■ちちゃフロ物語(7)■
 
 
 
エルロンド卿の意見を聞いてガンダルフは微かに唸った。
確かに一理あると思ったのだ。
滅びの山までの道順を知っているというのもポイント的に高い。
エルフの体力は底なしだ。人間や魔法使いとは比べ物にならない。過酷な旅にも向いているだろう。
それに彼の戦闘能力は高い。弓矢を持たせれば右に出るものはいないのではないかという程だ。
普通に考えれば一任しても良いところなのだが、なんせ相手はレゴラス。
彼の性格を考えるとどうしてもすぐに諾とは言えない。

アラゴルンもガンダルフと同じ心境だった。
酷い言葉を投げつけられたのが少々気に食わないが、自分よりもレゴラスの方が今回の旅に最適かもしれないと思わないこともない。
自分だって絶対的な自信があるとは言えないものの遣り遂げられるとは思う。
だがフロドのことを思うと少しでも確実な方が良いのだ。

「レゴラス」

唸るようにアラゴルンが名前を呼んだ。
顔を向けたレゴラスの瞳を強い力を込めて見つめる。

「これは遊びじゃない。気まぐれや好奇心で言っているのならすぐに撤回してくれ。」

レゴラスは不快そうに眉を顰めた。
しかし、アラゴルンから何かを感じとったのだろう。
小さく溜息を吐くと、ゆっくりと口を開いた。

「私が旅の途中で飽きて簡単に使命を投げ出すとでも?それとも好奇心にかられて危険なことに首を突っ込むとか?」
「ないといえるのか?」
「あるはずがないでしょう。フロドの命がかかっているのですよ」

落ち着いた口調の中に篭った微かな怒りを感じてアラゴルンはゆっくりと頷いた。
なかなか本気にならない彼の本気か否かの見極めが難しい所なのだが、本気になったレゴラスほど頼りになる者はいない。

レゴラスはようやく手の中に納まっているフロドをテーブルのうえに置いた。
まっすぐに立つフロドを真正面から覗き込む。
黙って今までの会話を聞いていたフロドも同じく、レゴラスを見つめ返した。

「フロド」
「はい」
「貴方はどうですか?私が同行者では不満ですか?」

真摯に問われてフロドは頭を振った。

「でも、レゴラスさん」
「レゴラス、と呼んでください」
「あ・・・は、はい。あの・・・レゴラス・・・」
「なんですか?」

ほぼ初対面の相手を呼び捨てにするのに抵抗があるのか口篭ったフロドにレゴラスは続きを促した。

「僕と貴方はさっき会ったばかりです」
「そうですね」
「それなのに貴方は同行してくださると言う。どうしてですか?」

レゴラスは少し目を見張った後にゆっくりと微笑んだ。

「では昔馴染みのガンダルフやサムが同行を申し出るのと、つい最近知り合ったばかりのアラゴルンが同行を申し出るのと、さっき会ったばかりの私が同行を申し出るのと、どこがどう違うのです?」
「え?」
「アラゴルンと私の差異はなんでしょうか。彼は確かに貴方を連れて此処まで来た。だけどそのとき彼だって初対面だったはずだ」
「あ・・・」

レゴラスはフロドの両手を指先でそっと包んだ。

「同行を申し出る理由はただひとつ。貴方の力になりたいと思ったからです。これは私だけでなく皆同じ気持ちのはず。」

フロドが周りを見渡すとみな大きく頷いた。
そう、理由はただひとつなのだ。フロドのために、フロドの力になりたい。その思いだけ。
その最良の道に自分がいなくても、それがフロドにとって一番ならばその道を選択するのに不満はない。

「私は弓矢にかけて貴方を守り滅びの山まで導きましょう。共に行っても良いですか?」

みんなの気持ちを全身で感じてフロドは目頭が熱くなるのを感じた。
こんな何の力もない平凡な自分のために危険を賭しても力を貸してくれようとしてくれることが心から嬉しく有難い。
大きく青い瞳を涙で潤ませながらフドロは力強く頷いた。

「はい、レゴラス。よろしくお願いします」

フロドの返事にレゴラスはにっこりと笑った。
指先を握りしめてくる小さい両手に愛しさが湧き上がってくるのを自覚しながら。

「では、そういうことで。誰も異論はないですね?」

反論すれば射殺すぞ、と言わんばかりの瞳を回りに向けてレゴラスは微笑んだ。
フロドに向けた笑みとは違う、有無を言わせぬ笑みなのが少々不安を煽ったが。
誰も反論することはなかった。






そして数週間の準備期間を経て。
フロドとレゴラスは指輪を捨てる旅へと旅立った。



「本当に大丈夫だろうか」
レゴラスの後ろ姿が小さくなり、すっかり消えた頃にアラゴルンがぼそりと呟いた。
「大丈夫じゃろう・・・フロドがあんなに小さければ悪さも出来ん」
「だと良いですが」
なにやら不安要因が別のものらしい会話にサムは不安げにふたりを見上げた。
「大丈夫じゃよ・・・・・・こっそりと魔法もかけておいたからの」
サムの頭をポンと叩きながらガンダルフは弱々しげに笑った。
どんな魔法を誰に対してかけたのかは誰も問わなかったが、この数週間のレゴラスのフロドへの態度を見ていれば誰でも予想できる。
「とにかく、フロドの無事を祈るばかりだ」


そして皆、大きく溜息を吐きながらふたりの消えた方向を遠い目でみつめたのだった。

―――――フロドの(貞操)の無事を祈りつつ。
 
 
 
 
 

end
  
 

    
  
 ■あとがき■
スミマセン、こんなトコで終わりです。(笑)
旅の間のふたりのことは色々妄想出来るけど
この訳のわからない設定では最後まで書くのはキツイ!というか無理(爆笑)
でも、そのうち番外として旅の途中の話を書くかもしれません(ニヤリ)

今回の書きたかったのは手の平サイズのちっちゃいフロドv
ちょこんとした感じの可愛いフロドを目指したのですが・・・微妙な感じ?<聞くな

阿呆な設定でしたが最後までお付き合いくださり
ありがとうございました〜v

 
   

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