、またわかっているのだ。
そして、きっと彼女自身も、苦しむことになるだろうことも。
この出会った偶然を、つらいものになんてしたくない・・・・。
だからこそ、リアルに互いを、感じて、これからを見つめたいのだ。
そうすれば、きっと、もっと、互いをわかることが出来ると・・思うのだ。
彼女の感情も。
自分のよくわからない感情も。
単純に、好き・・だけでは多分、収まらないであろう、その感情。
自分は、彼女のすべてを請け負えるのか?少なくともこの空間では請け負うつもりも自信もある。
だが、リアルでは?それは、まだ、出せない、また出してはならない結論だ。
先のことを憂いても仕方がない、ただ、このとき、彼女と過ごす時間を、大切に見つめたい・・。
そこからきっと何か見えてくると感じている・・・。
罪悪感でも、後悔でもない。ただの自分自身の感情。
彼女を愛しいと感じている今は、確かな自分の真実だろう。
確証を欲しがる彼女に、自分がそれを与えることなんて出来るわけがない。
自分自身ですらわからないのだから。
言葉、だけの関係。だが、もっとおそらくは深い関係。が出来ていると思わざるを得ない。
なぜ・・と問われても答えようがないが。
答えは必ず見つかる、それが是でも否でも。
だとしたならば・・・自分の取る行動はたった一つ。
無理をせず、彼女と逢い、お互いを見つめること、ただ、それだけ。
彼女が望むものはなにか、そして自分の求めるものはなんなのか。
思い、悩むより、直接会話し、知りえる事実。
安定した、関係の中で見つめる時間を、互いのために、自分のために。
次に逢うのは、いつだろうか。
互いの関係にはエンドマークだけが今のところないだけ。まだ、そう始まったばかりの関係なのだから。
日常の中の、無理のない時間は、2人だけで過ごしたい。
邪魔はされたくない・・・。
言葉で重ねる身体に、嘘も偽りもないのだから。
ただ、互いの欲望の重なりだけが、一致している。
彼女の感情は、少しだけ重い、それでも、その重さを受け止めるのは、おそらくは今は自分なのだと感じている。
忙しさの隙間に送る自分のメール。彼女からのメールは届いているけれども。
‘毎日忙しいみたいですけど、無理しないでくださいね。 ゆり‘
”身体に気をつけて、風邪なんか引かないでください。 夏彦”
‘でも、やっぱり逢いたいです・・・ ゆり‘
私は少しだけ、ほんの少しだけわがままを言ってみる。
叶えたいと思っているわけでもないのだが、言ってみたい、甘えてみる。
そんな事すらも私はパートナーにそれほど言うことが出来ていなかった。
言えば、いやな顔をされるだけだったから。言葉を飲み込んで、いたのに。
何故、彼には率直に言ってしまえるのか?
とてもとても大事な、関係。
互いを気遣い、気遣われる、不思議な関係。
壊さないで、壊れないで。
・・・・・・壊してしまって・・・・・
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