6)
潤んだ瞳で見あげる小鳥に 褒美の口づけを・・・
長い口づけの後 会いたかった、と胸元で呟く彼女を抱き上げ 彼はその額に、頬に
そして再び唇に口づけを落とす
そのままシャワールームへ娘を担ぎ込むと カルロは一気に彼女のネグリジェやショーツを引き降ろし
真っ赤になって座り込む いつまでも初々しい彼女を眺めながら自らも服を脱ぎ捨てる
「あ 鈴・・・」
濡れては大変と 蘭世は慌てて手首から七色の紐を外し傍らへ置くと それと入れ違いにカルロが
後ろから彼女の腋に手を差し入れ抱き上げバスルームへと連れ込んでいった
蕩々と流れ落ちるシャワーの湯を浴びながら 首筋に 胸に 脇腹に 唇が 手が 這っていく
「カルロ・・・さまぁ・・・」
カルロのふれる場所すべて熱を帯び 次第に立っているのが辛くなるほどに 体中を甘い痺れが駆け上っていく
彼も 蘭世の何処を触れれば花開いていくのか 知り尽くしている。
そうだ 全て私がこの娘に 教えたことだ・・・
彼女の秘密は 私だけが知っているんだ
たまらずにへたり込んだ蘭世を カルロはタイルの上へそっと押し倒す
床を薄く流れる湯の中に 彼女の黒髪が広がりゆらゆらとたゆたう
「ランゼ・・・」
耳元で彼は彼女の名前とともに ささやく
”遠くから帰ってきた私に お前の全てを見せてくれ”と・・
「あ・・・っ」
上気した顔でうっすらと瞳を閉じる蘭世の頬に口づけると カルロは蘭世が手で制止する前に
細い足の膝を立たせ大きく開かせ すでにぬるみをおびた秘所の花びらに唇を寄せ
甘噛みしては吸い上げる動作を始めた
「ひっ・・・いやぁあぁぁ・・ん」
ぱしゃん、ぱしゃん と 悶え所在なげに手を泳がせる蘭世が水音をたてる
カルロの唇はすでに花びらの向こうにある快楽の真珠を探し当て 溢れる愛液を舌先で掬ってそこになでつけながら
それを口に含んで 敏感なそれへも 軽く歯を立てていく
「きゃああっ・・噛んじゃ・・・いやぁぁっ・・・」
押さえつけていた細い腰がたまらずに浮き上がり湯で水音を立てる
「だめぇぇ・・っ おねがいぃ・・・あぁあぁぁ・・・」
歯先でこりこりと敏感な部分を愛撫され頭を振り乱し 足を突っ張って彼女は悶える
(だめだ・・まだだ・・・)
長い指先を蜜の溢れいでる元へあてがい ぐっ と一気に突き入れる
「くぅぅぅぅんっ・・・!」
蘭世の喘ぐ声に一層甘みが加わり ひときわ高い声がバスルームに響く
もっと もっとその声を聞きたい。
一本、もう一本と指を増やし 奥まで突き入れては中指を曲げ恥骨のあたりを押し上げる
「きゃあぁぁぁっ・・やぁぁあぁ・・っ」
それは彼女の弱い場所で・・さらにあられもない声をあげて蘭世は悶える
「もう・・もう・・・だめぇぇぇ・・おねがい・・・・ダーク!」
蘭世は突然彼のファーストネームを呼ぶ。
それが最近の 二人の合図だった
(来て・・)
私を抱いて・・ ひとりにしないで・・・!
そのままひとりでいかせてしまうのも
生殺しでじらしてしまうのも
全てはいつも彼の思いのまま。
だが今宵は。
カルロは秘所から唇を離すと 陵辱していた指を引き抜き 蘭世が自分を求め差し出す手を取りそっと口づけた
「ねぇ・・・ダーク・・・おねがい・・・今日は・・・一緒に・・・」
わかっている。
Yesと答える代わりに カルロは蘭世の熱い吐息漏れる唇をその唇で塞いだ
そして 彼女の両足首を掴んで上へ・・彼女の頭の方へ引き上げる。
「あっ いやっ」
淫らな格好に驚き嫌々をする蘭世に一層そそられ このポーズでさらに露わになったそこへカルロは熱くなった己の分身を
ぐっ と押し当て 深々と腰を沈めそれを突き入れた。
「ううううぅぅぅんっ・・・!」
待ちわびた熱に 辱められた格好に 頭の中が真っ白にスパークしていく
「いやぁん・・こんなぁ・・・っ・・・」
「嫌ならやめるか」
「あっ・・」
”やめないで・・・!”
蘭世はその意地悪な問いに我に返り 急いで頭を横に振る。
カルロですらもう 自分の熱を止めることができないくせに・・・
そして、その蘭世の真っ直ぐな反応にクスリ・・とカルロは笑みを漏らした。
「だ・・ダークの意地悪・・・っ」
意地悪な問いかけにいちど収まりかけた熱も
次第に激しくなっていくカルロの律動にあわせ再び激しさを取り戻し 蘭世の体もビクン、ビクンと揺れていく
声にならぬ声をあげ 名前を呼び合い 激しく揺れあう
「ダーク・・ダークぅぅぅ・・っ ああっ・・・!」
一層激しく声を上げ 蘭世は体中をわななかせる。
体を突き上げていた彼自身を一層きつく締め上げ 体の奥がびくびくと痙攣をする
「・・・・クゥッ」
彼もまたそれを追いかけるようにして 彼女の中で己の想いを遂げた。
共にシャワーを浴びて睦み合い 再びもつれ合うようにしてベッドへ二人は沈み込んだ・・・
◇
夜更け。
三日月はすでに沈み天空には星達がまたたくばかり・・・
再会の喜びを分かち合い 心地よい脱力感と共に蘭世は枕に突っ伏していた。
カルロはその側で横になり 肘をついて蘭世の長い黒髪を撫でている・・
「・・・私のことが憎いか」
突然、カルロは彼女に問いかけた。
「・・・!」
俯せていた蘭世は大きく目を見開き 思わず顔を上げカルロを振り返った
その驚いた表情の彼女の瞳をまっすぐ見つめ カルロは再び問いかける。
「家族から引き離し お前を囲った私が憎いか」
「・・・」
それは 睦み合う二人の間で しばらく伏せられていた事実・・・
蘭世は何かを言おうとして口を開きかけたが・・そのまま言葉を飲み込み口をつぐんで瞳を伏せた。
「恐れなくていい・・・素直な言葉が聞きたい」
カルロはそう囁き・・蘭世の動揺を見つめながら 黒髪をゆっくりと撫でつづけた。
蘭世はしばらく押し黙っていた。・・・息が詰まる沈黙が 二人の間に流れる・・・
そして 蘭世は思い詰めた表情のまま カルロへと寄り添いその胸元に顔を埋め ぽつり とつぶやいた。
「わからない・・・今は・・・」
カルロにはその蘭世の言葉と仕草だけで十分だった。
私は多くは望まない
心から私を愛してくれていなくてもいい・・若い娘に まだ愛など判りようがないだろう。
ただ 寄り添って 私のそばにいてくれればいいのだ。
そして 私はお前を 思うままに愛する それだけだ。
そんな想いを心にじっと秘め
カルロは黙って そっと蘭世の額に唇を寄せ 彼女を腕の中に包み込む
照明を落とし 茜色の代わりに濃い闇がその部屋を支配する
そのままふたり ブランケットにくるまって 月のない夜を渡っていくのだ・・・
ベッドサイドの小さなテーブルの上で 彼女の鈴が小さく ちりん と鳴いた
その音も とうに眠りについた二人の耳には 届かない・・・
おわり
冬馬の棺桶へ bg photo:Silverry Moon Light |