綺麗なお兄さんは好きですか?(中)

 
「いってーーー!!!!」
ブンブンと手を振ってチャッピーを投げ飛ばす。
空を飛んだチャッピーは上手にパプワの手の中に片足を乗せてセンスを広げた。
『そんな面白いことするか、このバカ総帥』
「またチャッピーに青い秘石が乗り移ったぞ」
手から血を吹き出させながら右に左に駆け回っていたシンタローだったが、「うるさい」のパプワの一言のあと床に沈められた。
「パプワ、いくらシンタローさんでも女の人に暴力をふるっちゃ駄目だ」
リキッドから教育的指導がはいる。
「そうなのか?」
「そうだよ、女の人は男よりか弱くできてるんだから男が暴力ふるうのは絶対駄目だ」
「ウマ子はどうなんだ」
「あれは人外生物!」
「そうか・・・シンタロー、悪かったな」
床に沈んだシンタローの頭をちいさい手が撫で撫でした。
俺は男だ、と反論したかったシンタローだったが、対象が自分だということを横に置いておけばリキッドの言っていることは正しい。
パプワは人間の大人の男には会ったことがあるが、大人の女に会ったのははじめてなのだろう。(ウマ子は対象外)
それならば、その扱いの違いは大人として教えておかなければならない。
特にパプワのようなパワフルなお子様なら尚更だ。
それにこれ以上、暴力を振るわれないのなら今は女扱いされても我慢しておくのが懸命だ。
筋力の落ちた女の体はさすがにいつもの男の体のときのようにはいかない。
表には出さないが意外とダメージが大きいのだ。
「じゃあ、いったいなにが・・・」
リキッドが言いかけたときに、パプワハウスのドアがバタンと音を立てて開いた。
「グッモーニーン、パプワくん」
「シンタローさん、お元気〜v」
Wナマモノの登場である。
「おお、イトウ君、タンノ君」
「おっす」
パプワとリキッドは反応したが、シンタローは嫌そうに眉を顰めて完全に無視を決め込む。
「あーら、この方どなた?」
イトウがヌルヌルと見知らぬ女に近づいてくる。
「ま、この男所帯のパプワハウスに女の人がいるなんて」
タンノが編みタイツを履いた足をバタバタさせながら女に近寄る。
「まさかっ!」
「なになにタンノちゃん?」
「リキッドのお嫁さん!?」
「んなわけあるかっ!」
シンタローの掌から溜めなし眼魔砲がナマモノに向かって撃ちだされた。
気がつかれないなら黙っていてもいいと思っていたシンタローだったが、リキッドのお嫁さんなんていう気持ち悪いポジションは御免被る。
それくらいだったら性転換したということをバラした方がマシだ。
「・・・眼・・・魔砲・・」
「ま、さか・・・シンタロー・・・さんなのぉ」
血をダラダラ流しピクピクしながらもナマモノたちは女の正体に気がついたようだ。
同時にシンタローもあることに気がついた。
いつも問答無用でアタックを仕掛けてくるナマモノであるが、女になったと聞いたらさすがに諦めるだろう。
いつまで女体のままなのか今のところ不明だが、このナマモノどもを遠ざける絶好のチャンスだ。
「そうだ、シンタローだ」
「なんでシンタローさん、女の人なんかにっ」
「そうよ、私たちどうしたらいいの〜〜」
完全復活を果たしたタフなナマモノたちはシンタローの周りにまとわりつく。
「残念だったな。男じゃねぇ俺に用はないだろ。もう二度と俺にまとわりつくな」
ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべシンタローはナマモノ2匹を両手で押し返した。
滂沱の涙を流してヨヨヨと泣き崩れたイトウとタンノ。
勝った!
これでようやくこのウザイナマモノたちと縁が切れる。
女になってよかったとはじめて思った瞬間だった。
が。
「私たちの愛が試されてるのね・・・」
「シンタローさん、甘いわよ」
先に立ち直ったのはイトウだった。
ヌメヌメと近寄って、いつものようにでかい舌でベロリとシンタローを舐めあげる。
「うわっ」
「シンタローさん、お忘れのようですけど」
「な、なんだよ」
「ワタシは雌雄同体のカタツムリ。性別の垣根は存在しないのよーーーー!」
ガバリと抱きつかれてシンタローはアワアワと暴れる。
その横にスクッとタンノが立ち上がった。
「シンタローさん」
「なんだっ」
「ワタシ、シンタローさんのためなら・・・」
いつもの甲高い声が突然変調し低くなる。
「男に戻ってもイイーーーーー!!!」
「うっわーーーーーーーー!!!」
イトウとタンノに抱きつかれたシンタローは、女の身の力のなさをしみじみと実感した。
いつもなら簡単に殴り飛ばせるのになかなかうまくいかないのだ。
女の身だからこその身の危険を感じて、ようやくシンタローは眼魔砲をナマモノに向けて撃ち込んだ。
「イッてこーーーーーーいっ!!!」
パプワハウスの天井に穴をあけ、ナマモノ2匹が遠くの空へ飛んでいく。
「ハアハア」
シンタローは肩で息をしながらがくりと床に膝をついた。
この島にいてこんなに貞操の危機を感じたことはなかった。
そう思った瞬間、あることに気づきゾクリと悪寒が背筋を駆け抜ける。
そういえば。今は家政婦で甘ったれのリキッドだが、これでも元特戦部隊の一員だ。
ナマモノどもにさえ負けそうな今の腕力では、完全にリキッドに負ける。
さっきのリキッドの態度をみても、女日照りで今までいたことに間違いはない。
まさかとは思うがリキッドが妙な気を起こしでもしたら・・・貞操なんてないも同然。
「うをーーー!どうしたら男に戻れるんだーーー!?」
突然錯乱をはじめたシンタローの肩にパプワが飛び乗る。
「落ち着かんか、大の男がみっともない」
「今はオンナだからいいんだっ」
子供に対してわけのわからない言い訳をしつつも、よしよしと頭を撫でられたシンタローはその感触にようやく落ち着きを取り戻した。
「大丈夫っすか、シンタローさん」
「近寄んな」
ジロリと睨み上げてくるシンタローに「俺なにかしたか?」とタジタジなリキッド。
まさかシンタローがそこまで筋力が落ちていることも、それに類してとんでもない警戒をしていることも、知らないリキッドにはいい迷惑である。
「秘石の仕業じゃないならテヅカくんが作った薬かもしれんな」
パプワの言葉に「それだ!」とばかりにリキッドが反応した。
「テヅカくんなら作れそうだ!」
「テヅカ?テヅカってこうもりのか?」
「そうだぞ、名古屋ウィローから魔法薬の作り方を教わって、今は魔法薬屋を開いてるんだ」
「へーー」
シンタローはパプワの説明を感心気に聞いていたが、すぐに不審に思う。
「でもなんでテヅカくんが俺に一服盛る必要があるんだ?」
「作ったのはテヅカくんかもしれんが一服したのは別の誰かだ。テヅカくんに聞けばすぐに犯人がわかるぞー」
「そうだな」
光明の光りがみえたそのとき。
コンコン、とドアを叩く音が聞こえた。

 
 
 
 

 







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