海に黄昏し運命の古城1
ビクッ
ひときわ大きく心の琴線が鳴らされた。
ゆっくりと立ち上がるとルックはレックナートの元へと転移した。
あまり遠い距離でないにも関わらず転移してしまったのは、
僕が少なからず焦っていたのだろう。
なにもない、ただロウソクの炎が何時までも揺れ続ける部屋にレックナート様はいた。
地に這いずるローブを纏、いつものように目を伏せて。
「レックナート様」
ルックがそう問いかけると判っているとばかりにレックナートはうなずいた。
二人のおしゃべりにはいつも余計なことはない。
お互い口に出さなくても判ってしまう、そう重要なこと意外は。
「えぇ、行きましょう。ルック見てきなさい運命の流れを」
二人は光の中へと消えた。
レックナートの口上は終わりルックはようやく口を開くいた。
「僕はルック。レックナート様の一番弟子だよ。
レックナート様の命令だから仕方なく手伝ってあげるよ」
ルックはいつもどおり言葉をつらつらと並べ上げた。
いちいち考えるのがめんどくさいだけだ。
口に上るのはいつもお決まりの言葉ばかり。
本はたくさん読んでいるつもりなのだが残念ながらそれを使う機会がない。
「絶対押し付けやがったな」
見た目が青く、心も青そうな青年が毒づく。
目に宿る意志は強く、気が強そうだと何気なしに思った。
少しだけ悪戯心が沸いてくる。
塔にはここまで感情を露にする人はいない。
「青いお兄さん黙ってくれない?」
悪戯交じりに嫌味としか取れない台詞をルックは投げつけてやる。
「なっ」
青年は一気に赤くなって剣を持ち出した。
思ったような反応が返ってきて痛く満足した。
「おいフリック落ち着けって。所詮は餓鬼の戯れだろう」
図体だけがとりえそうな男がぽんぽんと肩を叩いて落ち着かせた。
ルックは人間に興味を持ち始め、周りをぐるりと観察する。
そこで見つけたのは、テッドの翼。
「あれ?」
突然の挙動不振な態度にビクトール、熊のような汗臭い大男が声をかけてきた。
「一体どうした」
「テッド」
ルックの消えるような声にファオがビクッと反応する。
「しっ。そのことでファオはショックを受けてるんだから口にするな」
がっルックの首に野太いビクトールの手が巻きついた。
「苦しいっ」
うめくような声を上げるとビクトールが慌てて手を離した。
ルックは苦しそうに数回堰をした。
「わりぃ」
ビクトールはばつが悪そうに謝った。
いつも用兵相手に絡んでいたから力加減ができていなかったらしい。
「大丈夫か」
そう問うたのはファオで僕の身長に合わせて屈んでくれたらしい。
きりりとしているが女っぽい顔だと思う。
ただ隣にいる熊のような男がいるからかもしれないがそう思う。
「平気」
ファオの顔が心配そうにゆがんだ。
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ふふっこのルックはビクトールが苦手なのさ。