■恋人の証明(6)■
 
 
 
寝台のうえに向かい合って座る。
フロドが縋りつこうと手を伸ばす前にレゴラスは柔らかい巻き毛を愛し気に撫でた。
心を落ち着かせようとするかのような優しい手の動き。
そして顔を近づけると涙に濡れた頬や瞼や唇に触れるだけの口付けを繰り返す。

「落ち着いた?」

肩の力が抜け涙が止まったフロドに優しく問いかける。
コクンと小さく頷いたのをみてレゴラスは躯を少し離した。

「フロド、これを見て?」

二本の指をたて、それをフロドの前にかざした。
キョトンとしてレゴラスを見たあと、意味もわからずにかざされた手を見つめる。

「じゃあ、次はこっちをみて」

その指が一本になると、上下を変えて下を指差した。
その動きにつられ、下方に視線を落とした。
フロドの視界に飛び込んできたのは。
レゴラスが指差した先にあったのは。

まだ勃起したままのレゴラスの性器だった。

男同士で恥かしがるのもおかしいかもしれないが、他人の性器を、それも勃起した状態のものをみることなど通常は皆無に等しい。
そのうえ、レゴラスをこういう状態にしたのは他ならぬ自分自身なのだ。
フロドの頬が羞恥に赤らむ。
そんな可愛い反応にレゴラスは自然に笑みが浮かんでくるのを感じた。
本当に可愛い人だ。心底そう思う。
愛しくて愛しくてすべてが欲しくて抱いて貪ってしまいたい衝動が沸く。
だが、それをぐっと抑え付けフロドに話しかけた。

「指だけであれだけ貴方は苦しんだんだ。それなのにこれが挿ると思う?」

ハッと顔をあげてレゴラスをみる。

「わかるでしょう?大きさも太さも長さも全然違う。指さえ無理なのに挿るはずはない。」

確かにそうだとフロドは思う。
こう見せ付けられると、その差は吃驚するほどだった。
指だけであれほどの痛みと圧迫感があったのだ。
レゴラスのこの大きな性器を受け入れたら壊れてしまうかもしれない。

「それでもいいんです。痛くても・・・壊れたって構わない!!」
「私が構うんだ!!」

穏やかに話していたはずのレゴラスが一瞬の激しさを見せた。
その変わりように驚いたフロドは息を飲んだ。
しかし、すぐにレゴラスは穏やかさを取り戻す。

「私が嫌なんだ。どんな理由があろうとも私は貴方を傷つけたくないし苦しませたくない。」
「・・・でも・・・」
「フロド・・・何が不安なの?私の何が貴方に不安を与えているの?それとも・・・・・・誰かに何か・・・言われた?」

フロドの躯が微かに震えた。
唇をキュッと噛み締めて視線を落とす。
やっぱり、とレゴラスは心の底で溜息を吐いた。
そしてフロドに惑わすようなことを吹き込んだ誰かに静かな怒りが湧く。

「どうせ、私が本気で貴方を愛してないかもしれない、指輪の重圧に耐える貴方に同情でこんな関係になったのかも、とか言われたんでしょう?」
「・・・」
「他人に何を言われても私は構わないけど・・・貴方もそう思うの?私のこの心を疑うのかい?」

違う、と言いかけてフロドは言葉につまった。
だって違わなかったから。
レゴラスのことを愛している、心の底から信じたい。
でも。
心の片隅で何かが囁くのだ。
あの美しく聡明なエルフ族の王子のレゴラスが、こんなちっぽけな、それも男の自分を本当に好きになると思うのか?と。
一度湧き出た黒い気持ちは、指輪の支配のように、取り払いたくても取り払えず。
心の奥底に少しづつ少しづつ降り積もっていく。
そんなときにある人物の問いかけが、それを意識の表面へと押し上げたのだ。
深い意味はなかったのかもしれない。冗談のつもりだったのかもしれない。
だが「本当にレゴラスはフロドのことが好きなのかな?」
その言葉は心の突き刺さり、その棘を抜くために、レゴラスの心を確かめたいがために、今夜レゴラスの部屋を訪れたのだ。
躯を使って確かめたかった。
男でもいいのだと、躯を繋げるほど愛されているのだと。
レゴラスのすべてを取り込んで彼の身も心も自分のものである証が欲しかった。

黙り込んだフロドをレゴラスは哀しげにみつめた。
誰かに吹き込まれただけでなく、元からフロドに不安があったことを見抜いたのだ。
どうしたらいいのだろう、と思う。
この気持ちも溢れんばかりの愛も一点の曇りもないほど本物なのに。
伝えきれなかったもどかしさがレゴラスを襲う。
フロドが悪いわけではない。
種族の差や性別の垣根はそんな簡単に乗り越えられるものではないのだろう。
それが不安に置き換わる。
フロドが悪いわけではない。信じてもらえない自分が悪いのだ。

「どうすれば信じてくれるの?貴方のことを思うだけで激しく脈打つこの心臓を胸から取り出して差し出せば、信じてくれる?」

悲しみに沈んだ声。
いつもの明るさを持たぬ憂いた寂しげな表情。
そんなレゴラスは初めてみる。

「フロド。エルフは嘘をつかない。貴方に支配された心も昂ぶる躯も、なにひとつ嘘偽りないんだ。」

真っ直ぐに見据える新緑の瞳。
心を疑われた哀しさと、それでもとめることのない愛しさが篭っている。
そして。
その心を乗せた透明な雫がその眦を流れ落ちた。

フロドはハッと息を飲んだ。
こんな顔をさせたかったわけではない。
自分の心の迷いが心の弱さが、レゴラスを傷つけたことを感じた。

「ご、ごめんなさい、レゴラス!!!」

フロドは両手を広げてレゴラスに縋りつく。
今度は避けず、レゴラスは小さい躯を受け止めた。
 
 
 
 
 

(7)へ
 

   
  
 ■なかがき■
まだまだ、ジェントルメンです。王子。
あ、でも、自分の性器みせちゃうのはジェントルメンじゃないか(笑)
泣かせちゃうつもりはなかったのですが・・・なんか泣いちゃいました。
泣き落とし?
   
   

戻る


 

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル