綺麗なお兄さんは好きですか?(前)

 
パプワ島の朝は早い。
文明とかけ離れた孤島だから、太陽が沈めば寝て太陽が昇れば起きるという生活サイクルになっている。
文明にドロドロに侵され完全に夜型だったリキッドは最初こそ戸惑ったものの、今ではすっかりそんな生活に慣れた。
最近は特に、俺様姑が増えてからというもの誰よりも早く目を覚ますようになった。
うっかり寝過ごして惰眠を貪ったりしてしまうと、シンタローからの鉄拳が落ちてくるのだ。
ガンマ団ナンバーワンの名を欲しいままにしてきた、現ガンマ団総帥の鉄拳はかなり強烈だから出来ればご遠慮申し上げたい。
なので日の出と共にパッチリと目覚めるようになった。
リキッドは布団の中で大きく伸びをして眠気を吹き飛ばすと、むくりと起き上がった。
横ではまだ子供と犬が寝息を立てている。
その反対横にいる俺様総帥もまだ起きている様子はない。
とりあえず朝飯の準備だとリキッドは自分の布団をたたみ、その音で2人と1匹が目覚めたりしていないのを確かめようと視線を送った。
「・・・え?」
リキッドの体がピキリと固まる。
シンタローだと信じて疑わなかった人物はどうみてもシンタローではなかったのだ。
床に広がる長い黒髪は同じだが、どうみてもシンタローではない。
というか、男ですらない。
ほっそりした体に、膨らんだ胸。柔らかい弧を描く腰と、すらりと伸びた足。
スヤスヤと寝息を立てている顔は小さく白い。そして長い睫と紅い唇。
どこからみても女だ。それも相当な美人。
「だ、誰・・・?」
シンタローが女を連れ込んだのかとも思ったが、この島にウマ子以外の人間の女がいるのを見たことはない。
今までもガンマ団員だの、心戦組だの、色々な人間がこの島に上陸したから、また誰かが来たのかとも考えたが、次元移動する今のパプワ島に来れるのは不可能に近い。
ということは、夜の間に新しい場所に移動していて、そこの住人が潜り込んできたのだろうか。
だが、それもやっぱり有りえない状況だ。第一シンタローはどこにいったんだ。
ようやくシンタローの不在に気がついたリキッドはキョロキョロと辺りを見回すが、勿論どこにもいない。
とにかくこの女性を起して、理由を聞くのが一番早い。
そういう結論に至ったリキッドは足を忍ばせて女性の横に移動した。
「あの」
なんと声をかけていいのかわからない。
「すみません、起きてもらえませんか」
今度は声を少し大きくして話しかけるが、もちろんそんなものでは女性は起きるはずもなく。
「あの、起きてください」
細い肩を軽く揺すると、女性はウーンと呻いてゴロリと転がった。
その途端、男用を着込んでいるのか大きめのタンクトップの横から、白く柔らかそうな胸がはみだしリキッドの視界に飛び込んできた。
「うわーーーーーーーーーーー!!!!!(/////)」
思わず目を背けながら、大声で叫んでしまったリキッドである。
「なんだ?」
「わう?」
目を擦りながらパプワとチャッピーがムクリと起き上がる。
「うっせーぞ、リキッド!朝っぱらから耳元で叫ぶんじゃねぇ!!!」
聞きなれない女の声が、聞きなれた乱暴な言葉を吐く。
そしてリキッドの顔面に強烈な威力をもつ拳がヒットした。




「この胸、この尻。俺の体じゃなきゃ、理想のプロポーションなんだけどなぁ」
右往左往の大騒ぎが一段落ついたあと、シンタローがしみじみと言った。
「や、やめてくださいよ、シンタローさん」
「なんだよ、理想を理想と言ってなにが悪い」
「そうじゃなくって!!!」
リキッドは顔を背け、そのうえ前方に両手を突き出してシンタローが視界に入らないようにしている。
なぜならば、グラマラスな美人が自分の胸を揉み揉みしているからだ。
それがシンタローだとわかっていても体は女性。
この数年、女性との接触皆無(ウマ子はUMAなので対象外)なリキッドにとっては刺激が強すぎた。
「・・・なんだよ、初心だなぁ」
ハッハッハ、と楽しそうにシンタローが笑う。
からかわれることは悔しいがリキッドには反撃する余裕はなかった。
「とにかくこれを着てください!」
バサバサとシンタローの総帥服を投げやる。
「なんでだよ、こんな服、あちいだろうが」
「じゃ、なんでもいいからもっと着てくださいっ」
「だからなんで」
「す、透けてるんですってば!!」
叫びながら自分とシンタローの替え用の赤や白のタンクトップを投げつける。
頭からバサバサ服を投げつけられてムッとしはじめていたシンタローだったが、その言葉を聞いて自分の胸に視線を落とした。
確かに。
体が幾分小さくなった分、大きいタンクトップから今にもこぼれそうな豊満な胸の先端が白いシャツに透けてみえる。
「いいじゃねぇか、男同士だろ」
「アンタのどこが男だ!とにかくとっとと着てください!」
必死なリキッドの様子にシンタローは大きくため息をつくと、白いタンクトップの上に色的にも透けなさそうなリキッドの赤いタンクトップを重ねて着た。
「ちゃんと洗濯してるんだろうな」
ブツブツ呟きながら鼻をスンと鳴らす音が聞こえて、リキッドはようやくシンタローに視線を戻そうとしたのだが。
「うっ」
わかっている。どんな姿をしていてもシンタローはシンタローだ。
十分わかっているのだが、今そこにいるのはいつもの筋肉隆々な192センチの男ではないのだ。
身長も縮んで、筋肉も落ちて、その代わり胸と腰に豊満な脂肪がついている、ナイスバディーな女体なのだ。
そんな美人が自分の服をブカブカと着ている。
男のロマン、夢の光景だ。
中身がシンタローだということを差し引いても、男としては鼻血ものの光景である。
だが鼻血ひとつ吹こうものなら変態のレッテルを貼られて眼魔砲の餌食になることは確実。
とにかく数字でも数えて気を紛らわせて落ち着こうと、苦手な6の段の掛算をブツブツと暗礁しはじめた。
「シンタローはホントは女だったのか」
大人ふたりの大騒ぎする姿を傍目から無言で観察していたパプワが、ようやく口を開いた。
とりあえず騒ぎが収まるのをんばば踊りをしながら待っていたらしい。
「んなわけあるか」
シンタローは呆れて馬鹿にしたような口調で答えた。
「・・・チャッピー、餌」
ガブリと齧られて血を吹き出しながらシンタローが叫ぶ。
「うわーーーー!!ごめんなさーい、俺にもさっぱりわかんねーんだよーーー!!」
リキッドと違ってパプワは性別でシンタローの扱いを変えるつもりはないらしい。
頭から流れる血を拭いながらシンタローはチャッピーを抱いてドカリと床に座った。
女性になってもタフなままだ。
「この体は元はチンの体で赤玉が作ったもんだからなぁ・・・変なトラップが仕掛けてあったのかな」
トラップなんて仕掛けてどうする。
そんな突っ込みをするものはここにはいないからそのままスルーされる。
「青玉の悪ふざけってことはないんですかね」
最近の青玉の言動からいくとあり得ないことではない。
「あ、あのバカッ玉ならやりそうかもな」
今ここにない赤玉より、あの青玉の方が犯人に近い。
変に納得したシンタローが相槌をうった途端、腕の中のチャッピーがその手に齧りついた。

 
 
 
 

 
■なかがき■

シンタロー女体化です。
苦手な方すみません(平伏)
でもカップリング要素はありませんので大丈夫ですv<ナニガ?

シンタローは女体化しても
格好いいままでなーんにも変わらないんだろうなぁ
と思ったので、女体化させてみました。
ま、代わりにリキッドが振り回されてますが(笑)







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