秘密 1

夏にはまだ早く、春ではきつ過ぎる日差しが包む部屋の中で、粘膜がこすれあう淫靡な水音が響く。彼の両手はしっかりと窓べりに座らせた彼女の腰を抱き下から突き上げるように腰を揺する。全身を襲う快感に身をのけぞらせた彼女の目を日差しがくらませる。
「・・ひ・・ああ・・・んん・・ふくぅ・・・ん・・・太・・・陽が・・・・見てる・・・」
うわごとのように言う彼女の唇をふさぎ舌を絡ませ言葉を奪う。
・・・・・ああ、彼に抱かれている・・・・・

「久しぶりだね。村木くん。」
都内某高級ホテルロビーにてゆっくりと歩いてくる彼―村木武史―と久しぶりの再開を果たした私―鈴村香子―。
「本当に久しぶり、鈴村さん。あれは・・・仕事でこっち来たとき以来だから2年ぶりかな?」
「もう、そんなになるっけ?・・・・とりあえずお茶でもしようか?」
二人は連れ立ってロビーの傍らにあるラウンジへと歩んだ。
「・・・空いてないね。どうしようか外出る?」
「部屋へくる?」
香子はこともなげに武史に言った。
「ああ、このホテルに泊まってるんだっけ。入れないだろ?」
「大丈夫よ。ツインルームのシングルユースで取ってるから。」
「なら、いいけどね。」
二人はエレベーターホールへ行くとちょうどやってきたエレベーターに乗り込むと香子の取ってある部屋へむかった。
「コーヒーでいい?」
「ああ、うん。」
ルームサービスを頼むと窓際の椅子に二人で腰掛けた。一通りの近況報告をしているうちにコーヒーが運ばれてくる。香子は部屋にセッティングされたカップに熱いコーヒーを注ぐと武史の前に差し出した。
「で、今日は何の用で?」
「ああ、明日の午後友人の結婚式があるのよ、こっちで。でどうせくるなら早めに来て人と会うのもいいかなって。」
「それで俺?」
「ま、そうね。」
「で、鈴村さんこそ。どうなのよ。」
「うん、半年後に結婚予定よ。招待状出すから来てね。」
「もちろん。他にも来るんだろ?」
「ええ。でもね・・・。」
「なに?」
いぶかしげに武史は香子を見る。小さく笑いながら香子が武史を見つめた。
「今でも、思うのよ。あなたと・・・・寝ておけばよかったって。」

「何を・・・!」
「本気で初めて好きになったのは君だったから。ううん、彼を今愛しているのは本当なの。ただ・・・ただね・・・。」
「鈴村さん・・・・」
言葉につまり、香子はゆっくりと立ち上がると武史に背をむけて
「決めて、どうするか、シャワー浴びてくるから。関係を持ちたくないなら部屋から出て。オートロックだからただ、閉めてくれればいい。」
そういってバスルームへ消えていった。

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