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私はその、二人だけの世界に閉じ込められてしまった・・・。
いや・・自らがすすんでその中に閉じ込められることを望んだのだろう・・・。
透明な、彼の作り出す、言葉で、言霊で私を閉じ込めてしまう、檻。
彼とともに、二人で望んだ。
彼が・・私を・・・・?
私が・・・彼を・・?
逃げることなど思いもよらない、その中で。
私は彼に覗られることに快楽を覚えてくる。
誰にも、そう、リアルなパートナーですら見ることのない私を。
彼の行動は予測が出来ない。
夏彦>デジカメはもっているのですか?
ゆり>ええ・・一応は・・
夏彦>では・・・それで・・・
夏彦>私を挑発するような写真を・・
夏彦>セルフポートレートを撮ってごらんなさい・・
ゆり>ええ?
私は狼狽した。
写真・・と名がつくものが死ぬほど苦手なのだ。
証明写真ですら、極力ならば撮りたくないほど。
必要以上の写真に自身を残すことを嫌った。
ゆり>そんなぁ・・無理だよ・・それに・・
私は必死で言い訳を考える。
ゆり>それに・・私の持っているの、タイマーなんて・・ないし・・それに・・
その言い訳でなんとかなると考える。
夏彦>いいえ・・必ずありますよ・・・
夏彦>ないならば・・出来る範囲内で・・出来うる限りに・・
ゆり>ええ〜〜・・・・
なにが何でも、させる。
そう、彼は一度口にしたことは必ず、遂行させる。
そして、それは翻ることなどない。
どんなことが、あってもだ・・・
なぜならば彼は私の性格を読んで、その行動を持ってくる。
私が絶対出来ないと考えることは言ってこないのだ、そして、結局は私が負けてしまう。
ゆり>・・わかった・・・・
そう、打ち込んだ瞬間に、私の背筋にぞくりと走るなにか。
否定が・・出来ない・・・。
彼に私を視られること、それから跳ね返る快楽の深さを私は知ってしまったのだから・・。
見て欲しい、見られたい。
恥ずかしさの裏側にある、私の秘めたる業。
彼だけが、見て、それを彼だけのものにする。
慣れない操作で出来る限りで撮影をするものの、撮れるものなんて、知れている。
それでも彼の指令に逆らえない自分が確かにいるのだ。
パートナーの前ですら、したことがない、その淫らな姿をメモリーに納めて、そして・・・・彼を待ってしまう。
撮っておきながら、なんとかごまかせないだろうか?
そんな愚かな考えとともに。
夏彦>では・・ゆり・・・
ゆり>え・・?
夏彦>今日の・・課題を・・見せてもらいましょう・・・・
ゆり>・・・え・・・えと・・・・
躊躇いながらも、私の身体に甘い疼きを感じる。
ゆり>でも・・その・・・
夏彦>誤魔化しても・・だめです・・・
ゆり>・・?・・
夏彦>・・見てもらいたい・・でしょう・・・?・・
彼は、私のことなどすべてお見通しなのだ・・
私はそれでも、ほんの少しの抵抗を示しながら、彼に添付ファイルをつけてメールを送った・・・・・。
夏彦>ゆり・・・きれいですよ・・・
パートナーからも言われたことがない言葉に心が揺れる。
ゆり>綺麗・・?私が・・?
リップサービスとしても、うれしいのは確かなのだ・・・
夏彦>ええ・・・
夏彦>さぁ・・次のを・・見せてもらいましょう・・
彼の言葉に、操られながら、写真を送ってしまう・・彼に視られている、私を・・・私自身を。
その感覚が私をたまらなくさせていた。
リアルに視られているそれは、たとえようもないほど。
その、私が見せる姿は、きっとパートナーですら見ることはないだろう・・姿に。
どのように彼”夏彦”に私を見てもらえるのか?
彼を失望させたりしないだろうか・・・?
私は自分自身のすべてに関して、自信が・・ない。
人より目立つことを極端に嫌った。
私は没個性を願いながら、今まで生きてきた。
私は私自身を見せるなど・・・・できない。
そんなにも自分に自信が・・・・ないのだ・・・・・。
そんな私に挑発的なポートレートなど・・・。
思いながらも、彼の調教に反論することなどできない私だったのだ。
夏彦>私たちの間に・・・
夏彦>お世辞は不要でしょう。
ゆり>・・・・・・・・
私は彼に見られ、そして・・
すべてが彼の色に、染められていくのだ・・・・。
その、見えない、眼に。
その、見えない、腕に・・・抱かれて。
私の心の衣服を脱がせたのは、彼”夏彦”だった・・・。
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