「久しぶりだね。村木くん。」
都内某高級ホテルロビーにてゆっくりと歩いてくる彼―村木武史―と久しぶりの再開を果たした私―鈴村香子―。
「本当に久しぶり、鈴村さん。あれは・・・仕事でこっち来たとき以来だから2年ぶりかな?」
「もう、そんなになるっけ?・・・・とりあえずお茶でもしようか?」
二人は連れ立ってロビーの傍らにあるラウンジへと歩んだ。
「・・・空いてないね。どうしようか外出る?」
「部屋へくる?」
香子はこともなげに武史に言った。
「ああ、このホテルに泊まってるんだっけ。入れないだろ?」
「大丈夫よ。ツインルームのシングルユースで取ってるから。」
「なら、いいけどね。」
二人はエレベーターホールへ行くとちょうどやってきたエレベーターに乗り込むと香子の取ってある部屋へむかった。
「コーヒーでいい?」
「ああ、うん。」
ルームサービスを頼むと窓際の椅子に二人で腰掛けた。一通りの近況報告をしているうちにコーヒーが運ばれてくる。香子は部屋にセッティングされたカップに熱いコーヒーを注ぐと武史の前に差し出した。
「で、今日は何の用で?」
「ああ、明日の午後友人の結婚式があるのよ、こっちで。でどうせくるなら早めに来て人と会うのもいいかなって。」
「それで俺?」
「ま、そうね。」
「で、鈴村さんこそ。どうなのよ。」
「うん、半年後に結婚予定よ。招待状出すから来てね。」
「もちろん。他にも来るんだろ?」
「ええ。でもね・・・。」
「なに?」
いぶかしげに武史は香子を見る。小さく笑いながら香子が武史を見つめた。
「今でも、思うのよ。あなたと・・・・寝ておけばよかったって。」
「何を・・・!」
「本気で初めて好きになったのは君だったから。ううん、彼を今愛しているのは本当なの。ただ・・・ただね・・・。」
「鈴村さん・・・・」
言葉につまり、香子はゆっくりと立ち上がると武史に背をむけて
「決めて、どうするか、シャワー浴びてくるから。関係を持ちたくないなら部屋から出て。オートロックだからただ、閉めてくれればいい。」
そういってバスルームへ消えていった。
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