■ルパン三世DE桃太郎 (前編)■
 
 
 
 

 
あるところに。
ルパンと五右エ門というふたりの男が住んでいました。
ある日のこと。
ルパンは町へナンパしに、五右エ門は山へ修行に行きました。

「あやつの女好きにも困ったものだ」
次の仕事の情報収集とは言ってましたが、本当の目的はナンパに違いないのです。
それがルパンのチャームポイント(え?)とはいえ毎度のことに五右エ門は呆れ気味でした。
そんな五右エ門も、ルパンが自分の修行三昧な日々を呆れ気味であることを知っていて、まあお互い様だと思っていたので、被害をこうむらなければ口出しをすることはありませんでした。

山での修行を終えた五右エ門が汗まみれになった体を川で洗っていると、上流から何かが流れてくるのが目に入りました。
「なんだ?」
一瞬剣を構えた五右エ門でしたが、それが桃であることに気がついて肩の力を抜きました。
「それにしてもなぜ桃などが」
どんぶらこっこ、と流れてくる桃を訝しげに眺めていた五右エ門でしたが、暫くすると驚きの表情を浮かべました。
桃の大きさが尋常ではなかったのです。
時間をかけて五右エ門のところまで流れ着いた桃は、なんと高さが彼の腰くらいまであります。
「面妖な。物の怪の類か」
そう思ったものの、これだけの巨大な桃。
侍が見逃せるはずはありません。
「えいやーーー!!」
気合のこもった叫びを発して、五右エ門はその桃を真っ二つに斬り捨てたのでした。
ザンッ!
と水音をたてふたつに割れた桃。
果肉がつまっているか、はたまた空洞か、それとも何かに化けるかと桃をみつめていた五右エ門の目が再び驚きに見開かれました。
「てめー、いきなり何しやがるんだ!危ねぇじゃねぇか!?」
割れた桃の中から男が立ち上がりました。
子供ではありません。成人した顎鬚を生やした目つきの鋭い男です。
「おぬし、何者だ!」
誰何して刀を構えた五右エ門でしたが、相手が丸腰・・・どころか全裸なのをみて構えをときました。
武器も持たない相手を斬りつけるような真似をするタイプではないのです。
「勝手に桃を斬っておいて、俺を不審者扱いかよ」
ケッと唾を吐く怒り気味な男の様子をみて、五右エ門は己の行いを省みてみました。
確かに巨大桃は不審のカタマリでしたが、だからといってそれが勝手に斬っていい理由にはなりません。
そう考えてみると己に非があるように思えます。
そのうえ一歩間違えば桃と一緒に真っ二つになっていたのですから、男が怒っても仕方がないのです。
「すまぬ」
五右エ門は素直に謝りました。
そんな五右エ門をみて、男の怒りは削がれたようです。
不思議そうな、吟味するような視線で、じろじろと五右エ門を眺めたあと、男は怒りを完全に消してニコリと笑いました。
笑うとなかなか愛嬌がよさそうな男です。
例えていうなら、ガウガウと吼えていた番犬が警戒をといてクンクンと匂いを嗅いできた感じでしょうか。<わかりづらい
「お前の家はどこだ?」
「なに?」
突然の問いに五右エ門は目をパチクリとしました。
「お前が俺を拾ったんだぜ?ちゃんと面倒みてもらうからな」
勝手な言い分に呆れて物が言えません。
「桃から出たのはいいが全裸じゃただの変質者だ。とにかく家へ連れて帰れよ」
確かにこのままじゃ、この男はただの露出症の変態です。
それにどんなに言い訳しようと、桃を勝手に斬って男を外に出したのは五右エ門なのです。
このまま放置することも出来ないと、案外人のいい五右エ門は小さく溜息をついて男を家に連れて帰ったのでした。


「なにそれ?」
ナンパはうまくいかなかったのか、珍しく早く帰っていたルパンが目を丸くして五右エ門の後ろにいる男を指差しました。
「ま、色々あってな」
疲れたような表情を浮かべ、男を従えて五右エ門が家に入ります。
見知らぬ全裸の男。
濡れて着崩れた格好の五右エ門。
「五右エ門、おまえ、そいつに襲われたのか!?」
「は?襲われ?」
ルパンは駆け寄ると、言われた意味がわかっていない五右エ門を自分の背に隠しました。
そんな様子をじっと眺めたあと、男は自分を睨みつけるルパンに問いかけました。
「お前ら、男夫婦か?」
「なっ?!俺様は自他共に認める女好きだ!俺たちは仕事仲間!」
「の割りに過保護だな」
ふたりの会話の意味がいまいちわからない天然侍は、とりあえず男の相手をルパンに任せて、服をとりに奥へ入っていきました。
「で、お前・・・なに?」
「なに、って言われてもなぁ」
嘯く男に、戻ってきた五右エ門がタオルと服を渡しました。
「俺は黒い服しか着ねぇんだが」
「黒い服などない。文句言うな!」
ブツブツ言いながら着替え始めた男の横で、五右エ門はルパンに事の次第を説明しました。
「ふーん。桃を斬ったらねぇ」
「すまぬ、変なものを拾ってしまった」
話を聞きながらジロジロと男を眺めていたルパンでしたが、突然ニヤリと笑いました。
「じゃ、お前は桃から生まれたから名前は『桃太郎』ね」
「なんだ、そのセンスのねぇ名前は。それに俺には『次元』っていう立派な名前がある!」
速攻拒否して男は自分の名前を名乗りました。
「・・・次元・・・ね」
ルパンの目が薄く細まり口元が意味ありげに笑いの形に歪みます。
その表情をみて次元の眉間に微かに皺が寄りました。
「おぬし、次元というのか」
「ああ」
次元の視線がルパンから五右エ門へと移りました。
「拙者の名は五右エ門、こやつはルパンだ」
なんの含みもなく、裏もない表情と声で名を名乗る五右エ門をみて、次元の表情が和らぎます。
出会ってから今までの間の侍の言動はいたって素直で好感が持てるのです。
それところがそんな調子で大丈夫なのか、変な奴に騙されるんじゃないだろうか、と心配になるくらいです。
自分こそ『変な奴』である自覚のある次元でしたが、侍への好意は自然と次元の目を優しい色に変えました。
「ま、当分世話になるぜ。よろしくな」
家主の許可も受けず、まるで決定事項であるかのように宣言して、次元はふたりに向かってニヤリと笑ったのでした。
 
 
 
 
 

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■PEACH GUY IS JIGEN■
   

    
 
 
   
 ■なかがき■
3月3日なので『雛祭り』ネタ。

さて、どこが『雛祭り』ネタなのかというと。
3月3日→雛祭り→桃の節句→桃→桃太郎
という、強引5段論法より無理矢理導き出した、というより
無理矢理『雛祭り』ネタだと管理人が言い張っているだけのものです。

つうことで、昔話『桃太郎』パラレルでございます。
とはいえ、3日までに書きあがらなかったのでとりあえずココまで。
後半は2〜3日中にはアップします。
請う、無期待!<イヤ、マジで


 
 

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