クリスマスの夜。
サンタクロースのプレゼントを心待ちにし、靴下を下げて眠りにつく子供が世界中に溢れている。
そんな子供たちも成長し年を重ね、クリスマスに新たな喜びを見出すようになる。
ミッドガルの自宅にフラフラになりながら帰宅した青年ザックスもまたその内の一人だった。
「ただいまっと…」
ザックスは誰もいない自宅の玄関で小さくつぶやいた。
今日はクリスマス。同性の友人たちと酒盛りをして過ごし、深夜になっての帰宅だった。
去年までは一緒に過ごす恋人が当たり前のごとくいたが、今年はこの時期が来る前に別れてしまい、寂しい独り身となってしまった。
どうするか悩んだ末、同じような境遇の友人を集めた男だけのむさ苦しいクリスマスパーティーに参加して来た。
男同士で盛り上がるのもそれはそれで楽しい。パーティー中は上機嫌で酒を煽り、ゲームで遊び倒した。
しかしこうして帰宅して一人になるとその気持ちもどこかへ吹き飛んでしまう。
こうなって初めて自覚したことだが、ザックスは自分は寂しがりやなのだと痛感した。
「…とっとと寝ちまうか」
こういう時は寝るに限る。
簡単にシャワーを浴びてベッドにもぐり込む。が、なかなか寝付けない。
ゴロゴロと寝返りを繰り返しているうちにザックスは小さい頃のクリスマスのことを思い出した。
ベッドの横に靴下を下げ、翌朝どんなプレゼントが入っているか心を躍らせながら寝たあの頃。
そういえばサンタクロースを信じなくなったのはいつからだろう。
確か10歳くらいのころだとザックスは思い返した。
その年のクリスマスは欲しいと思っていたプレゼントとは程遠い物が枕元に置いてあり、起きてすぐ親に当り散らした。
それだけでは収まらず友達にも話した時にサンタクロースはいないのだという現実を思い知った。
ふと、暗闇に慣れた目に洗濯した後、しまい忘れて床に放置していた片方の靴下が映った。
ザックスはそれを手で手繰り寄せると、何を思ったかベッドの脇に下げた。
これで朝になって欲しい物が入ってたらなあ。
まあ今一番欲しいのは彼女だし、サンタクロースといえども無理に決まってる。
そんなことを考えながらベッドに入り、ウトウトし始めたころ、それは起こった。
突然部屋の窓がガタガタと音を立てたかと思ったら、部屋に冷たい風が入り込んできた。
半分眠りかけていた頭はすぐに覚醒し、泥棒が侵入したかとザックスはベッドの中で身構えた。
そしてベッドの近くを音を立てないように歩く影を薄目で見やった。
容姿などはよくわからないが、それほど大柄な人間ではなさそうだ。
むしろ自分より小さいようだ。
これなら簡単に取り押さえられるかもしれないとザックスは寝たふりをしながら機会を窺った。