恋人の証明（7）

　
　　
　
■恋人の証明（7）■
　
　
　
合わさった胸の心臓の音が重なってひとつのリズムを奏でていく。
触れ合った肌から体温が溶け合い、ふたりの境界がなくなっていく。
心に刺さった棘のような不安は消えて、身も心も優しい安堵に包まれる。

どれだけ抱きしめあったのか。
短い時間だったかもしれないし、長い時間だったかもしれない。
ふたりには時間的感覚はまったくなかった。

先に動いたのはレゴラスだった。
縋りつくフロドの躯を支えながらゆっくりと寝台に横たえる。
背中にあたる柔らかい布の感触にフロドは瞳を開いた。
フロドを覗き込むレゴラスは幸福そうに微笑んでいる。
言葉では伝えきれない気持ちは肌を通してお互いに流れ込み、
フロドの不安を洗い流したようにレゴラスの涙を乾かしていた。

「愛してます、レゴラス」
「フロド」

顔を赤らめながらも視線を逸らさずにフロドは言った。
自分の姿が映る深くて透き通った大きな青い瞳をレゴラスはみつめた。
少しの間を置いて絡み合う視線が、ふとフロドから逸らされた。
伏した睫が微かに震える。

「さっき僕が･･･」
「ん？」
「僕が貴方を欲し･･･いと言ったのは」

赤い顔を益々赤くしたフロドは吐息のような小さな声で言葉を紡ぐ。
さっきまでのフロドは不安に怯えてレゴラスに抱かれようとしていた。
その先にある言葉が、気の迷いだった、嘘だった、と続こうが、
愛する人の言葉を一言も聞き逃すまいとレゴラスは無言で耳を傾けた。

「嘘･･･じゃありません。本当に･･･僕は･･･レゴラスとひとつに、なりたい」

恥かしそうな、それでも艶やかなフロドの仕草と表情。
そして何よりも飾らずに告げた言葉。

それにレゴラスの思考と躯は速攻で反応した。
引いていた欲情の波が津波となって襲いかかってくるのを感じる。
その証にギュンと固まり反り返る音が股間から躯を貫き頭の中に響いた。

「嬉しいよ、フロド」

押しつぶさぬように躯全体で覆いかぶさる。
伏せた瞼や赤らむ頬に口づけの雨を降らせながら、掌でフロドの躯の輪郭をなぞる。
優しい愛撫に反応して熱くなっていく小さな躯に愛しさが込み上げてくる。
唇を吸い舌を絡ませあう頃には、フロドの性器はすっかりと勃起していた。
反り返った自らの性器をフロドの足に擦りつけながら、腰を揺らして腹に当たるフロドの性器に刺激を与える。
スルリと手を滑らせ双丘の間に指でなぞると、先程の言葉が嘘でない証拠のように柔らかい蕾がヒクヒクと誘うように蠢いた。

「今度は媚薬を用意しておくから」

耳元に唇を寄せ、耳朶を甘噛みしながら囁く。

「次に会った時は･･･ここの深く奥まで挿れて･･･いい？」

中指をぐいっと第一間接まで押し込みゆっくりとかき廻す。
痛みではない快感に近い感覚が腰中に広がるのをフロドは感じながら、フロドはコクコクと頷いた。
浅い場所とはいえ蕾の中を愛撫されながら、性器はふたりの間で揉まれている。
二箇所から湧き上がる種類の違った快感にフロドの躯がくねる。
乳首を吸われ性器を大きな手で絞りあげるように数回擦られたあと。
小さな悦びの叫びをあげてフロドは二度目の吐精を果たした。

はぁはぁ、と荒い息を吐きながらフロドはレゴラスがまだ力を保っていることに気がついた。
今夜、彼はまだ一度も吐精していないのだ。
自分ばかりが愛されて快楽を与えられている。
傷つけたくないし苦しませたくない、というレゴラスの言葉が脳裏に蘇る。
その気持ちはよくわかる。
愛する人には自分以上に気持ちよくなって欲しいと思う。
このふたつの感情はきっと同じ意味を持つのだろう。

与えられるだけでなく、与えたい。
気持ちいいだけでなく、気持ちよくなって欲しい。

フロドは力の入らない手でレゴラスの躯を押した。
覆いかぶさっていたレゴラスはそれに気がついて躯を軽く起こした。
開いた空間をすり抜けてフロドはレゴラスの下から抜け出すと、躯を起こし寝台にペタリと座り込んだ。
突然の喪失感に驚いてレゴラスはフロドをみつめた。

意外に幼いその表情にフロドは微笑んだ。
レゴラスの肩を押し寝台に倒す。
上向きに寝転んだ裸体の綺麗さに一瞬フロドは見とれてしまった。

均整のとれた躯。
引き締まった筋肉。
隆々としている性器さえ芸術品のようだ。

されたことはあっても、自分はしたことがなかった。
するのもされるのもその行為に戸惑いがあったのだ。
だが、今ならレゴラスが戸惑いなく愛してくれた気持ちがわかる。
それどころが、したい、愛したい、という気持ちが欲望となって湧きあがってくる。

レゴラスはどうしたのかと問いかけようと唇を開いたが、問いかける間もなく驚きに息を呑んだ。
　
　
　
　
　

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