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否―
私の中で答えは出ていたように思う。
だが、行動などできようが無かった。
まだ怖い。
まだ。
彼に踏み入ってはいけない領域もまたわかっていたから。
互いに今の距離にそれなりに満足、していたのだ。
少なくとも私はそう感じていた。
彼の気持ちは考えないようにしていた。
どういう気持ちで私に接してくるのか。
考えて、思いつめて。
万が一聞いてしまった時の拒絶が怖かったから−
だから、思う。
このままでいいから。
このまま、穏やかな距離で。
逃げだとも知っていたけど。
彼を失いたくはないから。
そうやって二人ここまでやってきたのだ。
「さて・・と。今日はどこ行こうか?」
「そうだなぁ・・・・・俺は服見たいんだよな・・」
「じゃ、あのあたりぶらっと眺めてみる?」
「いいな、それ。梢は?」
「・・・その後、フォーマルちょっと見てもいい?」
「なんかあるのか?」
「ちょっとね。」
「そっか。」
二人連れ添って繁華街へと消えていく。
その後姿はどこからどうみても恋人同士にしか見えないけれども。
「ったく、選ぶのにどんだけ時間かかるんだよ。」
笑いを含んだような声でとがめることを言う。
「いいじゃない、きれいにしていかないとね〜まだまだこれからだし。」
本気じゃないふくれ方をして言い返す。
そんなたわいもない会話をしながら夕食を楽しむ。
楽しく、じゃれあうような。
でも−
恋人ではないから。
「・・・・今日はどうするの?」
「どうするって?」
「だから・・・・」
「なに?」
わかっていてもはぐらかす。
繰り返されるたび、気持ちの奥底で警告が鳴っていた。
ーいつかは終わる。
終わりがー来る。
そう、知っていながら、続ける、関係。
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