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私は変わってしまった・・・・・
彼に見られるため、に撮ったポートレート。
何枚も、何枚も。
彼に望まれ、自分を見てもらうため。
その秘密が私の中に増えていく・・・・。
彼”夏彦”に送ると、すぐに消去してしまうのだが、彼のもとには残っていく。
そして、おそらくは彼はそれを削除することは無いのであろう・・・。
きちんと考えれば、それがどれほど恐ろしいことかなんてわかるはず。
彼がそれをどう使うかなんて・・・。
それほどまでに彼を信頼してよいのか?
しかし私は、自分の感情の変化に日々、戸惑いを隠せない。
彼”夏彦”は私の嫌がることはしない、だから、その写真を外部に漏らすことは無い。
その思いが私を彼へと走らせる。
私と彼の間に出来上がっている関係はそんなに脆いものではないはず。
私だけの思い込みかもしれないそれでも・・・・
この仮想空間での、二人だけのリアル。
相手を信頼できなくて、どうしてこのような快楽が得ることが出来よう?
そうして,私は大きな一つの事柄を実感した。
私がパートナーに感じた決定的な違和感。
私は、リアルにはパートナーしか知らない。そのことが招く事実。
パートナーのセックスが、私ではなく自分のために行われているそれであることに。
彼”夏彦”と行う言葉だけのそれとはまったく反対のものなのだ。
彼とのそれは、互いにどうしたら快楽を得ることができるのか、そして・・
私をどう喜ばせられるかが、基本だ。
このたった一つ、それでいて、最大の違和感。
知らなければそれで済んだ、そのセックスに、私は、身体を、心を奪われた。
私は・・・・
そう、私は・・・
パートナーとのそれが少しばかり苦痛になりつつあるのだ。
私の感情など、二の次に奪われるセックス。
彼がしたいときに、する。
私の身体を、自分の所有物のように扱う。
その、ねじ伏せるようなそれに私は快楽が少なくなっている・・・。
身体ごと、心が動く感覚は私の背筋を凍らせる。
それでも私は彼”夏彦”に逢うことを、そして彼の調教に囚われていくことを止められない。
それが二人だけの現実ではない現実であると知っていても。
リアルでそれが得られるかどうかなんて判らないのに・・・・・。
揺れて、揺れて,彼に飛び込んでしまいたくなる衝動に駆られ。
その衝動を自分の中で、処理し、ため息をつく。
もっと・・・恋を知っておけばよかった・・・
もっと・・・愛することを知っておけばよかった・
そうすれば、こんな感情など湧き上がらずに済んだのかも知れない。
すべてが仮定だが、事実だろう・・・。
こんな勝手な感情で、パートナーも、彼”夏彦”を傷つけることなど無かっただろう。
私だけが壊れるだけではすまない。
もはや、こんな自分が一番、苦しい。
このまま、生活を続けること、私を騙して、続けることは・・・できる。
感情など、ふたをしてしまえば。
私さえ見なかったことにすれば。
逢うのをやめてしまえば、楽になれるのだ。
そんなことは百も承知。
きっと彼は追いかけない。私を見限るだけ。
でも、その前に。
そう、その前に。
一度でいい。
彼にリアルで抱かれ、そして自分を見つめたい。
そのためのリスクは、すべて、私だけが負うもの。
この感情は・・・なんなのか・・?
そして彼は私を、どうしたいのか・・・?
このままの関係を望むのか?
私のすべてを欲してくれるのか・・・?
それとも、二度と二人の心は繋がらないか?
どのような答えが出されようともいい・・・・
ゆり>ねぇ・・・?
夏彦>はい
ゆり>私が・・いつか一人旅をすると言ったら・・・どうする・・?
夏彦>それは・・私と二人旅がしたいということですね・・ゆり
卑怯な私はそれすらも彼に言わせてしまった。
望んだのは私。
そして、
壊れることを選んだのも私。
それがいつのことになるかは知らない。
ただ、私は、彼に、リアルで抱かれ、その快楽をこの身に感じたい。
彼自身を・・・欲しい・・・
でも・・・それを望むことは、破滅につながる。
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