俺の名前は神楽 高次。
街では、ある意味で有名な奴だ。

「ははっ!! 今日の女は旨かったよなぁ!」
「ああ。程良く抵抗してくれたし、何よりあの言葉遣いが…」

…まあ、要するにそういう事。
街では女をさらって強姦する、最低最悪な奴らって事で有名なんだ。
さっき犯した女の感想を言いながら、また新しい女に目星を付ける。
俺達はまだ未成年だから保護観察ですむ。だから、捕まる事なんて怖くなかった。
…要するに、ゲーム感覚。
何回連続で強姦できるか。
捕まったらゲームオーバーで、また始めからやり直し。
そう、思ってたんだ。この時までは。

その日も1人強姦して、次の女に目星を付けていた。軽くナンパを気取って、ホテルに連れ込む。
後は、仲間の一人が此処のオーナーの息子だから、安全に強姦できるって訳だ。
この女も、ホイホイ付いてきたんだが…どうも様子がおかしい。
さっきから「おい、止めてくれ!!」とか、「俺だよ、分からないのか!?」とか、訳の分からないことばっかり言って暴れている。
…まあ、薬物中毒の女だって抱いたこともあるし、大した問題じゃないんだけど。

「…あ、悪い高次。缶コーヒー買ってきてくんねー?」
「はあ?…まあ良いけど。先に始めんじゃねえぞ?」
「分かってるって」
仕方なく、ホテルの自販機に向かったのだが…
「…くそ、故障中かよ…。しょうがねえなあ…」
ぶつぶつ文句を言いながら、ホテルの前の自販機に行った。確かあそこなら大丈夫な筈だし。
「ふぃー、寒いな畜生…。後で順番は最初にして貰わなきゃ割に合わねえっつの」
がしゃん、という音と共に缶コーヒーが出てきた。それを取り出そうとして、屈み込んだ次の瞬間。

がんっ!!

という音がして、視界が反転した。
顔から地面にぶつかって、訳が分からない。視界の隅に、自販機に突っ込んだ自動車が見える。
…どうやら、あれに跳ねられたらしい。
「じ…冗談じゃ…ねぇよ…何で…俺が…」

地面を這いずろうとしても、力すら沸いてこない。…死ぬのか、俺は?
…死にたく、ねぇ…よ…
ふと、視界の隅に黒服のガキが映った。トコトコと歩いてきて、俺の顔をのぞき込んでいる。
「死にたくないのかな?」
…何だよ…このガキ…
「死にたくないのかって聞いてるんだけど?」
…当たり前だろ…死にたくねぇよ…
そう言うと、黒服のガキはにんまりと笑ってこう言った。
「じゃあ、生き返らせてあげるよ。但し…」
ガキの顔から笑みが消える。
「次目覚めたとき、君はもう神楽高次じゃなくなるけどね」
そこで、俺の意識は途絶えた。

妙に、視界が明るい。眩しさに、目を開ける。
(…ここは…ホテル?助かったのか?俺)
見ると、いつものメンバーが俺を囲んでいた。…何で?
「…おい、どうした…っ!!?」
な、何だ?今の声!?まるで女みたいな…っ!!
そこで、俺は異変に気づいた。肩に、髪がかかってる。
服も、さっきまで着てたのとは別物…というより女物だ。
そして、一番の変化は…
(な、何だよこれ!?)
胸が、隆起してる。…いや、違う。膨らんでるんだ。まるで、女みたいに。
手も、同じように細い。毛も生えてなくて、肌も白い。
「…さーて、じゃあ誰から始める?」
メンバーの1人が俺に話しかけてきた。…まさか、そんな。
「ま、まってくれ!!俺だよ!!」
想像を振り払うように、叫ぶ。こいつらに犯されるなんて冗談じゃない!!
「…はあ?俺って誰だよ?」
「だから…俺は…!?」
そこで、言葉が止まった。…名前が、出てこない。何で?どうして!?
こいつらがいつものメンバーだとか、今までどんな女を犯してきたか、明白に覚えてるのに名前だけが浮かばない。
「…あ。悪い高次。缶コーヒー買ってきてくんねー?」
…高次?そうだ、俺の名前は…っ!!
「…………っ!!?」
声が、出ない。何で…どうして。
…どうしてそこに俺が居るんだ?


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