『A Woman In Red』

はじめに
☆パラレルトゥナイト(カルロ&蘭世)の設定で書いております
 そこをどうかご了承のうえお読みください。

このお話は、短編『円舞曲−ロンド−』からさらに派生したお話です。

(1)

”プリシラ”という名の女の屋敷から、カルロは蘭世を連れて帰ってきた。
ちょっとした訳があって・・蘭世は夫人に軽い睡眠薬を飲まされており、意識がない。

(・・・)
カルロは自分の腕の中で眠る蘭世を気遣いその寝顔を見つめている。
蘭世はというと・・きわめて安らかな表情で寝息を立てていた。
蘭世はカルロのトレンチコートを着せかけてもらっていたが
ちょっとした事情から・・その中はキャミソールの下着のみの姿だった。
蘭世の素肌を覆うその唯一の服は、いつもの彼女のそれとは一線を画す・・紅い色をしていた。
真紅なのに、それを彩る大きなレースが絶妙なバランスで優雅さを醸し出している。
そして、それは蘭世にとても似合っているのだが、そんなことをじっくりと鑑賞
する間もなくカルロは夫人の屋敷から蘭世を”救出”したのだった。

カルロと蘭世をのせた黒塗りの重厚な車がカルロ家の大きな門をくぐる。
「お帰りなさいませ」
部下が車の扉を開くとカルロ自ら彼女を両腕に抱き上げたまま車から降り立ち、
自分の屋敷の玄関から屋内へと歩いていく。

カルロは私室につくとまっすぐ寝室へ向かい、ベッドに蘭世をそっと横たえる。
(ここへ連れてきたのは久しぶりだな・・・)
専ら、最近の二人のデートは屋敷以外の場所であった。
・・・いまだに蘭世は熟睡モードから戻ってこない。
(一気に(睡眠薬入りジュースを)飲み干していたから・・・仕方のない娘だ)
暖房が効きすぎた部屋で喉がからからだったのは確かだが、
本当に蘭世は警戒心という物がない。
カルロはやれやれ・・と(でも少し楽しそうな表情で)ため息を一つついた。
・・そう、その人を信じ切っているようなところがまたカルロにはかわいいと映ってしまう。
思わず守ってやりたくなる、そんな娘だった。

「ん・・・」
ブランケットを掛けようとしたとき、伸びていた蘭世の白い右足の膝がゆるゆると上がり
右腕もしどけなく動き、ぱたんとシーツの上へ落とされる。
蘭世はカルロのいる方へ寝返りを打ったのだった。
その拍子に赤い肩紐がはらりと肩から外れる。
半開きの唇が、やけに色っぽい。
あどけない寝顔と赤いキャミソールを身に纏った白い四肢が絶妙なアンバランスで
・・・男の征服心を煽っているような気がする・・・。
普段、蘭世の下着姿といえば淡い色のものしか見たことがなかったから、
この”赤”は上品なデザインではあったものの・・・非常にインパクトのある姿だった。

(プリシラがしたことは承伏できない。だが・・・)
俗っぽく言えば”いい物を見せてもらっている”気分だ。
思えばこの1ヶ月、蘭世をプリシラの”魔の手”から護ることで神経をピリピリととがらせ通しだった。
あまりにも、誰に対しても無防備な蘭世。
(少しお仕置きがしたいくらいだ・・・)
寝顔も、無邪気。だが・・伏せた睫毛に、顔にかかる長い髪にどこかなまめかしさを感じる。
細い肩も、紅いキャミソールがかかる白い太股も・・男を誘っているように思える。
(据え膳だな)
カルロはスーツの上着を脱ぎ捨て、ネクタイの首元を指先で優雅に緩めた。
ブランケットを押しのけ、代わりにカルロが上に被さる。

ひとつ頬へキスを落とすと、唇は首筋から赤い胸元までゆっくりと滑り落ちていく。
「ん・・・」
漸く蘭世の意識も戻ってきたようだ。
ぼんやりと目を開いて・・蘭世は驚いた。今までくだんの夫人といたはずなのに、
気がついたらベッドの上で・・カルロの腕の中なのだから。
「えっ!?ダーク!?」
慌てて飛び起きようとする蘭世の肩をカルロは押さえて引き戻す。
「ここどこ?! 夫人は? きゃ・・私一体どうしてっ???」
「説明は後だ・・・赤がよく似合っている」
カルロはまだ何か言いたげな蘭世の唇を塞ぐ。
「んっ・・・」
カルロの、いつにもまして極上のキス。
優しく唇をくまなくついばむようにその唇は動いていく。
そして、次第に深く・・吐息が漏れたそのときに舌を滑り込ませていく。
「あっ・・」
蘭世の首筋に・・甘い痺れがあがってくる。
(でも・・ここは・・どこ?)
(ここは夫人の屋敷?だったら・・誰かに見られたらどうしよう・・・!)
蘭世の不安がカルロに伝わってくる。
まだ現状の把握が出来ていないおとぼけ蘭世にカルロはくすっ と笑う。
(このまま黙っているのも一興・・・)
つと唇が離れたとき、蘭世は問いかける。
彼女の瞳が不安で揺れている。
「ね、ダークっ、ここはどこ・・?」
「おまえとだったら どこででも構わない・・」
「えっ!あぅ・・」
不安を煽るようなことを言いながらカルロはさらに深く口づける。
先ほどよりもさらに情熱的に・・食べ尽くしてしまうかのような深いキス。
(待って・・待って!!)
(待たない。)
撫でるように触れ・・細い肩からストラップを落としていく。
細い背に廻された大きな手はぷつん、とブラのホックを外し、胸元を緩めていった。

つづく


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