■ちちゃフロ物語(1)■
 
 
 
久しぶりに裂け谷を訪れたレゴラスは、いつもと違う様子に少なからず驚いた。
エルロンド卿の治める裂け谷は美しく静かなときが流れている、という雰囲気が常があるというのに。
今日に限って谷全体がザワめいているのだ。
その原因なのか、エルフに育てられた人間の子だけでなく、もっと複数のエルフ以外の種族の存在を感じる。

「この谷に来客とは珍しい」

自分こそ、呼ばれもしない突然の来客であることを棚にあげてレゴラスは呟いた。
取り込み中なら気の毒だ、と訪問をすぐに告げないことにする。
美しく広がる風景を堪能してからエルロンド卿に挨拶しても遅くはない。
それにレゴラスの訪問は既に知られていることだろう。
侵入者に気がつかない程、裂け谷を守るエルフたちは能無しではないはずだ。

ヒョイヒョイと身軽に生垣を超えて、綺麗に整備された庭の小道へ降り立つ。
この庭はレゴラスのお気に入りの場所だった。
下方には壮大な峡谷が広がり、上方には光を浴びて美しい細工に仕上げられた館が建っている。
新緑の緑と色とりどりの花々の咲き乱れる庭園の間に伸びる白い石が敷き詰められた小道。
その脇の所々に大理石で造られたベンチが置かれている。

久々に歩く庭園は相変わらず美しく、レゴラスを楽しませてくれる。
足取りも軽く悠々とレゴラスは歩いていたが、暫くすると何かを感じて、ふ、と立ち止まった。
すぐ近くにエルフとは違う、誰かの気配がする。
悪しきものではない。清らかで澄み切った気だ。
だがその中に、強い封印に押さえ込まれた何か怨念のような負の力を感じるのだ。

その正体を見出そうと、レゴラスは周りを見渡す。
だが、風が軽くそよぐばかりで人影はない。
首を傾げながらももう一度見渡すと、遠く先にあるベンチに何か小さいものが置いてある。
目を凝らして意識を集中してみると、それは小さな人形であった。
1フィートはない。せいぜい8インチくらいだろうか。
少女の好みそうな綺麗な人形ではなく、地味な服を着た短く黒い巻き毛を持つ人形だった。
人形を持ち歩くほど幼い少女はこの裂け谷には存在しない。
その点からいっても、この人形の存在は不可解なものであった。

レゴラスは不思議に思いながらその人形へ近付いていく。
すると。
その人形がひとりでに動きだした。
顔をあげ青い空を見上げながら、ベンチから下ろした足をブラブラと揺すりだしたのだ。

それをみたレゴラスは驚いた。
こんな小さな人はみたことも聞いたこともない。
ドワーフがエルフと比べて小さいことは知っている。
そのドワーフよりも小さいホビット族がいることも知っているが、その彼らでさえ3フィートくらいはあるはずだ。
あんなに小さいはずはない。

レゴラスは軽く駆けてその小さい人へ近付き、ベンチまで数フィートというところで足を止める。
いきなり目の前に現れて、その小さい人を驚かせたりしたくなかったからだ。

「こんにちは、今日は良いお天気ですね?」

柔らかな声で自然な感じで声をかける。
それでも、足音もたてず近付いてきたのだ。いきなり声をかけられて驚かないはずはない。
ベンチに座る小さい人は身体を大きく震わせてレゴラスの方へ顔を向けた。

柔らかそうな巻き毛に縁取られた顔をみて、レゴラスは息を飲んだ。
青い空を映し込んだような澄み切った青い蒼い瞳。
肌は透けるように白く、唇や頬は薄紅色を載せている。
小さいとはいえ、その小さい人のあまりの美しさに目を奪われる。
自分は知らなかっただけで。
小さい体を持つエルフ族がいたのか、と思った。

「だ、誰?!」

どうも怯えさせてしまったようだ。
それになぜだか、この小さい人に嫌われたくない、という気持ちが湧き上がる。
後ずさりしなから怯えた様子をみせる小さい人にレゴラスは優しく微笑みかけた。

「ああ、名乗らず失礼しました。私は闇の森のエルフのレゴラスと申します。
 この裂け谷に到着したばかりで、今からエルロンド卿にご挨拶に伺おうと思っていたのですが
 偶然貴方をお見かけしたのでつい声をかけてしまいました。」

微笑みながら軽くお辞儀をするレゴラスをみて、小さい人から緊張感が薄れた。
そして反対に自分の無礼に気がついたのだろう。
慌てて体を向きなおし、頭を深く下げた。

「失礼な態度をとって申し訳ありません。私はフロド・バギンズといいます。
 昨夜からこちらに滞在させて頂いています。」

名前を聞いてレゴラスは少し驚いた。
バギンズ、という名前には聞き覚えがある。
ホビット族のビルボ・バギンズ。
エルフの友と言われる彼を知らない者はエルフ族にはいないだろう。

「貴方はホビットなのですか?ホビットが"小さい人"といわれていているのは知ってましたが
 貴方ほど小さいとは思っていませんでした。」
「い、いえ!あの、僕が・・・特殊なのです。」

慌ててレゴラスの誤解を解こうとする、そのフロドという小さい人はとても可愛らしかった。
作ったものではない、自然に湧き上がる微笑みが自分自身に浮かんでいることをレゴラスは自覚した。
 
 
 
 
 

(2)へ
 

   
  
 ■なかがき■
以前、か○らさんが素敵サイトの日記の中で「ちちゃリジ」という言葉を使われたことがあって
そのとき、その言葉に凄く萌えたのです。
チビとかミニとかじゃなく「ちちゃ」という所が可愛い!!堪らん!!!(///)と。
萌え燃えしたもののリジィは私には無理。でもフロドなら!!
と、妄想したちちゃフロのオハナシです。
か○らさんに押し付けて半年以上経ってしまい、そろそろ続きを書こう!
という意思の表れにUPしてみました。(笑)
 
   

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