pulsation 2
始まりは偶然という名前で。
それでも-

今なら判る。

それは偶然なんかじゃなかったこと。

「こんにちは。」
「こんにちは、久しぶり。」
「そうだね、前に逢ったのはいつだったかな?」
「ずいぶん前だよ。」
「お互いに忙しかったしね。」

私、梢は対峙した彼―貴之―を見つめた。
曖昧な、関係の間柄。
友だちというには、近すぎて、恋人と言うにはためらう関係。
一線を越えても、まだはっきりと答えは出せなかった。
否―
私の中で答えは出ていたように思う。
だが、行動などできようが無かった。
まだ怖い。

まだ。

彼に踏み入ってはいけない領域もまたわかっていたから。

互いに今の距離にそれなりに満足、していたのだ。
少なくとも私はそう感じていた。
彼の気持ちは考えないようにしていた。

どういう気持ちで私に接してくるのか。
考えて、思いつめて。

万が一聞いてしまった時の拒絶が怖かったから−

だから、思う。
このままでいいから。
このまま、穏やかな距離で。

逃げだとも知っていたけど。


彼を失いたくはないから。
そうやって二人ここまでやってきたのだ。

「さて・・と。今日はどこ行こうか?」
「そうだなぁ・・・・・俺は服見たいんだよな・・」
「じゃ、あのあたりぶらっと眺めてみる?」
「いいな、それ。梢は?」
「・・・その後、フォーマルちょっと見てもいい?」
「なんかあるのか?」
「ちょっとね。」
「そっか。」
二人連れ添って繁華街へと消えていく。
その後姿はどこからどうみても恋人同士にしか見えないけれども。


「ったく、選ぶのにどんだけ時間かかるんだよ。」
笑いを含んだような声でとがめることを言う。
「いいじゃない、きれいにしていかないとね〜まだまだこれからだし。」
本気じゃないふくれ方をして言い返す。
そんなたわいもない会話をしながら夕食を楽しむ。
楽しく、じゃれあうような。
でも−

恋人ではないから。


「・・・・今日はどうするの?」
「どうするって?」
「だから・・・・」
「なに?」

わかっていてもはぐらかす。

繰り返されるたび、気持ちの奥底で警告が鳴っていた。

ーいつかは終わる。
終わりがー来る。

そう、知っていながら、続ける、関係。

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