「今日の夕食はなににしようかなぁ・・・・」
一人ごとを言いながら家の近くのスーパーで買い物籠片手に食材を物色する。
彩りのよい野菜やおいしそうな魚。
「ん・・・と・・・」
あちらこちらと悩みながら歩く。
「できたら、梢の手料理が食べたいのですが?」
背後から言葉が飛んでくる。
「え?」
いきなりの声に思わず振り向き息を呑む。
「久しぶり。」
「・・・・なぁに?いきなりどうしたの?」
内心の動揺を隠しながら梢は笑顔を作る。
「うん。」
「よくここがわかったね?」
「梢のことだから。」
そう一言言って、買い物籠を貴之は取り上げる。
「え、いいよ。自分で持つから。」
「俺が持ちたいんだよ。さて、何を作ってもらうかな。」
「・・・え〜と。何が食べたいの?」
「そうだなぁ・・・イタリアンかな。」
「了解、じゃトマトと・・・」
まるで何もなかったかのように会話を続ける。
前に逢ったときから1年近く時間がたってもいたというのに。
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