■ちちゃフロ物語(4)■
 
 
 
数ヶ月前。
サルマンと名乗る老人の訪問を受けた。
深夜ともいえる時間帯、それもホビットでない人物の来訪にフロドは驚き警戒した。
しかし、サルマンはどこかガンダルフを彷彿させ、フロドはどうしても彼を追い払うことが出来なかった。

玄関先で会話が交わされたのはほんの数分だけだった。
だが、その数分がフロドをこの運命へ無理矢理導いてしまった。

「我が主、サウロン様の命を受けて参った」

そういって、サルマンは金色の指輪をフロドに差し出した。

「サウロン・・・様?」

どこかで聞いたことがあるような気もしたが、知らない名前だった。
自分はホビット庄を出たことがない。
ホビット以外はガンダルフにしか会ったことがない。
この老人はその特例にもなる二人目だ。
我が主というからにはサウロンなる人物もホビットではないだろう。
そんな人物がこんな辺境に住むホビットになんの用があるというのだ。

「サウロン様はパランティアで貴方を見初められた。これは婚姻の約束の証」

サルマンの言っていることがよくわからない。
一生懸命話の内容を理解しようとしているフロドの手をサルマンはとると、差し出した指輪をスルリとフロドの左の人差指にはめてしまった。

「ちょ、ちょっと、待ってください!」

指に感じる指輪の感触に我に返ったフロドはようやく話の道筋を理解した。
誰か、サウロンという人物が、よくわからないが自分を見初めて婚姻を結びたいと申し出て来たのだ。
あまりの強引さに怒るよりも呆れてしまう。

「僕は知らぬ女性と婚姻を結ぶつもりはありません。指輪はお持ち帰りください」

用はすんだとばかりに背を向けたサルマンに慌ててフロドは声をかける。
はめられた指輪を外そうとしながら、一歩前へ踏み出した。
が、指輪はぴくりとも動かなかった。
指に吸い付いたように、指と同化したかのように、僅かにも動かないのだ。

「サウロン様は女性ではない。我が主が貴方を見初めた。すべて主の御心のままに。貴方の意思は関係ない。」
「な、なにを、勝手な!」

指輪をぐいぐい引っ張るが微動だにしない。
フロドは慌てた。
この尋常でない出来事に背筋を冷たい汗が流れるのを感じた。

「その指輪は外せぬ。魔法使いである私のまじないがかかっているからな。
 その指輪をはめている限りサウロン様の目はいつも貴方の傍にある。
 婚姻の時がくれば迎えに参る。それまで身の回りを片付けられよ」

振り向きもせず去っていく老人の後をフロドは追った。
が、門から路地へ出て左右を確認しても、既に老人の姿はなかった。
闇夜に溶けるように消え去ってしまったのだ。





朝になって昨夜のことは夢だったのだとフロドは思いたかったが
指にはまった金の指輪が、それが現実であったことをフロドに伝えた。

指輪はどんなことをしてもはずれることはなかった。
ビルボの冒険の知識をもってしても、まじないを解く方法はわからない。
どうすることも出来ずに、数日経った頃。
フロドの身に異変が起こり始めた。

サウロンの訪問を受けた翌日から誰かの視線や気配を感じるようになっていた。
気味悪いことこのうえなかったが身に危険を感じることはなかった。
が、ある深夜。

フロドは息苦しさと奇妙な感覚に目を覚ました。
目を覚ましたものの、金縛りにあったかのように指一本動かせない。
夢の続きなのか現実なのか曖昧で判断できない状態だった。

そんなフロドの体を。
誰かが触れた。
体の線をなぞるように冷たい手が滑り、首筋や胸を撫でまわしてくる。

鳥肌が立った。寒気が体を貫く。
しかし、指一本動かせないフロドは恐怖に目を見開いたままだった。
誰もいない、少なくとも目の前に人影はない。
それなのに誰かの気配があり、体を触られている。

冷たい手がフロドの下肢に伸び股間を弄ったときに、フロドは驚きと羞恥に近い恐怖に声をあげた。
ほんの小さな叫びだったが、その瞬間に金縛りは解け、身の回りにあった気配は四散した。

フロドは飛び起きた。周りを見渡すが別段変わった様子はない。
外れない指輪に対するプレッシャーで悪夢を見たのだと、そのときは思った。
 
 
 
 
 

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 ■なかがき■
真面目そうにみせかけて阿呆な設定ですみません(大笑い)
サウロンすら虜にするフロドなのですヨ♪
そしてサウロンはただの自己中のセクハラ親父と化しています。
夜中にフロドの体を撫で回すし・・・
こんなのに魔法を使わされるサルマンがちょっと可哀想かも(笑)

 
   

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