■ちちゃフロ物語(6)■
 
 
 
「なるほど、話はよくわかりました」
レゴラスはゆっくりとした口調で言った。
「つまり、スケベじじいのモルドールの王サウロンがパランティアを覗いてみつけたフロドに
 邪まな気持ちを抱いて婚姻を強制している、ということですね?」
「まあ、そう言ってしまうとみもふたもないがな」
「そしてその妄執に近い恋慕を跳ね返すには、ヤツの怨念の宿った指輪を滅びの山へ捨て去るしかないと」

まわりをぐるりと見渡してひとりひとりの顔をみたあとに、
レゴラスはフロドに視線を止めてニッコリと微笑んだ。

「では、私がフロドと共に指輪を葬り去りに行きましょう」

は?
そんな疑問符が全員の頭の天辺に浮かんだ。
レゴラスの言ったことが理解できず一瞬、場が静まりかえる。
しかし、その内容がようやくわかった瞬間に口々に反論が飛び出した。

「なぜ、あんたが行く必要がある」
「そうですだ、レゴラスさんはさっきフロド様と会ったばかりじゃないですか」
「レゴラス、何を急に言い出すのじゃ」

詰め寄るアラゴルンとサムを冷静に見つめるとレゴラスは余裕の笑みを浮かべた。

「よく考えてごらんなさい」
「なにをだ!」
「秘密裏に指輪を捨てに行くのに団体で行っては見つけてくれ、と言っているようなもの。
 少数人数で行くのがベストでしょう。指輪の保持者のフロドは嫌でも行かなくてはいけない。
 だが、共にいくのはひとりが一番いい。」

レゴラスは視線を下げサムをみた。

「サム、貴方が行きますか?貴方がモルドールへ行けますか?
 ホビット庄を出たことのない平和な日々を送って来た貴方に過酷な旅が耐えられるかな?
 第一、ホビットは体が小さい。私達と比べて体力的にも無理があるでしょう?」

ぐっ、とサムは詰まる。
この裂け谷に来るのすら精一杯だった。
アラゴルンがいなければ辿りつくことは出来なかっただろう。
今までの旅以上に困難な旅を誰の庇護も受けずにすることは自分には出来ない。
レゴラスは視線をあげると少し離れた場所に座るガンダルフをみた。

「ガンダルフ、貴方が行かれますか?それこそ問題外ですよね。
 指輪の呪いが解けたことを既にサウロン達は知っているでしょう。
 そして誰がその呪いを解いたかということも。中つ国に住む魔法使いは少ない。
 解呪された時点でホビットと繋がりが深い貴方の仕業であることはすぐに知れているはず。
 その貴方がモルドールへ旅立てば、疑ってくれと言っているようなものです。」

ガンダルフは何も応えなかったが眉間の皺を益々深くさせた。
それは言われなくともわかっていることだった。
だからこそ、この裂け谷にフロドを連れてくることを自分ではせず、サムとアラゴルンに任せたのだ。

「では、私が行こう。私は体力もあるし地理にも詳しい。戦うことも出来る。問題はないだろう?」
「おおありですよ」
「なに?」

自分の何が問題なのか不満げなアラゴルンをみつめて、レゴラスはふんと鼻で笑った。

「アラゴルン、前々から言ってますが」
「なんだ」
「貴方、汚な過ぎますよ。野伏か何かは知りませんがもう少し清潔に出来ないのですか。
 そんな汚らしい懐にフロドを入れて旅をする気?モルドールに辿り着く前に窒息死しかねない」

アラゴルンが幼い頃から知っていて付き合いが長いだけあって、誰に対してよりも内容は辛辣だ。
微かに顔を赤らめて反論しようとしたアラゴルンを片手で制する。

「地理に詳しいと言ってたけど滅びの山には行った事ないでしょう?」
「当たり前だ」

モルドールという国はほぼ閉鎖されている。
簡単に用件もなくホイホイと行ける場所ではない。
だが、詳細な地図は手に入れているし、しっかりと頭の中に叩き込んでいる。

「でも、私は行ったことがありますよ。それだけでフロドの道連れになる資格はあるでしょう?」

レゴラスの言葉にアラゴルンはポカンと口を開けた。
そんなはずはない、でまかせだ。行ったなんてあるはずはないのだ。
アラゴルンよりも早く反応したのは、今まで無言で事の顛末を見守っていたエルロンド卿だった。

「レゴラス、なぜそのような場所に赴いたのだ?!」
「好奇心です」

レゴラスの発言に心底驚いての問いだったが、その答えにがっくりと肩を落とした。
有りえるのだ。このエルフなら。
他のエルフとは一風変わっていると名高い彼ならば、そんなつまらない理由でバレれば大問題になるようなこともしれっとしてしまうだろう。
なにかと要領が良い彼はバレるようなヘマはしないのが救いなのだが、周りにとっては気は休まらない。

だが、そのとんでもない性質を考えると、彼が一番同行者として最も適しているのかもしれない。
放浪癖がある彼のこと。フラリとモルドールに近づくことはありえるし、万が一にもサウロンにそれを知られてもどうとでも言い訳が立つ。
風変わりなエルフの王子の噂はモルドールにも届いている可能性が高いのだ。

 
 
 
 

(7)へ
 

    
  
 ■なかがき■
王子、かなり頭使ってますよ。
フロドと一緒に旅をするためならなんだってしそうな勢いです(笑)

アラゴルンへの暴言。
一度言わせてみたかったんですよね〜〜
だって、ホントにそんな感じしません!?(爆笑)

レゴラスはアラゴルンを幼い頃から知っているから
見た目は自分より大人な男になっても
心の中ではいつまで経っても弟的な存在だと思うのですよ。
だから発言にも遠慮がない、と!(笑)

あ、しまった!
今回、本文にもなかがきにもフロドのこと書いてなかったヨ(^^;)
 
   

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