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Heaven? 伊賀×黒須 (2) by 伊賀フェチさん




       「伊賀君、まだ帰らないの〜?」
      明かりを落としたホールから川合が伊賀に尋ねた。
      「これだけ片づけたら帰るよ。」
      テーブルクロスをまとめながら、伊賀が顔を上げた。
      「手伝おうか?」川合が親切に言う。
      「いや、いいよ。後ちょっとだから。」やんわりとそれを断ると
      無造作に置いてあるテーブルクロスをバサッと広げて畳む。
      「そっか、じゃあ僕先に帰るね。」川合は笑顔で返すと、
      そのままロッカールームへ向かった。
       翌日のセッティングを川合と行い、いつもよりも時間がかかってしまったため
      シェフ達も、山縣や堤も今日は既に帰ってしまっていた。
      オーナーはディナータイムから見かけない。
      食事をせずに帰るなんて事は珍しいことだが、虫の居所の悪い日なんかは
      そのままマンションに帰ってしまうこともある。
      今日もおそらくそれだろう。
       最後のテーブルクロスを畳み終え、まとめ上げる。
      戸棚に入れ、一息つくとふと、疲労を覚える。
      コーヒーでも飲んでから帰ろうか・・・
      そう思い厨房に入り、コーヒーを入れる。
      シンクに寄りかかり、カップを傾けると、オーナーの部屋の扉に目が止まる。
       灯り・・・?
      扉からこぼれる黄色い灯り。
      そっと近づくと隙間から洩れる陰が時折揺れる。
      オーナー?まだいたのか?
       厨房に戻り、音を立てないようにもカップをもう一つ取り出す。
      熱いコーヒーを入れ、ソーサーに載せる。


      −コンコン・・・
      −沈黙。
      ノブを回し、そっと押し開く。
      「・・・オーナー?」
      存在はそこにあるのに、返事はない。
      
      「寝てらっしゃるんですか?」
      近づいてみると肩が微かに動いている。
      覗き込んでみると、机の上に乱雑に広げられた原稿用紙。
      その上を走るペン先。
      仕事か・・・邪魔をしないように帰ろうかと思った直後、
      黒須の手が止まり、パタリとその場にペンを置いた。
      
      「くぅ〜〜終わったぁぁ〜〜〜!」
      ぐっと天井へ腕を突き出し、背中を反り返らせた。
      「あの・・・オーナー?」再度声を掛けてみると
      「きゃっ−」黒須は肩をビクッとさせて振り返った。
      その瞬間、机の上の原稿がバサバサッと乾いた音を立ててまき散らされた。


      「な・・・なんだ・・・伊賀君まだいたの?」
      珍しく狼狽した表情の黒須は胸に手を当てて驚きを沈めようと必死だ。
      「オーナーこそ。仕事ですか?」
      コーヒーカップを散らかった机の上の隙間に置くと、
      まき散らされた原稿を拾い上げた。
      「ありがと。」原稿に手を伸ばしながら黒須は続けた。
      「夕方に傑作を思いついちゃったのよ!マンションに戻ったら
      忘れちゃいそうだったから、一気に書き上げようと思って!!
      これがまたすごいトリックで−」
      言いかけたところで、原稿の上で二人の指先が重なった。
      
      一瞬の沈黙が部屋を埋める。
      
      僕はそれを拾い上げると無言で原稿を黒須に預けた。
      
      何を照れてるんだ・・・僕は・・・子供でもあるまいし−
      
      「でね、すごいのよトリックが!絶対に解けないわよ!」
      照れ隠しなのか、無関心なだけなのか、
      原稿を揃えながら上機嫌の黒須はコーヒーカップに手を掛けた。
      時間の経ってしまったコーヒーに口を付けると
      ちょっと渋そうな表情に変わる。
      「冷めてる!入れ直してきて!」とコーヒーカップを伊賀の胸元に突き返す。
      
      ・・・相変わらずだ。
      
      半ば諦めかけた表情で、カップを受け取ると、無言のまま厨房へ戻る。


      熱いコーヒーを注ぎながらその深く黒い波紋を眺める。
      
      あの時、あの雨の日、黒須と特別な関係を持ってしまった時の記憶が
      伊賀の脳裏に焼き付いて離れない。
      いや、時間の経過に反比例して鮮明になる程の強い記憶。
      なのに、黒須の態度は翌日もそして次の日も何も変わっていなかった。
      傲慢さも、横柄さも、何も変わっていない。
       
       自分の記憶だけがこんなにの鮮烈なのに・・・彼女の記憶は
      あの日、あの時間だけ切り取られたんじゃないかと思うくらい・・・
      
      あの時の記憶のかけらを彼女の瞳の奧に探すことは出来なかった。
      だが元来クールな伊賀もその事実を表面に出すことなど出来なかった。
      
       自分だけが何事もなかったかのように装い、彼女の方は
      その事実すら存在しなかったように見える。
      それが少し悔しくもあり、そして切なくもあった。


      二人分のコーヒーを入れ直し、厨房を出ると黒須はテーブル席に移動していた。
      周囲の照明は落とされ、そこだけが薄明かりで照らされていた。
       「どうぞ−」黒須の前に入れ立てのコーヒーを置く。
      伊賀はカウンターに寄りかかり目を床に落とした。
      黒須はカップを口元に運びゆっくりと口をつけた。
      白い湯気越しに黒須の輪郭がぼやける・・・
      「うん。おいしいわね。」
      薄明かりのホールはそんな言葉をも吸い込み、ただ沈黙だけがそこに横たわる。
      
       何故そんな風に何事もなかったようにできるのか?
      あの日、あの共有した一瞬は嘘だったのか?
      ・・・今すぐにでも問いただしたい衝動に駆られる。
      伊賀は熱いコーヒーを喉に流し込みながら、その感情をも飲み込んだ。
      
      「この間のこと、気にしてるんでしょ?」
      沈黙を打ち破ったのは黒須だった。
       言葉の元を手繰るように顔をあげると、黒須の口元に笑みが称えられている。
       この間のこと・・・あの時のことを・・・
      黒須の記憶も消えていたわけではなかった。
      そのおかしな安堵感と、先程まで心の中で何度も繰り返していた問いかけが、
      そのまま自分に向けられている事の緊張感。
      
      「・・・いえ・・・別に・・・」
      伊賀は冷静を保ちながら壁に目を移した。
      本当は問いただしたい。けれど自分の中のプライドがそうさせない。


      「嘘よ。顔に書いてあるわよ。」
      口元の笑みは、余裕を蓄えている。
      黒須はカップをソーサーに戻し、指を組みながら言葉を続ける。
      「何で何も言ってこないのか?何で何事もなかったような態度を取るのか?
      そんなところじゃない?」淡々と言葉を並べる。
      
      その通りだ・・・的確すぎて何も返せない・・・
      みっともない・・・男のくせにこんな時、何も出来ない自分がもどかしい。
      
      カップをグッと握り直す・・・。
      「・・・そうです。・・・あの時の事・・・何もなかったように
      振る舞うんですね。」
       かろうじて出た言葉は今までに何度も唱えてきたはずなのに、
      かすれて自分の声に聞こえない。
      平静を装うためにコーヒーを流し込んだ。
      
      空気がピンと張りつめる・・・


      「・・・いや、別になかったことでもいいんです。
      ただ・・・申し訳なくて・・・」
      伊賀はカップの柄を指先でなぞり、壁を見つめたまま言った。
      オーナーという存在にあんな行動をしてしまった罪悪感。
      そして自分だけあんな・・・様々な罪悪感が絡まっている。
      
      「すいません・・・帰ります。」
      壁から目を外し、カウンターから腰を上げて厨房へ戻ろうとした。
      
      「ちょっと待ちなさいよ。」
      背後から黒須の声が投げられる。
      伊賀はその言葉を受け止めない、足が止まらない。
      情けない自分をどこかに隠したかった。
      
      「待ちなさいってば!逃げないでよ!」黒須が言葉を投げつける。
      
      『逃げる』・・・罵られるような言葉に反応する。
      振り返ると、黒須が側まで駆け寄っていた。
      「逃げてなんていません。・・・ただ僕は・・・」
      言葉が喉の奧で詰まっている・・・
      
      みっともない・・・これじゃいじけてる子供じゃないか・・・呆れる。
      伊賀は当惑した・・・
      
      黒須の瞳が伊賀を捉えて離さない。
      逃げることを許さない瞳の拘束。
      「この間のこと、後悔してるの?」黒須が問う。


      問いただされているのは僕の方か・・・
      
      オーナーに対してあのような行動を起こしてしまった罪悪感—
      愛する人から一方的になされてしまった事への罪悪感—
      そして行為後にも平静でいられる黒須への嫉妬—
      その反面、自分ばかりが感情に溺れているという焦り—
      感情の渦が、傷のように疼く・・・胸が痛い・・・
      
      「後悔なんて・・・」伊賀が呟く。
      まただ・・・これじゃ本当の子供だ。
      
      「後悔してないのなら、何故逃げるの?」
      黒須の瞳は執拗に問いつめる。
      
      「僕はただ・・・」
      重い呼吸と同時に言葉を吐き出す。
      伊賀が目を反らそうとした瞬間、黒須の指先が頬に触れた。
      胸がドクンと音を立てて躍動するのがわかる。
      温度を持ったその指先の滑らかさに心が乱される。
      その手を払うことも、握ることも出来ない。
      「ただ・・・何なの?」
      追求するように迫る黒く深い瞳に今にも吸い込まれそうだった。

      逃げ場を探そうとしてるのに、黒須の眼差しに足をとられ、
      目を反らすことすら出来ない。
      
      結局逃げようとするのか・・・卑怯な・・・
      
      黒須の指先を頬から外し、きつく握りしめた。
      込み上げる感情・・・
      
      「・・・あなたはあまりにも冷静でい過ぎます・・・だから・・・
      あの時、僕の一方的な感情で・・・あんな事をしてしまったのかと、
      僕はあなたを傷つけてしまったのかと・・・僕は・・・
      後悔なんてそんな・・・」
      呼吸が、感情が・・・乱れる。
      「後悔してるのはあなたじゃないですか?
      ・・・何もなかったことにしたいのなら、僕はそれで構わないんです。
      ・・・ただ・・・」
      
      怒りなのか、焦りなのか・・・嫉妬?何に?
      交錯する感情はまとまりを持たずに言葉となる・・・
      のどの奥からわき上がる言葉を理性ではもう制御できない−
      「ただ・・・僕は・・・自分だけがそんな感情に流されてたのかと
      思うと・・・」
      
      情けない・・・結局は自分の事しか考えてないじゃないか・・・
      吐き捨てた言葉をかき集めたかった。
      卑怯な自分を呪いたかった。
      
      感情に流されて出た言葉。正直な気持ちではあるけれど・・・


      黒須の指を強く握りすぎている事に気づき、そっと解放した。
      黒須は黙っている。先ほどまで見上げていた瞳はいつの間にか外され、
      伊賀を通り越してずっと遠くを見つめている。
      
      深く重い沈黙が横たわる。
      
      伊賀はまとわりつく沈黙をはらうかのように、
      パンッとタブリエを両手で叩いた。
      「いや、もういいんです。すみません・・・みっともないことを。」
      「・・・忘れてください。」今のことも、あの時のことも・・・
      伊賀は目の前で立ちつくす黒須の脇をすり抜けようとした。
      
      その瞬間、腕を掴まれた。
      
      「待ちなさいよ・・・」
      強い瞳がじっと僕を捉える。
      「随分一方的にまくし立てるのね。後悔?あたしが後悔なんて
      すると思うの?」
      詰め寄る瞳。
      
      いつも行き当たりばったりの彼女の行動。
      振り回されるのは僕らだが、彼女の後悔してる姿を見たことがない。
      ・・・いつも前だけを見てる。
      「いえ・・・」
      
      「あたしはね、自分の感情通りにしか動かないのよ!
      後悔なんてしないわ!・・・この間のことだって・・・」
      いつの間にか黒須から余裕の笑みは消えていた。
      
      「オーナー・・・」戸惑いながら黒須の瞳を覗く・・・


      黒須の瞳が僕の心を掴む。
      
      「冷静過ぎるのは伊賀君じゃない!?一方的な感情?
      あたしにだって感情くらいあるわ。あの時・・・分からなかったの?」
      訴えるような瞳が、灯りの抑えられたホールの中でも、
      潤んでいるのがわかる。
      「罪悪感ですって!?ふざけないでよ!そんなモノ余計なお世話よ!
      誰が・・・好きでもない男にあんな事出来るもんですか!」
      堰を切ったように発せられる言葉に伊賀は驚いた。
      こんな感情的な黒須は初めてだ。
      
      張りつめた空気が割れ、氷の破片のように体に刺さる・・・
      
      それでも瞳は、じっと伊賀の目を捉えて離さない。
      潤んだ瞳から頬を伝う一筋の涙。
      
      ・・・またこんな・・・彼女を傷つけている・・・
      涙に戸惑いながらも伊賀はじっと黒須を見つめることしかできなかった。
      
      涙の滴が床に落ちる。
      それでも必死に瞳は強さを誇示し続けていた。
      そんな強さに胸が射抜かれた。
      伊賀はプライドを振り払い、黒須の肩をぐっと引き寄せた。
      
      「すみません・・・ただ僕は・・・」
      涙を拭う言葉を知らない。
      震える肩を暖める術を知らない。
      抱きしめる事しかできない・・・
      薄い肩、細い腕・・・必死で虚勢を張る黒須を愛おしく感じた・・・


      首筋に感じる涙の温もりと濡れた吐息
      腰に回した腕に力を込める。それに呼応されるかのように
      黒須の腕は伊賀の背中をシャツ越しに掴む。
      頬を引き寄せあい、涙で触れた頬の感触を互いに感じながら、
      子供同士のように擦りあう。
      そうすれば互いの絡まった『誤解』が解けるのではないかと思えた・・・
      伊賀は必死に黒須を抱き寄せていた。
      どのくらいの時間が過ぎたのだろう。
      涙が乾くまでの間二人は無言で抱き合っていた。
      
      「ふふ・・・」黒須が目頭を拭いながら小さく笑った。
      「・・・何です?」頬をすり合わせたまま耳元で問う。
      「伊賀君・・・慣れてないのね・・・こういうの・・・」
      黒須はそう言うと、すっと伊賀の眼鏡を外した・・・
      伊賀とて、男女の駆け引きくらい知らないはずはない。
      けれど黒須を前にすると急にそんな経験は萎縮されてしまう。
      「すみませ−」伊賀が言い終えないうちに
      キュッと黒須が体を寄せ、肩に顔を載せた・・・
      頬の柔らかな温もりを感じる。
      そのまま頬を滑らせ、どちらともなくそっと唇を重ねた。
      ・・・互いの呼吸が唇に触れる。


      そっと唇を外し、額をすり合わせながら視線を絡ませると、
      上目遣いに甘えるような黒い瞳がそこにあった。
      シャツを掴む黒須の腕に力がこもる。
      伊賀は再び強く唇を押しつけた。
      
      感情の高波に襲われる。
      『・・・愛してるんだ・・・僕は彼女のことを・・・』
      恋愛感情なんてずっと殺してきた。
      けれど無意識に芽生えた想いがこんなにも大きくなり、
      そして今更気づくなんて・・・
      いや、気づかないふりをしてきただけなのかもしれない。
      もうこの想いを無視することはできない。
      この海で・・・溺れてもいい・・・。
      
      伊賀は執拗に唇を求め、半ば強引に舌先を押し入れた。
      「んっ・・・」拒む様子もなく受け入れる黒須の唇。
      舌先を自らの口腔内に引き寄せ、螺旋を描くように絡ませる。
      二人の吐息はホールの静寂を乱していた。


      先ほどまで互いを責め立てあった口先が、今はこんなにも愛おしい。
      
      舌先を解放してやると、何度も唇を優しくついばみ、
      頬に、瞼にとキスの雨を降らす。
      持てあました黒須の唇が『求めている』のがわかる・・・
      けれど、伊賀はそのまま鼻先や額に唇を押しつける。
      
      痺れを切らし、黒須が腕を背中から外し
      キスをせがむように首に腕を絡めた。
      伊賀はそれに応えるかのように唇を深く重ねる。
      「ぅん・・・っ」どちらともなく唇の隙間から吐息が漏れる。
      黒須の舌先が滑り込む・・・それを手繰るようにして丁寧に舌先で撫でる。
      絡まる舌先の動きが波紋のように背筋を伝い、
      爪先から髪の先まで刺激を伝播する。
      滑らかな舌を甘噛みするたびに黒須は膝を震わせ、
      今にも崩れ落ちてしまいそうだ。
      それでも必死で自分の首にしがみついてくる黒須が、
      なんだか子供のようで、可愛らしい・・・
      
      伊賀は丹念に唇を愛すと、そのまま頬から耳元へと唇を滑らせ、
      耳朶をゆっくりと柔らかく包み込む。
      舌先で何度も耳朶や軟骨の輪郭をなぞり、
      鼓膜の奧にわざと水音を響かせ、聴覚を刺激する・・・
      「ん・・・ふぁ・・・」黒須は苦しそうに濡れた吐息を漏らす


 
      首に掛かった黒須の腕が震えている。
      先刻まで必死に襟元を掴んでいた指先が小刻みに伊賀のうなじを這う。
      その指先の動きが伊賀の心を乱すとも知らずに・・・
      「ぁ・・・んっ」時折洩れる切なげな吐息が伊賀の耳元を撫でる。
      
      それでも伊賀は愛撫をやめない。
      
      もっと聞かせて欲しい・・・甘く切ない声を・・・吐息を・・・
      それがあなたの感情を確信させてくれるから・・・。
      高鳴る鼓動・・・愛おしさが胸を締め付ける。
      
      伊賀は耳たぶを愛撫したまま、黒須を抱く腕を胸元へ滑らせる。
      なだらかなラインにそってその柔らかさを確かめるように・・・
      「んん・・・っ」押し込めていた喘ぎを吐き出すかのように、
      黒須の躰が一瞬しなる。その直後膝の力が抜け、崩れ落ちそうになった。
      
      伊賀に腰を支えられながらゆっくりとフロアに沈む・・・


      伊賀は黒須を組み敷くように、フロアに寝かせると、
      唇を黒須から離し、腕をついて距離を保った。
      黒須の結い上げた髪は既に崩れ、フロアの上に幾本もの川を作っていた。
      瞳を閉じ、吐息を漏らしながら指先だけは必死で伊賀の袖を掴んでいた。
      そっと顔を寄せると、互いの髪が触れ合い、
      なんだか感情までもがくすぐられてるようだ・・・
      
      再びゆっくりと唇を重ねる。
      互いを噛み合うように・・・味わうように・・・
      何度も唇を触れ合わせ、舌先を繋げた。
      「ん・・・はぁ・・・」
      時折洩れる吐息も全て漏らさないようにと、
      二人は互いの呼吸をも吸い尽くすように深く唇をあわせた。
      
      ・・・酸素なんていらない・・・窒息してもいい・・・
      そして深く、永いくちづけ・・・。



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