『カウントゲット記念:パラレルこぼれ話』



☆パラレルトゥナイトの設定で書いております
 そこをどうかご了承のうえお読みくださいね。

★更にご注意。
今回は、多少ショッキングな内容となっております
レイプ要素が含まれます(しかも相手がカルロ様ではありません)
苦手と思われる方は 速やかにお戻り下さい。
心づもりが出来る方のみ お進み下さい。







『Z再び』

:前編


ルーマニアの厳しい冬はまだ続いている。
古い城をホテルに改装したその建物の最上階にあるロイヤルスイート。
丘の上に建つその城の部屋の窓からは黒々とした森が見渡せる。
おそらくそれは・・古(いにしえ)の王と王妃が使っていた部屋に違いない。
その広く豪奢な部屋の奥、大きく豪奢なベッドに 蘭世は・・気を失って、寝かされていた。
彼女の真白で柔らかそうなワンピースの裾は乱れ、その裾から細い右足のひざが露わになっている。
そして細い両手首は後ろ手に縛られその自由を奪われていた。
ベッドのある部屋の隅に手のひらに乗るくらいの小さな香炉がある。
それは遠い昔、インドなどの東方の国で作られた物らしく、オリエンタルなデザインであった。
そして・・そこから糸のように細い煙が白くたちのぼっている。
その煙は甘く、不可思議な香りを部屋中に漂わせる・・・。

蘭世の眠るベッドへとコツコツ・・と靴音を立てて近づく人影がある。
見事な長い銀髪を後ろで束ね、端正なその面差しには かいくぐってきた修羅を思わせる翳りが
宿っていた。
カルロに似た品格をも持ち合わせ、歩き方にも隙がない。
スッ、と外したサングラスの向こうから・・優美だが鋭い眼光のオッドアイが現れ、
これから始める”宴”にニヤリ、と笑みを浮かべる。
この部屋へ蘭世を連れてきた張本人・・・”Z”だった。
(迷子札はきちんとついているようだな・・・)
蘭世の細い首の襟元に人差し指を差し入れ、肌の感触を楽しむような指使いで
首に添っていたチェーンをすくい上げる。
引き上げられたその細い金の鎖には玉虫色に光る卵形のペンダントがついていた。
小型ながら高性能な盗聴器と発信器が埋め込まれているに違いない。
「・・・前宣伝は きちんとしておいたものな」
のどの奥でクック・・と低い笑い声を立てる。
『酒場「MA−YA」でZを見かけた・・・奴は誰かと密談をしていた』
カルロ家にそんな通報があったのは数日前のことだった。
”絶対にこれは罠だ”
きっと蘭世を使ってカルロをおびき出すつもりだ。
そして、ねらっているのは明らかに・・・マフィアのボス、ダーク=カルロの”命”。
判っていても、蘭世の身辺警戒を怠るわけにはいかない。
当然蘭世には高性能の小型マイクと・・発信器が渡される。
「用意周到なカルロの隙をつく仕事、というのは実にやり甲斐があって面白い」
そして、鉄壁だったはずのカルロ家の守りにもかかわらず・・
蘭世は、Zによって拉致されていた。
「それにまた、こうして蘭世を手に入れられるのだから・・全くおいしい仕事だ」
Zは以前も誰かの依頼を受けて蘭世を拉致したことがある。
しかし・・・個人的にも蘭世に興味を持っていたようだった。
「おはようお姫さん。」
ぼんやりと目を開けた蘭世の顔をのぞき込む男の顔があった。
「!?」
それは・・蘭世がここ最近で一番会いたくない男だった。
蘭世は恐怖で表情が凍り付く。
その男と目があった一瞬で、自分が深刻な危機にさらされていることを悟ってしまった。
蘭世は急いで起きあがろうとするが・・
「いや・・・嘘っ!どうして!?」
身体のどこにも力が入らないのだ。手は縛られて動かないが、それ以外は特に何も
拘束されているわけではない。
「よしよし。声は出るようだな。そう・・・今からいい声で鳴いてもらわないと」
「いや・・動けない・・どうして!?・・それに・・・あつ・・い・・」
体中が、焼け付くように熱いのだ。
「知りたいか?」
蘭世の鼻先に、Zは不思議な形の陶器を差し出す。
そこからは、先ほどから蘭世の周りにまとわりついているにおいがまとまって立ち上っていた。
蘭世は顔をしかめ、思わず顔をそこから逸らす。
そして、自分の吐き出す息がなおいっそう熱く焼け付くことにとまどう。
「う・・」
「・・・東洋の神秘、てところか?この媚薬、若い娘によく効くと聞いていたが
 本当だったようだな」
ニッ、と意地の悪い笑みを浮かべZはそれを元の場所へ戻す。
その香は・・しびれ薬だけではなく催淫剤の役目も果たしているようだった。
薬が効いていることを確認すると、Zは手首を縛っていたひもをナイフで切りはずした。
両手が自由になっても・・蘭世は身動きも出来ず、逃げることは叶わなかった。
「立場上仕方なく・・なんておためごかしは言わない。せいぜいお姫さん、お前も楽しむといい」

Zは蘭世の胸元へ口を寄せ・・盗聴器が仕込まれたペンダントに話しかける。
「カルロ。そこで聞いているのだろう?・・・お前の女は私が貰い受ける。
 悔しければお前一人でここへ来い。ま、来なくても記念に撮ったビデオを各方面に送ってやるがね」
続いてビリリ・・と布・・おそらく蘭世が着ていたワンピース・・が乱暴に引き裂かれる音が
イヤホンに響いてくる。
その音に甲高い娘の悲鳴も重なっている。

「・・・」
一部始終を聞いていたのは・・カルロと、ベンの二人だけであった。
彼らは屋敷の執務室にいた。
カルロはすでに仁王立ちで机を拳でたたきつけ・・俯いた表情は前髪でわからないが、
その口元は怒りでゆがんでいるのが見える。歯を食いしばり、ギリ・・と音を立てていた。
(またあの男が・・・!)
カルロは水も漏らさぬ構えで警戒していたはずなのに。
それでも手元から蘭世をかすめ取られてしまったことにまず屈辱を覚える。
そして・・・あの男は。
あの男は蘭世を仕事ではなく個人的な意志でも狙っているのだ。
すぐに助けなければどうなるかは火を見るより明らかである。

ベンはきわめて事務的に受信機のイヤホンをはずす。
「これは明らかに罠です。ファミリーのために申し上げます、行くのはお止めになってください」
ベンの冷徹な言葉にカルロは俯いていた顔を上げ・・激しい視線を投げつけた。
そしてつかつかとベンへ歩み寄る。
「ランゼを切り捨てろと・・・言うのか」
「我がファミリーにはダーク様が必要なのです。・・代わりの娘などいくらでも」
次の瞬間、ベンの身体は床に打ち付けられていた。
・・・カルロが、ベンの左頬を殴りとばしたのだ。
「黙れ!・・・お前はいつから私に指図できるようになったのだ」
カルロは倒れ込んだベンを睨み付けたあと、きびすを返しワインの入った棚へ向かっていく。
乱暴に棚の引き出しを開けると真鍮製の小瓶を取り出し・・蓋をはずした。
カルロはその小瓶に口を付けると中の液体を一口含み・・飲みこんだ。
次の瞬間。
「!!」
カルロの姿が・・霧のように消えてなくなったのだ。
ベンは驚き、痛みも忘れて立ち上がった・・が、カルロが消滅した原因についてすぐに思い当たり、
頭を振った。
(・・・蘭世様のお父上からの入れ知恵だな)
その通り。
小瓶の中身は、魔界の想いが池の水であった。
Zが再び現れた事を知ったその日のうちに、カルロは望里に頼んで貰ってきていたのだ。
過去の『Z』の一件から、教訓を得て用意したことだった。
「ダーク様・・・」
ベンは口元についた血を親指で拭う。口の中が切れたようだった。
(ダーク様に殴られたのは何年ぶりだろうか・・・)
滅多に、というか全くと言っていいほど自分の手ずから部下を殴ることなどしないカルロが・・。
ベンが過去に殴られたのも、まだ学生の頃に喧嘩の練習、といって殴り合いをした程度の事だった。
(このファミリーも、もう危ういのだろうか・・)
一国の主が女のために身を持ち崩す例は遙か昔から数多くある。
それだけはどうにか防ぎたいものだとベンは常々思っていた。だが、カルロは・・・
(身を滅ぼされるか、それともご自分の実力でなんとかなさるのか・・)
カルロが入れあげているのはいくらエスパーの娘とはいえ、
それ以外にはベンから見れば何の取り柄もなさそうな娘である。
(・・・それでも私どもが出来ることはしなければ・・ボスのために)
ベンはため息を一つつくとポケットから受信機を取り出し・・再びスイッチを入れた。
受信機の地図画面に・・・赤く小さな光が点る。
それは見覚えのある古城ホテルを指し示している。
(ここか・・)
ここへ追撃部隊を密かに数名、そして、もしも直接こちらへテレポートして戻ってきたときのために
医療チームを含めた数名を用意しよう。
ベンはそんな風に頭の中で配分を決め・・部下を呼び出すため廊下へと向かった。




続く。


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あとがき。

またまたカウプレに関わらず前中後編で参ります〜(ヲイ)
今回、マーヤ様にいただいたお題は
「嫉妬のあまり思わず熱くなるカルロ様」
でございます。

私も、いつも冷静なカルロ様の壊れているところが見たい・・・!
と がんばってみました。
ストーリーはパラレルこぼれ話『Z』から拾って参りました。
続編でございます。仕掛け人に当サイトオリジナルキャラの
Z氏を選んでみました。

んが。
カルロ様ったら最初っから熱くなっておりますねぇ;
原作でも 蘭世ちゃんがたましいの実を食べて操られたと知ったとき
カルロ様ったらピストル取り出してカンカンに怒っていたから(^^;
こんな感じも有り?? って思いながら書いてみました(逃)
っというかなんというか力不足でごめんです;

続きはまた後日でございます。
マーヤ様、カウントゲットの記念に まずは前編 ご笑納ください。 悠里



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