小さい生き物というのは元々可愛いものだ。
それが、黒目がちの大きな目をしていたり。
くるくるした手触りのよさそうな柔らかい巻き毛など持っていたら、それはもう相当なもの。
ちょこまかと動き回り元気で明朗活発。そして無邪気。
いくら彼らが既に子供という年齢でないというがわかっているとはいえ。
そんなホビットは可愛らしく愛らしく映るのだ。
 
 
 
■あいらしき(1)■
 
 
 
最近、フロドが自分を避けているとレゴラスは思う。
以前はそうではなかった。
どちらかといえば、とある理由でレゴラスがフロドを避けていた。
そんなレゴラスにフロドが近づいては話しかけてくる、という感じだったのに。
あの夜以来、完全にフロドはレゴラスに近づいて来なくなった。
理由はわかっている。
あのときの会話の内容を知られてしまったのだろう。
直接聞いていたか誰かから教えられたかは知らないが。
それ以外、避けられる理由に心当たりはまったくないのだ。



「レゴラス、なんでフロドを避ける?」

あの夜、いきなりそう聞いて来たアラゴルンにレゴラスは少し驚いた。
「なんのこと?」
にっこりと笑ってはぐらかそうとしたが、彼とは長年の付き合いだ。
誤魔化すこともはぐらかすことも出来るはずはなかった。
「フロドが・・・」
そこで言葉を止めてアラゴルンは周りを見渡した。

もう真夜中で皆、地面に横たわり眠りについている。
聞こえるのは誰かの寝息と火の中で枝が弾ける音だけだった。
だから、声が響くのを気にしたのか。
視線をフロドに向け、彼が寝入っているのを確認している。
そして再びレゴラスに視線を戻すと、声をいっそう低めた。

「フロドが言ったんだ。レゴラスに避けられているような気がする、嫌われているのだろうか、とな。」

じっ、と探るように、だが誤魔化すことは許さない視線でレゴラスの視線を捕らえる。
しばらく無言でお互いみつめあっていたが、先にレゴラスが根負けした。
ふい、と視線をはずして、ふうと小さく溜息を吐く。

「嫌ってなどいないよ。」

フロドのあの決断力と勇気。
指輪の誘惑に負けない心の強さ。
周囲に対する心くばりと優しさ。
一緒に旅をしてすぐにその人となりを理解した。
決して人に嫌われるタイプではないし、どちらかといえば万人に好かれる方だろう。
自分だってその例外ではない。
だが。

「だが、避けているだろう?俺にだってそうみえる。」

レゴラスは少し離れて眠るフロドをちらりと見た。
そして再び視線をアラゴルンに戻す。

「その通りだよ。」
「なぜだ?」

間髪いれず問い返してくる言葉にレゴラスは苦笑した。
彼が少しでもフロドの心の憂鬱を晴らしてやりたいと思っていることは一目瞭然だった。
指輪を保持している、というだけで精神的に苦痛を伴うのにそれ以外のことで悩ませたくない。
という気持ちはレゴラスにも充分わかる。

「理由などどうでもいいだろう?嫌いではない。でも、近づきたくないんだ。」

きっぱりと言い切ったレゴラスに今度はアラゴルンが小さく溜息を吐いた。
どんなに問い詰めても理由を言うつもりはないということがわかったのだろう。
「わかった。」
それ以上言葉は続けず、アラゴルンはその場を立ち上がると焚火近くに戻っていった。



あれからだ。
みんな寝ていたと思っていたが、きっと誰かが起きていたのだろう。
小さい声で話しているつもりでも静寂な夜の中では意外と響いていたのかもしれない。
どちらにせよ「レゴラスがフロドに近づきたくない、と思っている」ということをフロドは知ってしまった。
だからフロドもレゴラスを避けるのだ。
避けるというか、レゴラスの意思を汲んで出来るだけ近づかないようにしているのだが。
自業自得とはいえレゴラスは現状を思って深い溜息を吐いた。

フロドには出来るだけ近づきたくなかったが、フロドが自分を気にして近づいてきてくれることは純粋に嬉しかった。
長く一緒にいたくなかったので、何気なさを装ってすぐに離れてはいたが。
だがこんなに、フロドが自分に話しかけないことが笑いかけないことが辛いとは思わなかった。
ふとした瞬間に視線があっても、フロドはビクッと硬直してすぐ視線をそらせてしまう。


それがレゴラスにはとても哀しかったのだ。
 
 
 
 
 

(2)へ
 

   
  
 ■なかがき■
レゴラス、ちょっとイケズですね。
せっかくフロドが近づいてくれてるというのに罰当たりな(笑)

今回は少し続きま〜す♪
 
   

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