思惑
「そろそろ死んだかな。」
「死ぬわきゃねぇって。」
びっしりと詰まった蔓を見上げ男二人はのんきに会話をしていた。
あぁはめられたのだな。
花紅露はとっさに悟った。
あの青年の震えは騙すことに対しての緊張の一種なのだろう。

一人の男が少し蔓を緩めて確認しようとしたが
花紅露はローブを被っていたために顔色は伺えない。
「なぜこんなことをする?」
花紅露は状況を打開したくて声をかける。
「まーだ生きてたか。」
「そりゃあそうだって。」
男たちは嫌な笑いをニヤニヤと浮かべた。
「なんせあの闇夜様の守者だ。」
闇夜を侮辱する言葉に頭がかっとなる。
「なにがいいたい。」
「今までいい思いしてきたんだろうが。死んでも惜しくないよな。」
「自分で勝ち取ったものだ。惜しいに決まっている。」
そういうと花紅露は蔓を切り裂いた。
先ほどそれに絡みつかれ息絶え絶えだった様子が信じられないくらいやすやすと。
そして、花紅露は異空間から取り出した剣を煌かせ一人に剣を立てる。
「俺の命だけが目的か?黒き翼の住民よ。」
男たちはびくっとしたかと思うと急にニヤニヤ笑い出した。
「何だ分かってたんなら話は早い。しばらく俺らに付き合ってくれよ。」
花紅露はしばらく考えた。俺を殺すのが目的ならこんなに長引かせるはずはない。
ならば俺の足止めぐらいしか思い当たらなかった。
「闇夜様か。お前たちの目的が分かった以上長居をする必要はないな。」
花紅露はそういうと腕を高く上げ指をぱちんと鳴らした。
「ぐわぁ。」
男たち二人は身体に痺れを感じ途端にうずくまる。
「陣(じん)あとはまかせる。」
花紅露は誰もいない場所にそういい捨てると、闇夜の元へ急いだ。
 
花紅露が行った後。
風が砂を巻き上げ地面にうずくまった男たちの顔をなでた。
「馬鹿が。花紅露に手を出すなんて後悔するぞ。」
気が付けば茶髪がバンダナで斜めに巻かれ、
無愛想な顔が目立つ男が目の前に立っていた陣である。
主である花紅露の命に従い現れた精霊だ。
男たちの顔に汗が流れる。
嫌な予感がした。茶髪の男が現れてから精霊の気配が薄くなっているのだ。
「かわいそうに。こんな男たち操られて。」
陣は地面にうずくまる自分たちのことなど気にせず
先ほどまで花紅露を捕らえていた蔓を愛しそうになでた。
陣はゆっくりと手をはずしていくと足跡も立てず男たちの方に歩いた。
涼しいはずであるのに男たちの額に汗が浮かんでいる。
「償え。」
風の速度が増し男たちに一気に向かう。
そして男たちはもう吐息を漏らすことはなかった。
 
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