今月の本 0412号 気温の周期と人間の歴史 原田常治著 今回、紹介する本は、地球の温度変化と歴史の関連を調べた本ですが、特に おもしろかったのは、その中に独立して入っている、日露戦争の実録記の章 です。
坂の上の雲と読み比べるとよりおもしろく読めます。日露戦争は、司馬さん の坂の上の雲が有名です。実際、とてもおもしろく読める本ですのでお勧め の本の一つです。司馬さんも、体験者への取材からいくつもの逸話を掘り起 こしてたいへんおもしろい話にしてあるのですが、この本の著者はまた別の 体験者に取材していますので、微妙に細部が変わっています。驚くような逸 話がいくつもあります。あるいみ、証言を聞いて過去の事象を再現する楽し みが味わえます。
上記2冊を読むと、いかに多くのことが日本に都合よく起きたかがわかりま す。太平洋戦争時に、神風を頼む気になったのも無理はないと思われるほど です。
しかし、より重要なことは、日露戦争時の当事者はだれも僥倖を頼みとせず に、合理的な判断で対応しようとしていたということでしょう。そのような 僥倖を頼まなかったからこそ、偶然おきた有利な現象を最大に利用すること ができたわけです。渡辺氏が「ドイツ参謀本部」の中で述べていますが、無 敵**と呼ばれるようになって負けなかった組織はありません。そのような 自覚を持つことこそが組織の腐敗を急速に進めてしまうからです。実際、軍 事大国や経済大国としての自覚を日本が持ってから、逆にその分野で破滅的 な行動をとっていることからして、もっと当時の合理的な行動態度に学ぶべ きことは多いのではないでしょうか?日清日露戦争当時の上層部は半分近く 負けを覚悟して、負ける確率を下げるために最大限の対処をしているように 思われます。ところが、第二次大戦の記録を読むと、負けることを想定して 行動していないように思われます。負けを予想した方もいますが、その負け の確率を少しでも下げる合理的な行動をとっているという感じではありませ ん。事態の方が急激に進んで、それに対処するだけで精一杯で、軍事大国の 実績があるからなんとかなるだろうとして政策が決められているという感じ です。そして、その状況は、バブル時の経済界でもおなじであったように思 われます。バブル期の経済力を、合理的な態度で扱うことができたら、どれ ほどのことができたでしょうか。(そのとき失った額は村上龍氏の「あの金 で何が買えたか」を読むとより実感できます。)もし、今後再び**大国と 呼ばれるようになったときは、そのような経験を生かしてもっと慎重に合理 的な判断で、全世界の為になる有益な行動をしてもらいたいものです。
それには、世論が正常であることが重要です。日清日露戦争当時は、新聞の 世論も戦争に反対するものが多く、現在の感覚と変わらない記事が多く観ら れます。ところが、戦争に勝つにつれて、世論の方が過激になっていき、そ のような記事はほとんどみられなくなります。そして自由闊達な議論という ものが無くなり、それ以外の意見を述べずらくなっていくようです。 奥尻島の地震以後、悲惨な現象が次々おきて被害者の数がどんどん増加し ていますがそのような現象に慣れてしまうと、よほど感覚を鋭敏に保ってな いと、とんでもないことを引き起こしてしまうことになってしまうと思われ ます。ですから、そういう感覚を得るためにもいろんな時代の本を読まれる ことをお勧めします。
さすがに、日露戦争についてはもう新しい証言は得られることはないでしょ う。しかし、まだ大正や昭和の出来事なら間に合うのですから、作家の方に は、なるべく早く、多様な証言を集めて、このような読みやすく知識もみに つく本として出してほしいものです。そうなれば、より世論も正常でいられ る期間が長くなるのではないでしょうか?
では、また来月に。
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