「そりゃそうだよ、茶番じゃないか。」
「え?」
香子が振り返るとそこに武史が立っていた。呆然として立ちすくむ香子に歩み寄って缶ビールを取り上げると残りを飲み干し、缶をテーブルに置いた。
「しないってわかってて言ったろ!あのせりふ。俺はそんなことしないって。だから服着たままだ。そんなのは欺瞞だよ。」
そういうとベッドに香子を押し倒した。
「やめて、村木君!」
無言で香子の服を剥ぎ取っていく。あっという間に全裸にすると片手で香子を拘束しながら自身も服を脱いだ。
「最初で・・・最後・・・抱かれたいんだろう?」
興奮しているのか荒い息で香子を押さえつける。
・・・・否定など出来ない・・・・事実だから・・・・
形ばかりの抵抗をしていた香子の手から力が抜ける。武史のやわらかい唇が香子のまぶたに触れる、ほほへそして唇へ。奪うように守るように甘いキスを続ける。
「・・ん・・ふぅ・・・ん・・・・んん・・・・」
香子の唇の端から吐息が漏れる。それすら許さないように唇をふさぐ。武史の両手は適度なふくらみを下から上へ刷り上げるように揉みあげる。苦しそうに眉根を寄せる香子の唇を解放すると武史はそのまま頂点のしこった部分を口に含んだ。
「んん!ああ・・・ん・・・・・」
舌先で転がし、つぶすようにひねり、甘噛みすると香子の身体は快楽で打ち震える。
「あとは残さない・・・・・よ。」
武史は言いながら緩急をつけて乳房を愛撫しつづける。その巧みさに喘ぎ、何かにすがるように指先が空を切る。
「ああ・・はぁ・・・あんん・・・くぅ・・・んん・・・・」
武史の舌先が頂点から滑り降りるように鎖骨へと流れる。そのまま首筋へとラインをたどると香子の全身に電流が走る。
「ああ!!・・・やぁ!!んんん・・・い・・・あ・・・・」
香子の弱いところを見つけるとそこを執拗に舐る。上下に刷毛で撫でるように舌先を動かすと香子の恥ずかしい部分から蜜が溢れ出し、日の光に煌く。
・・・・恥ずかしい・・
そのことを自覚しながら、武史の愛撫を甘受し快感をむさぼる自分を止められない。武史もまたこれほどまでに感度がいいとは思っていなかったためか徐々に愛撫が激しさを増していった。
「・・・・彼に抱かれても・・・こんなになるの・・?」
「・・いや・・・聞かないで・・・・」
・・・・思い出させないで、今だけは・・・・・・
彼とは違う、思い出の中の武史に抱かれているようで、現実の武史の攻めに香子は溺れている。そんなときに彼の話は聞きたくない。
二度とは無い秘密の時間を武史と共有する、共犯者のスリルが快楽に滑車をかけている。
まだ、触れられてもいない女の部分から愛液が滴り落ち、シーツにしみを作っていく。
・・・・お願い・・・触れて・・・・
言葉を捜して、武史を求める心がむせび泣く。武史の愛撫は少しずつ下半身へと近づくとまたずり上がるというまるで香子を知り尽くしているかのように焦らす。
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