俺は辺りを見まわした。暗黒の世界が俺を覆っている。
「ここはどこ?」
「あんたの夢の中よ」
どこからか声がする。俺の声にそっくりだ。
「お前はだれ?」
「私? 私はメグミ。あんたのナビゲーターみたいなもの。さっきあんたに話しかけたのは私」
「ナビゲーター? なら元の身体に戻る方法も知ってるのか?」
「もちろん。タブーを侵さなければ2〜3日で自然に戻るわ」
なんだ自然に戻れるのか。心配しすぎたかな。
「なんだよ? そのタブーってのは」
「オナニーでイクこと。あんたはまだ完全にサキュバス化してないから、誘惑に負けずに我慢できたら元に戻れる」
「じゃあもし……、したくなったらどうすんだ?」
「ヤッちゃえばいいのよ。さっきみたいに」
「男と……するのか?そんなの絶対嫌だ!!」
「別に女の子とでもいいのよ。汁さえもらえればね」
男だろうが女だろうが、他人とセックスするなんてゴメンだ。
「とにかくオナニーでイカなきゃいいんだろ? そんなの簡単だぜ」
「その言葉、ちゃんと覚えておくわよ。今まで私を含めて誰も成功したした事がないのに」
「上等だ、俺が第1号になってやる!」
「まあせいぜい頑張ってみて」
当たり前だ。こんな体からはさっさとおさらばだ。
あれ、まただ……。だんだん……眠く・・なって……。

「と・・ゆき……」
聞き覚えのある声だ。
「おい、俊之起きろ!」
「……なんだか長い夢を見ていた気がする」
「馬鹿言うな。あれから3分した経ってねぇよ。それよりもその格好どうにかしろ。まるで変態だぞ」
顔を赤らめて健二が言う。俺は自分を見た。
げっ!学ランははだけてるし、下半身は丸だしだ……
俺は慌てて制服を着なおした。長い尻尾が邪魔でしょうがない。
「やっぱり女だなぁ。背も低くなってる」
立ち上がってみると、身長の低さが目立つ。視線が頭1個分違う。これじゃ150すら無さそうだ。
「家族には何て話そう……」
「大丈夫だろ、お前の家族なら」
「どうだか」
「俺も付いて行ってやるから安心しとけ!」
俺はため息をついて、とぼとぼと帰路についた。

住宅街を歩くこと15分。俺の自宅に着いた。いつものように玄関を開ける。
「ただいまー」
「真由か? お帰り」
「ちげぇよ、俊之だ」
「はぁ?」
リビングから、次男の正浩が顔を出す。
一応大学生だけど家でゴロゴロばかりしている、いわばうちのガンだ。
これでモテるんだから憎たらしい。ちなみに『真由』ってのは一番下の妹。って言っても高2だけど。
「俊之の彼女? んな訳ないか」
「どういう意味だよ。じゃなくて俺が本人だ!」
「学校で、いきなりこんな格好になっちまったんだよ」
健二もすかさずフォローに入る。
「とにかく、まずは兄ちゃんに連絡だな。まずはそれからだ」
アニキはポケットから携帯を取り出し、長男の武史に電話をかけた。
外じゃないんだから、家ので掛ければいいのに。
1時間ほどして、妹の真由と同時に武史兄ちゃんが帰ってきた。
両親は海外に行ったまま3年家に帰ってこないので、これで家族集合だ。
俺と健二は、事のあらましを一部始終はなした。
こいつと……セックスしたっていうのは、さすがに言えなかったが。
「顔もいいし私より胸も大きいし。うらやましいなぁ、俊にぃ」
「あのな、好きでなったんじゃないんだぞ」
「オナニーさえしなきゃ、元に戻っちまうのか。つまんね」
「正浩、他人事だからってそんな事言うもんじゃない」
さすが兄ちゃん、ナイスフォロー!
家の中でマトモな人間はあんただけだ!!
「でも興味はわくよな。どんな構造してんだろ」
前言撤回。この人も別の意味で危ねぇ。まだ俺が一番マトモっぽい……。
ダメだ、この場にいるだけで疲れがたまってくる。
体もベトベトしてるしシャワーでも浴びてくるか。
「あれ? 俊之、どこ行くんだ?」
「風呂だよ。覗くんじゃねぇぞ」
俺はおもむろに制服を脱ぎ、浴室へと入る。
正面の鏡には、栗色でショートカットの少女が映し出される。
均整のとれた大きな胸、贅肉のないよく引き締まった腹。丸みが誇張された尻、すらりと伸びた細長い足。
けっこう理想的なプロポーションだ。嬉しくもなんとも無いけど。
ショックが和らいできたのか、今度はこの体に好奇心が沸いてきた。
なにしろ、尻尾の生えた人間なんて聞いたことが無い。
「なんとか自分で動かせないかな」
背筋の下の方に力をこめてみる。根元がピクリと動いた。
使い慣れない筋肉なのでなかなか難しい。
それでも慣れてくると、真上にピンと立てたりとぐろを巻かせたり、自由に動かせるようになった。
「面白ぇ! 実は手足より便利だったりして」
1mほどもある紺の尻尾は革のようにスベスベしている。まるでムチのようだ。
根元から持ち上げゆっくりとなでてみる。
触れられてる感じはほとんどないが、手からは心地よい感触が伝わってくる。
そして先端まで指をすべらせた。
――びくんっ――
急に筋肉がこわばった。
根元にない分だけ、神経がココに集中しているみたいだ。
今度は局部をさすってみる。
「ひゃん!!」
今度は裏返った声が出た。健二としてた時にも出ていたような、あの女特有の声。
俺は徐々に動きを激しくしていった。
強く握ったり、指で弾いてみたり……。
明らかに、そこからは電流みたいなものが流れていた。
それはじわじわと全身へと広がってゆく。
俺の中の何かが音を立てて燃え出した。その火は俺の中心部分に引火しつつあった。

俺は余っていた手を胸に持っていった。
片手に収まりきらない乳房は強い弾力があり、押そうとするとはね返してくる。
下からすくい上げるように持ち、根元からじわじわと揉みしだく。
緩やかな快感と、指に吸い付くような肌の感触がたまらない。
気付けば口から漏れる吐息もかなり激しくなっている。
「どうしたんだろ俺……、止められない……」
思いとは裏腹に、俺の行動はエスカレートしていった。
俺は両手を胸に回し、尻尾を使って陰部をまさぐっていく。
そして先端は潤滑液の出所を探し当てた。
入り口に先端を当ててみた。
まだ自由に使いこなせないせいで、少しズレてクリトリスにぶつかってしまった。
「ひゃふぅん!!」
あずき大の大きさしかないが、体の中でもひときわ敏感になっている。
手のほうも自然に乳首へと伸びていく。
俺は不意に鏡を見上げた。そこには夢中で自慰に浸る少女の姿があった。
耳にはその女が出している嬌声が入ってくる。
俺は自分の、いやその少女の淫靡な姿に興奮した。
まるで、自分で動きを操作できるAVを見ているようだ。
「き、気持ちいい……・」
涙目の少女が喘ぐ。
俺は鏡に対して足を広げてみせた。
紺色のものが、割れ目の辺りを往復する。
粘液のついた先端は、ぬらぬらと底光りしている。
一瞬、鏡から目を背けたくなった。しかしずっと見ていたかった。

身体は何かが入れられるのを望んでいた。蜜壷も涎をたらし始める。
俺は尻尾をまっすぐ立て、そこに当てた。
――早く挿れて……――俺は、自分でそんな事を口走った気がした。
ゆっくりと秘部に尻尾の先が埋まっていく。
クチュクチュ……、いやらしい水音がする。
中のひだからは異物が進入してくる感覚が、
尻尾からは熱い粘液の中を進む感覚が伝わってくる。
それに合わせるように、喘ぎ声が漏れる。
それらが全部混ざり合って、俺の神経を興奮させていく。
尻尾が子宮口まで辿り着くと、折り返すように引き抜きにかかる。
その動くスピードは、俺の興奮に合わせてだんだん速くなる。
膣内からは、刺激こそ鈍いが柔らかな快感が伝わる。
俺は今にも、絶頂へのらせん階段を登りつめようとしていた。
「うぅん、あぁん……。ひゃん!……イ、イク!!」
『だめええ!!!!』
耳を引き裂くような声が頭に響いた。
俺は驚きのあまり、両手も尻尾も身体から離してしまった。
お預けをくらった陰部は愛液をたらしながら、快楽を求めてヒクヒクしている。
『だから言ったでしょ、誰一人として誘惑に勝てないって。まだ私がいたから助かったけど。本当にもう。
何ボサッとしてるのよ。早く体を洗い流しなさいよ』
俺は言われるままにシャワーを出した。
水は俺の肌で跳ね返って、感触のみを残して流れていく。
その感触は穏やかだが、刺激として中心部分に伝わる。
俺は無意識にシャワーを手に取り、下半身の局部へと……
『だからダメだって!!!!!』
俺ははっと我に返った。そして逃げるように浴室から出た。
体をタオルで慎重に拭いていく。布と肌がこすれるだけで感じてしまうのだ。
俺は必死に、今すぐにでもイッてしまいたい欲望をこらえた。
男に戻る為には、ココは堪えきらなければならない。
しかし達する直前で止められるのは、どうしようもなく辛い。
この最悪のジレンマに俺の頭は混乱した。
俺は細心の注意を払ってTシャツとトランクス、ジャージを着た。
ウエスト周りが小さくなった一方で、胸は前より大きくなっている。
そのため乳首がTシャツでこすれてしまう。
さらに、歩くたびに秘部が擦れあって快感を連れてくる。
俺はそういったギリギリの精神状態で、やっとのことでリビングに辿り着いた。
そこにはアニキの正浩の姿があった。
「あれ、もう出たのか?」
「アニキ、ちょっといいかな……」
「どうした?」
「俺の部屋まで……一緒に来て……」


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