攻略せよ!!レパント家1

 会議の後、小さい嵐がその場に巻き起こった。
「嫌だ。僕ファオといる」
僕は懸命にファオが先に行ってしまわないように長袖を掴み、マッシュに抗議していた。
マッシュが僕を連れて行くことに反対をしてくるのだ。
理由は分かっているだって見るからに僕は子どもだから。
行っても邪魔になるだけだ。
けど、こいつといたら絶対にあいつに会える。
そう確信してこの人といるんだから邪魔されたらたまらない。
「私は子どもが傷付くのが嫌なんです。聞き分けてください」
マッシュはほとほと困った顔をしてルックを見やる。
「ファオと僕年齢変わらないよ!それはどういうことなの」
ルックは畳み掛けるようにマッシュを攻めた。
「はっ?ルック君って何歳?」
ファオは驚いたとばかりにこちらを見てきた。
「13だよ。ファオと1つしか違わないでしょ」
むくっと膨れて見せる。
二人はまだ疑わしい瞳でこちらを見てくる。
「疑うんならレックナート様に聞いてよ」
「……遊びじゃないんですよ」
さっきと違う真剣そうな眼差しでマッシュは僕にそう囁いた。
「あのね、僕も遊びじゃないんだよ。レックナート様に頼まれてここに来てるんだ。
僕自身力はないし、弱いけどそれだけじゃいけないと思うんだ。
せめて自分の身体くらい自分で守れるようになりたいんだもの」
ルックはマッシュに正面から見つめてそう訴えた。
はぁとマッシュはため息をついて仕方なさそうにいった。
「分かりました。二人とも無理は禁物ですよ」
「はい」
ファオは分かったとしっかりとした返事をした。
 
あの日からそう時はたっていないが場所が変わればその町の様子もだいぶ違う。
あの塔は閉鎖的。
動かない、時が流れない。
完全なる静寂が支配していそうなある意味楽園と言えそうな場所。
その中でも変化を確実に刻む花々や森の動物たち。
彼らがいなかったらあそこはまるで……。
ルックは頭をふるいそれを振り払う。
そして、顔を持ち上げ何気なしに空を見上げた。
珍しいくらいの晴天で、雲も少ない。
くっきり姿を映している雲は爽快だ。
僕の思考とまったく反対なのが笑えてくる。
ファオが来る前に用事を済ませておこう。
ルックは目的地に向かって歩き出す。
滅多に歩くという行為をしないせいか足が痛む。
森で歩き回っているといってもそこまで僕に体力はない。
柔らかい土がないせいだろう。
少しして、こじんまりとした村にたどり着く。
人にぶつからない様にちまちまと歩きながら紋章屋を探す。
どんっ
いきなり人が目の前に現れてぶつかってしまった。
何とか足に力を入れ踏み込む。
どうやら珍しい種族にぶつかったようだ。
「いてぇな。羽が折れたらどうしてくれるんだよ」
そいつは僕を見て忌々しそうにののしった。
整えてない腰まである長い髪に漆黒のツバサ。
付け根はどうなっているのかと考えてしまう。
「丁度いいや」
男は突然腕を掴んで路地裏にルックを引きずり込む。
とっさのことで身体が動かなかった。
壁に叩きつけられ、一瞬記憶が飛ぶ。
嫌な予感がした。
ルックをめがけて鋭いつめが振り下ろされた。
痛みを覚悟し目をつぶるが、何の衝撃もやってこない。
不思議に思って目を開くと男のつむじがそばにあった。
胸の上に生暖かい体温が這う。
気持ち悪い。
吐きそうだ。
魔力で構成を編もうとするがあまりの気持ち悪さに魔力もうまくまとまってくれない。
確か種族は、ウィングボードのはずだ。
そいつはにやっと笑った。
嫌悪感が募る。
こんなものに触られたくない。
ルックが放出していた魔力がまとまり力を持つ。
「どいて」
ルックは押し殺した声で言う。
今にも魔力が溢れそうだ。
その男はなに言ってんだとばかりに拳をふるい上げる。
それが最後の引き金を引く行為となった。
風がルックを守ろうと働く。
それは柔らかな風に抱かれる歓喜。
淑やかな遊女に抱かれる至上の至福。
男は恍惚の表情を浮かべて切り刻まれた。
涼やかな風を浴びたかのように微笑して、立ち上がり歩く。
いうことはいった。
聞かない男が悪い。
ルックは無残に切り刻まれたウィングボードを振り返ることなく歩いた。
 

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題名をやけに明るくしてみたり……ブラッティが好き。

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