君は野に咲く華のようで 4
「おはよう、澪。どうしたの?調子悪いの?」
「ちょっとね・・・」
「じゃ、俺あっちだから。」
「うん、怜ありがと。」
片手をあげて、歩いていく怜を見送る。
・・・いつもの風景、いつもの時間・・・私だけが変わってしまった・・・
「・・ごめん・・やっぱり・・調子悪いから・・」
「顔色・・・真っ青だよ・・大丈夫?怜くん呼ぼうか?」
「ううん、平気。ごめん、帰るね、」
澪は足早に学校を出て行く、遠くから見つめる視線に気がつかずに。

・・・好きだよ・・・・
そう言葉にしてしまえばいいだけ。
そんなことは分かりきっていた。
でも、出来なかった。
そんな言葉だけじゃ足りない。

すべてが欲しい。
すべてが。

その身も。
その心も。

すべて、すべて、自分だけのものに。

ほかの誰も見ないでー。

暗闇の中、全身びっしょりになりながら、目が覚める。
「はぁ・・・」
闇の中で自分を見つめる視線は、
責めるようで、
哀しいようで、
愛おしいようで。
「・・・澪・・・・」
月だけが、真実を知っていた。

・・・・具合・・・悪いなぁ・・
吐き気も少ししていた。
・・・どうして・・・
眠りたいのに眠れない、闇の中に自分が堕ちていくような気がして。
・・どうして・・・私が・・・あんな目に・・・・
あわなくてはならなかったのか?
自分が悪いのか?
それとも・・・?
幾度となく繰り返された問いかけ。
答えなど出ない。
「怜・・・・・」

そばにいて、
抱きしめて、
私を、

怜に抱きしめてほしい。

澪はベッドの中、両腕で自身を強く抱きしめた。
・・・どうして・・・・

「おはよう澪。」
「怜、おはよう。」
「もう、平気か?」
「うん、久しぶりに寝込んでしまったって感じだね。」
少しだけ痩せたように見える。
「じゃ、今夜は快気祝いでもしようか?バイト先に来いよ、夕食くらいおごるよ。」
「え・・でも・・・」
「な?」
優しく微笑む怜にそれ以上抵抗できなかった。
「・・・うん・・・」
「じゃ、夜待っているから。」
「分かった・・」
怜は急ぎ足で講義のため教室へと向かっていった。

夕方、まだほの明るい時間に怜のバイト先へ足を向けた。
「いらっしゃ・・・早いな。」
「うん・・・」
「あの席でいいか?」
怜が指し示したのは、窓際のひときわ明るい席。
「ええ。」
「少し待ってろよ、準備してくる。」
奥に引っ込む怜を見送りながら、澪は席に着く。
他のウェイターがメニューとミネラルウォーターのボトルを持ってくる。
「あいつ、もうすぐ来ますから。」
「はい。」
そういった少しあと、着替えた怜がシャンパンのハーフボトルを抱えて出てくる。
「ほら、治ったお祝い。」
「ありがと。」
手際よくあけるとよく冷えたグラスに注ぐ。
きれいなロゼカラーのシャンパン。
「乾杯。」
かちんと小さく音がなる。
そして、2人は簡単に夕食をしながら、他愛の無い話に盛り上がる。
そんな中でも微妙に澪は怜に触れないように動いている。
「おなかいっぱい〜。」
「そうか?よかった。」
にこりとした怜のその瞳に一瞬光が走る。
「え・・と・・そろそろ帰るわ、あんまり遅くなりたくないし。」
「送ろうか?」
「え・・いいよ。まだバイトでしょ?」
「あのな・・酒飲んでてバイトなんかできねぇよ。」
「あ・・・そっか。」
そう言うと怜はレシートを持ってレジに向かう。
「じゃ、宜しく。」
「ああ、わかってるって。」
ドアを開けて澪を待つ怜。外はすっかり日が暮れていた。
喧騒の中、2人ゆっくりと歩き出す。
「今日は、ありがと。」
「いや・・・」
怜はそっけなく、返事を返す。
「車は無いぜ。」
「わかってる。」
「無理するなよ、身体。また倒れられたら大変だ。」
「うん・・久しぶりに寝込んだからまだ身体が本調子じゃないわ。」
本当は違った。
あの日一日中吐気が止まらなくて、どうにもならなかったのだ。
そしてようやくそれが収まったばかりだった。
「もう、熱とかはないのか?」
そっと怜の手が澪の額に触れる。一瞬身体をこわばらせる。
「だ・・大丈夫・・だから・・・」
「どうした?」
瞳を覗き込まれると、澪は一瞬気が遠くなりそうになる。
そうして、いつしか差し掛かるあの道。
「れ・・・怜?」
「なんだ?」
「あっちから・・帰らない?」
「こっちのほうが駅近いぜ。」
「うん・・でも・・・・」
あのときの恐怖がよみがえる、澪は少し強引に、怜の腕をとって歩き出す。
「わ・・わかったよ・・」
仕方なさそうな表情をしながら、怜は連れられていった。

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