君は野に咲く華のようで 7
「怜!!」
ペールグリーンの傘をさした澪が驚いたようにいつのまにか近くに立ちすくんでいた。
じっと、その瞳を怜は見つめた。
深い悲しみの中で。
「いつから・・?」
差し出した傘の下で、ハンカチで雨をぬぐう。
「澪・・・・・!」
そのまま怜は澪を抱きしめた。
澪は身じろぎできず、ただ、怜の冷たい身体を受け止めていた。

どれだけの時間そうしていただろう。

「怜・・・・服を乾かさないと・・・」
ただ、黙って苦しげに澪を見つめる怜、その視線があまりにも切なくて澪は目をそらす。
「とりあえず、うちに来て。・・ね?」
なすがままに澪に手を引かれていく。
程なくして澪の部屋に着く。怜にタオルをかけ、レンジでミルクを温めると、澪はバスルームへと急ぐ。
「タオル・・と・・え・・と・・・」
自分の大き目のトレーナーと、ジャージくらいしかないもののそれをバスルームにおいていく。
部屋に戻ると、所在なさげに怜がタオルで頭を拭きながら立っていた。
チンッとレンジが音を立てる。
澪はカップを持つと怜のところへ近づいていった。
「はい・・・」
「・・・・・」
差し出したカップごと澪を手を包む。
「怜・・・・・・」
そっと瞳を上げると、そのまま唇を奪われた。
掴まれた手に力がこもる。


切ない・・・・

苦しい・・・・

欲しい・・・

欲しくない・・・

嫌われたくない・・・

知られたくない・・・・


醜い・・・・欲望。


貴方が
貴女が

欲しい・・・。

たとえ、嫌われても。


テーブルにカップが置かれる小さな音。
2人その音に導かれるように、ベッドへと倒れこむ。
澪が怜の濡れた服を剥ぎ取る。
怜が澪の素肌を晒していく。
お互い何も身につけていない状態で。
その手を。
冷え切った手を温めあうように絡めた。

言葉は無かった。
言葉は要らなかった。

2人だけがあればよかった。


最初から本当はそうだった・・・・・


ぽとぽとと、澪の頬に雫が落ちてくる。
「怜・・・?」
「澪・・・」

・・僕を許して・・・・・
・・・・愚かな僕を・・どうか・・・・・

怜の手が澪の全身を愛撫する。
時にやさしく。
時に激しく・・そして。


時に冷たく。


そう、あのときのように。

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