pulsation 4
そばにいるだけで幸せだった。
荒れる彼を見ていたくなかった。
誰も助けられないことを知っていたけど、それでもなにかしたかった。

誰でもいいから
彼を助けて。

思い上がりでもいい。

身体だけでも、慰めになるのならば。

だから、私は、彼を「ホシイ」そういった。
彼は、それに「俺も」とそういった。

だから。

『恋人』ではない。

互いに、そう、理解しているはず。
それでも、二人、抱き合って眠るその時間には二人だけ知っている音がある。

「さて・・・っと。」
「明日早いから、今日は帰るね。」
「ん?」
小さなビストロでの夕食も終わりに差し掛かったころ梢はそうきりだす。
少しいぶかしげな貴之ににっこり微笑んだ。

「うん、明日は友人の結婚式なんだ。」
「そう。」
「だから、今日は早めに帰って休むよ。朝から美容院だしね。」
「起こしてやろうか?隣で。」
笑いながら貴之が茶化す。
「いいよ。大丈夫。とりあえ〜ず、新郎の友人が楽しみだなっと。」
「・・・・・どこでやるんだ?」
「駅前の○○ホテルだよ〜〜料理おいしいって評判なの。嬉しいよね〜。」
「何時?」
「ん?お昼からだね〜後は夕方二次会。」
「そうか・・・・」
支払いをするとゆっくりと店を出る。
「じゃ、またね。」
くるりと向きをかえて手を振りながら梢が歩き出す。
「ああ。」
声が聞こえる。じっとその後ろ姿を貴之が見つめていることは視線でわかった。
彼の視線ならどんなに遠くても感じられる。
なぜか問いかけたかった、出来なかったけど。

チクンと痛みが走る胸は見なかったふりをする。

知らない。
そんなもの、無かったのよー

翌日は晴天だった。
美しい友人のその姿を見ながら、梢は一抹の寂しさを感じずにはいられなかった。

ーワタシニハエラレナイモノー

今のままなら、決して。

いつからか、それは自身の中の歪みになっていたことには気がついてもいたけれども。
貴之を想うこと。

でも望んではいけないこととー。


二次会に出席して、引き出物の紙袋を持って駅まで友人たちと笑いながら歩く。
「恵美子、新婚旅行明日から行くんだって。」
「どこか聞いた?」
「うん、ヨーロッパらしいよ。」
「へぇ〜いいなぁ・・」
「私ならニューカレドニアとか行きたいなぁ!」
「天国に一番近い島かよ!」
「由香里はどこ行ったんだっけ?」
「私のときは近場でハワイだよ〜〜。」
「いいなぁ・・・ハネムーンかぁ・・」
「おお、連れて行ってやろうか?」
男友達がからかい半分に言う。
「や〜だ〜よ〜、既婚者になんか。奥さんと行って来い。」
「うん、今度の夏に行くんだよ〜。」
「なんだよ〜それ〜w」
気安い仲間とのたわいない戯言。
幸せが移ってくる様な会話。

「じゃ、私こっちだから〜。」
「うん、じゃ〜ね〜」
三々五々帰宅の途についていく。

「ふぅ・・・」
お酒と楽しさゆえの興奮で頬が少し赤く染まる。
「さて・・と、電車は何時かなぁ・・・」
時刻表の方へと歩いていく。

独り言が増えた・・・と自分でも思っている。
悲しいな・・とも。

それでも、その感情を振り払うかのように目を時刻表に向けた。
少し待てば電車があることを知り、ゆっくりとホームへと進んでいく。

「・・・ふぅ・・・」

幾度目かのため息。
「ため息をつくたびに幸せが逃げていくってどこで聞いたんだっけなぁ・・・」
小さく呟きながら身体を反らせる。


時計代わりの携帯を取り出してみるとメールが入っていた。
なんてこと無いたわいの無い内容のメール。
貴之からだった。

いつもなら返事を返す。
でもー今日は、今日だけは返事が出来ない。

幸せになりたいと、叶うはずも無い願いを形にした友を見て。
自らを省みるー

滑り込んでくる電車の所為にしてそのまま画面を閉じたー

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