pulsation 6

ー忘れないで、忘れてー
最後の時、そう言った彼女の言葉の意味を考えていた。

「もう、貴方と会えません。」
「どうして?」
「私は結婚するからです。」
「誰と。」
「貴方の知らない人とです。」
「・・・・・・・逃げよう。一緒に。」
「・・・・・・・・いいえ。」
「働くから。苦労かけるかもしれないけど・・・」
「行きません。」
「いやだ。」
「さようなら。」
「なんでじゃぁ泣いてるんだよ。」
「貴方を愛しているからです。」
「だから!」
「でも、私は結婚します。」
「俺も・・・俺も愛している・・・」
「私を・・・・私を忘れないで・・・でも忘れてください。」
「え?」
「貴方を・・・誰よりも愛している・・だから忘れないで・・・そして忘れてください。」
「意味わかんないよ!!!」
「もう、二度とお会いしません。」
「どうして・・・・俺は・・」
「私が、愛しているのは、貴之・・貴方だけです・・・」

寒風吹きすさぶ、冬だった。
海を見たいと彼女が言ったから。
海岸で言われた、その言葉。

いつかともに暮らすことを願い、二人、笑いあっていた。
その未来は揺るがないものだと二人とも信じていた。
急がなくてもいい、いつかくる未来だとー
それが根底から突き崩されるその言葉。

今でも、忘れられない、誰よりも愛している、彼女のことを。
たとえ、その命がここに無くても。

「忘れられるわけ・・ないんだよ・・・・・俺は・・・」
彼女の事情を知ったのは新聞だったー


ー忘れないで、忘れてー
誰にも触れられないほど深く、そして今も熱く、胸の中にいる彼女、でも。
鳴らない携帯は、とても切なく、貴之に響いた。


「中務さん。」
「はい?」
梢が退社支度をしていると同僚が声をかける。
「今日時間ある?飲み会なんだけど行かない?」
「ん〜・・・ごめんなさい、今日は早く帰らなくてはいけないの。」
「そう・・ですか。」
「ごめんね、また今度。」
梢はそう言って、会社を後にする。
こういう、飲み会は苦手だ。
当たりさわりの無い返事で早急に会社を後にする。

「今日の散歩道は・・・・ん〜・・・」
何を買うわけでもなくウィンドーショッピング。
かわいい小物を見たり、季節の花を眺めたり、カフェを冷やかしたり。
いつしか、貴之を忘れていくためにー

あのぬくもりも。
あの声も。
すべても。

ちゃんと受け止めたから。
いつしか、彼の表情が穏やかになっていたことに気がついたから。
そばにいることができたから。

私は何もできなかったけど。
そばにいることしか、できなかったけど。

彼に私は必要が無い。
私には彼が必要だけど、でも、彼に必要とされないならばいい。
そばにいられた。

それが私には、嬉しかったから。

忘れない。
きっと忘れることなんかできない。

でも、いつか。
遠くで。
私も、幸せになるから。

貴方がいたから。
貴方が、私と。
あの時は共にいることを選んでくれていたこと。

それだけで、十分に幸せだから。


忘れない、でも、忘れていくから。
後悔しないために。

誰のためでもない、私のためにー

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