フロドときたらホビットのくせに整った顔をしている。
彼に関しては他のホビット達と違い、綺麗とか美しいという表現もあてはまってしまう。
実はエルフには体の小さい種族もいたのだ、と言って紹介されれば一瞬信じてしまうのではないかと思うほど。
可愛らしいだけでなく、思慮深い瞳をしてひっそりと佇んでいる雰囲気のあるフロドはまた格別なのだ。
 
 
 
■あいらしき(2)■
 
 
 
一日の旅路も終わり、夜に向けて火を起こし野宿の準備をしようという時間帯。
どういうわけか今日に限って、今この場所にはレゴラスとフロドしか残っていなかった。
何かの、誰かの意思が働いたわけではない。ただの偶然。
だが、ふたりきりだと気がついた瞬間にフロドはすっかりと固まってしまった。
少し離れているが背後にレゴラスがいる、と思っただけでフロドは緊張してしまったのだ。
レゴラスもなんともいえぬ雰囲気に話しかけるタイミングを失ってしまった。
フロドをひとりきりにするなんてありえない話で、レゴラスは何も言わぬままその小さな背中をじっと見つめた。
その視線を感じてフロドの緊張はいっそう高まる。

そんなとき。
「・・・フロド、どうしたんだ?」
ボロミアが薪を抱いて、森の中から出てきた。
フロドが弾かれたように立ち上がった。
「することなくって困ってたんだ。手伝うよ、ボロミア。」
ほっとしたような、弾んだ声で嬉しそうにボロミアに近づいていく。
そんな警戒心もなにもなく無防備に近づいてくるフロドにボロミアは驚いたらしい。
だが、やぱり喜びの方が勝ったのだろう。
ボロミアも心底嬉しそうな、気恥ずかしそうな顔をして自分に駆け寄るフロドに手を差し出した。

それをみてショックを受けたのはレゴラスだった。

指輪のことで、フロドはボロミアにある程度の警戒心を抱いていた。
ボロミアを嫌っているわけではない。どちらかといえば人柄的には好ましく思っているようだったが
指輪を奪われるのではないか誘惑に負けるのではないか、という不安からボロミアとふたりきりになることを
フロドは無意識に避けていた。
それをボロミアも感じ取っていて少しふたりはギクシャクした間柄だったというのに。
それが一気に解消した、という感じだった。
それは良いことだと思う。指輪保持者として警戒心は必要だが、それと同じくらい旅には信頼感が必要だ。
ふたりの距離が近づいたということは喜ばしいことでもある。

だが、結局はその意味は。
あんなに警戒していたボロミアといる方が、レゴラスといるよりはいいとフロドが無意識だとはいえ判断したということだった。

楽しげに笑いながら火を起す準備をしているふたりをレゴラスは遠くから呆然と眺めていた。
自分に向けられることがない、フロドの笑顔。名前を呼ぶ声。
別にフロドが嫌いなわけではないのだ。本当はフロドに近づきたくないわけでもない。
だが自分がしでかしそうなことを予感して、それを避けるために行動してきたのに。
出来る限りフロドに嫌われたくない、という心理が働いてのことだったのに、これでは逆効果だった。

「ま、仕方ないな。日頃のお前さんの態度のせいだ。自業自得だな。」
いつの間にか横に立っていたドワーフが立ち尽くすレゴラスの背中をポンと叩いた。
「私の・・・態度?」
聞き取れないくらい小さな声で呟いた言葉をギムリは正確に聞き取っていた。

どうみたって、レゴラスが悪いとギムリは思う。
あからさまでないとはいえ、いくら接触を試みても距離をおかれてしまうのは精神的に辛い。
その理由がわからないといえば尚更だ。
そして、同じことが繰り返されれば「嫌われているから」という理由しか思い浮かばないだろう。
悪意は好意と同じくらい簡単に相手に伝わる。日頃相手を気にしていればもっと敏感に伝わりやすい。
好意を持っている相手から嫌われるのは特に辛い。
ならば、これ以上嫌われないように、相手の嫌がることはしまい、という結論に至っても仕方がない。
それが今のフロドの状態だ。
つまり現状の元凶はすべてレゴラス自身であるということだ。

レゴラスは遠くにいるフロドをじっと見つめながら、横に立つギムリの言葉を無言で聞いていた。
ギムリの言葉使いは乱暴だったが、言っている意味は充分に伝わった。
反論するもなく立ち尽くすレゴラスを見上げたあとに、ギムリは軽く溜息を吐いてその場を離れた。




食欲を擽る、食べ物を焼くにおいが一面に漂う。
いつの間にか日も落ちて、焚き火の周りに仲間達が集まって来ていた。

さて、食事にしようか、とフライパンで焼いたキノコやソセージをサムが人数分取り分ける。
ひとりひとりに皿が回るが、どういうことが一皿残る。
ぐるりと見渡してみるとエルフの姿がない。

「レゴラスは?」

疑問に答えるようにギムリが顎である方向を杓った。
その方向に視線を送ると、遠くというほど遠くはないが、離れた場所にひとりポツンと佇んでいるエルフの姿。
どうも、先ほどギムリと会話してから一歩もその場を動いていないらしい。

「レゴラス・・・どうしたのかな?」

心配そうにフロドが呟く。
皿を置き立ち上がる素振りを見せるが、すぐに何かに気がついたように腰を下ろす。
呼びに行こうとしたが、レゴラスの言葉を思い出して思いとどまったらしい。
その代わり誰かに行って欲しいと思ったのか、フロドは皆の顔をぐるりと見渡した。

「呼びに行った方がいいと思うんだけど・・・」

縋るように見つめられてアラゴルンが大きく溜息を吐いた。
あんなことを言われてもレゴラスを心配するフロドには頭が下がる。
そして、フロドの心に杞憂を与えているくせにフロドの好意は未だ失っていないらしいエルフに少し腹が立つ。
仕方なしに腰をあげようとしたアラゴルンを制するようにガンダルフが言った。

「フロド、おまえさんが行ってくるといい。」
「え、でも・・・」

思いもよらない言葉にフロドが驚いたようにガンダルフを見た。
ガンダルフの瞳は優しい。
慈しむような困ったような、そして微かに笑いを含むようなそんな色を載せてフロドを見つめた。

「何も心配することはない。行っておいで。レゴラスとは付き合いの長いわしが言うのだ。大丈夫じゃよ。」

少し迷ったフロドだったが、思うところがあったのだろう。
キュッと唇を噛み締めて何か決意した表情になるとスクリと立ち上がった。
 
 
 
 
 

(3)へ
 

   
  
 ■なかがき■
ボロミアも好きですv
色々と葛藤しているとこがなかなか人間味があって。
 指輪に負け気味だけど、ホントはいい人なんだよ〜って感じがまた。

って全然話と関係ないですね(^^;)
だって、前後編ならまだしも続いている話の場合
なかがきに書くことってあまりないんですもの(笑)
     
 

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