「キラ、ほら口開けて」
「やだ」
「〜〜〜〜〜〜キ〜ラ〜」
さっきから何度この問答が続いているだろう。
キラは差し出された食事を頑なに拒否し続けた。
正確には食事の一部、を。
「ちゃんと野菜食べなきゃ治りが遅くなるだろう!」
「遅くなったっていいもん!」
「いいわけあるか!毎晩うなされて俺のこと呼ぶくせに!お陰で俺は毎晩寝不足なんだよ!」
そう言って無理矢理口の中に乾燥セロリを押し込むと、
「んっ・・・」
「ほら噛んで」
「・・っ・・・うぇ・・・」
「飲み込んで」
「・・・っっ(ごっくん)」
「はいよくできました」
空になった容器を重ねてゴミ箱へ捨ててからキラの隣へ座ると、
まだ苦さの余韻が残っているのか、顔を顰めたままのキラを見つめる。
「・・・・・・うぇ」
「・・・吐くなよ?」
呆れたように呻いて、窓の外へ目を向ける。
静かな時が部屋を包む。
懐かしい、あの頃の雰囲気。
「ねぇ、アスラン」
「ん?」
呼ばれて顔を上げると、キラが寝台の上からこちらを見ていた。
その表情に思わずドキリとする。
キラはゆっくりと這うようにこちらに近付くと、静かに言った。
「タイムマシーンが欲しい」
「は?」
アスランが素っ頓狂な声をあげると、
キラは寝台の上にごろんと横になって天井を見つめた。
「・・・確かお前昔も同じようなこと言ってたよな」
「うん・・・」
視線は天井のまま、キラが小さく呟いた。
「あの頃は早く大きくなりたいって思ってて
今はあの頃に戻りたいなんて・・・僕は我が侭だね」
”あの頃に戻りたい”
聞き間違いでなければキラは今確かにそう言った。
「・・・人間なんてそんなもんだろ」
やや送れて応えてから、アスランは沈黙した。
キラと同じように寝台に横になり、天井を見つめる。
(・・・戻れるさ。お前さえ・・・お前さえ戻ってくれば)
だがそれを口にすることは出来なかった。
やがて、
「あーあ」
キラは大きな溜息を吐くと、
「助けてードザえもーん」
「・・・・・・」
「・・・何?」
アスランの冷ややかな視線を受けたキラが顔を横に向ける。
それを無言で見つめ返し、アスランは呻いた。
「木星探査SAS・・・」
「あっ、見てくれたの!?」
「お前が意味深なこと言って帰るからだ!」
「あはは」
あの頃のままの、笑顔で。
君が、笑う。




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